アディダス「SPEED SQUAD」:キプチョゲVの「ベルリンマラソン」、日本から選ばれた3人のレース結果は
Sep 28, 2018 / COLUMN
Sep 28, 2018 Updated
4月から始動したアディダスSPEED SQUAD(スピードスクワッド)。SPEED SQUADとは、アディダスが全世界で展開しているランニングコミュニティ「AR(adidas Runners)」のエリート養成プログラム。厳しい条件の中、男女9名のメンバーが選ばれた。アディダス契約専属のランニングコーチやトレーナーのサポートのもと、メンバー個別ではなく、定期的な合同のトレーニングセッションを実施。目標達成に向け、9月中旬までトレーニングが行われた。
第1回、第2回、第3回、第4回、第5回、第6回、第7回練習会を経て、男女9名のSPEED SQUADメンバーから選抜された3名が挑んだ“ベルリンマラソン2018”の結果をレポートする。
ベルリン入り〜レース前日
SPEED SQUADを代表してベルリンマラソンに出場する藤田大夢さん、木村泉穂さん、日高久登さんを含めたAR Tokyoメンバーたちは木曜日の夜にベルリン入り。翌日の金曜日の午後には、ナンバーカードのピックアップのためにエキスポ会場へ。金曜日の時点で、すでにエキスポは大勢のランナーたちで盛り上がりをみせていた。ナンバーカードを受け取った3名は、本番のレースに向けて“いよいよその時がやってくる”という雰囲気を感じ取っていた。
ベルリンマラソン前日の土曜日の朝は、ベルリンマラソン公式のモーニングラン。参加費無料で、実質誰でも参加できる1万人規模のファンランイベントである。スタートはベルリン西部のシャルロッテンブルク宮殿から、オリンピックスタジアムのベルリン・オリンピアシュタディオンまでの6kmのコース。
一般の参加者と同じように世界各国からのARメンバーもこのイベントに多く参加した。藤田さん、木村さん、日高さんを含むAR東京のメンバーは、このイベントのスタート時にARソウルのメンバーと記念撮影。さらにはゴール時にもARドバイのメンバーと記念撮影を行い、お互いのAR Tシャツ交換の場面もみられた。
藤田さん、木村さん、日高さんの3名は、このモーニングランを通じて多くの世界中のARメンバーと交流し、お互いの健闘を誓い合いそれぞれが刺激を受けた様子だった。そして、午後はベルリンに赴いたトレーナーの中野ジェームズ修一氏によるコンディショニングを受け、翌日のベルリンマラソンに向けて、次第に集中モードに入っていった。
迎えたベルリンマラソン当日
開口一番に、
「やるしかないですね」
レース当日の朝にそう話したのは日高さん。前日までの雰囲気とはガラリと変わって集中している様子。それもそのはず。日高さんは9名のSPEED SQUADのメンバーのなかでは走歴3年未満と一番経験が浅く、この約半年間、必死に学び続けてきた。その集大成こそがこの日のレースなのである。日高さんはサブ2時間40分を最大目標、2時間49分09秒の自己記録更新を最低目標としてこの日を迎えた。
一方の木村さんにとっては、20回目のマラソン。マラソンの経験は多いものの今回がこれまでで1番気合いの入るレースだという。レース当日の表情からみてもその様子がうかがえた。木村さんは自己記録の3時間16分56秒を超えるサブ3時間10分を目指して、20回目のマラソンとなるこの日迎えた。
学生時代にサブ2時間30分に挑戦し続けてきたが、達成することができなかった藤田さん。社会人となって、学生時代よりもさらに上を目指すという気持ちでSPEED SQUADに参加。そこでの学びと日々のトレーニングによる“自信”を持ってこの日のスタートラインに立った。彼が目指すものは、学生時代に果たせなかったサブ2時間30分しかなかった。
今年の2月。3人は、それぞれマラソンへの想いを持ってSPEED SQUADへエントリー。全国各地から集まったメンバー間での高いレベルでのトレーニング、そしてプロのフィジカルトレーナーから直接受けるアドバイス。4月からの5ヶ月半、3名ともにこれまでにない経験を積み重ねてきた。
この日のコンディションは晴れでスタート時は気温は14℃前後。弱い風が少し吹きながらも、スタートから2時間30分が経過した時点で19℃前後に上昇。気温の上昇とともにベルリンの地で熱戦が繰り広げられた。
SPEED SQUADを経てそれぞれ次のステージへ
9時15分、マラソンの世界記録更新を目指す選手を先頭にして一斉にスタートを切った。
3人のうちで1番前を走るのは藤田さん。序盤から1km3分30秒前後のイーブンペースを刻んで、中間点を1時間13分38秒(2時間27分16秒ペース)で通過。藤田さんは目標のサブ2時間30分ペースを意識しながら、中間点から35kmまでを、13分47秒(約3.9km)、17分37秒と、全て平均3分32秒ペースという“正確”なペースを刻んだ。
藤田さんは35kmからの5kmは18分05秒とペースダウンしたが、最後の2.195kmでラストスパート。平均3分20秒までペースアップし、自己記録を3分09秒更新する2時間27分58秒の自己新記録でフィニッシュ。学生時代から目指していたサブ2時間30分の目標を、このベルリンで達成した。
「やっと2時間30分を切れました!」
この記録は彼にとって感慨深い記録である。藤田さんの学生時代は、現在よりも練習での走行距離を確保できていたが、肝心のレース本番では後半で失速。その経験を今回生かしながらも、6月に月間600kmの走り込みを敢行して、体とメンタルの両方が強化されたという。
「社会人1年目ということもあって、今年は練習時間の確保に苦労しました。今回は自分の力を出し切れて100点のレースです。今後はサブ2時間20分に向けて、まずは2時間25分を目標にこれからも記録を伸ばしていきたいですね」
藤田さんにとってのマラソン競技は、これからも長く続くことだろう。
木村さんは、スタート時の混雑により最初の5kmをゆっくりと走り始めた。そして、5kmから30kmまでを1km4分30秒前後のペースでリズムよく通過。しかし、ここで前半の遅れを取り戻そうとペースを上げたことで足がキツくなり、次第にペースが落ちていった。目標を下方修正しながら粘る木村さんは、自己記録を3分39秒更新する3時間13分17秒の自己新記録でフィニッシュ。
「今日の走りは90点。いつもなら後半失速してズルズル落ちていったと思います。体力面も気持ちの面でもこの半年間で成長できて成果を感じました。次のマラソンでは3時間10分を切りたいと思います」
地力の強化を感じつつも、最大目標であったサブ3時間10分をクリアできなかった木村さん。しかし、今後の課題が明確となった彼女の挑戦はこれからも続くことだろう。
日高さんは最初の10kmを1km4分00秒を切るペースで走ったが、その時点で発汗の多さが気になっていたという。その後、10kmから30kmまでは4分05秒前後のペースで刻んでいったが、30km以降も発汗が多く次第にペースを落としていく。その影響で結果的に、2時間53分19秒という自己記録を下回る記録となった。
「悔しいです。引続き肉体改造を続けていって、良いランニングフォームを習得していきます。内転筋の弱さや、セルフケアなど、まだまだ改善する部分は多いです」
失速の原因として日高さんは、“このレースを迎えるにあたっての準備がまだまだ足りなかった”という点を挙げた。しかし、このレースやSPEED SQUADでの経験が彼の今後のレースに生かされることは間違いないだろう。
ベルリンマラソンで2名が自己新記録(うち1名が目標の記録をクリア)、1名が自己記録を下回る結果となった今回のSPEED SQUAD。“戦略的リカバリー”をもってこの3名を含む、9名のメンバーをサポートしたトレーナーの中野ジェームズ修一氏はこう話した。
「マラソンという競技は普段の積み重ねが重要で、コンディションにしても、何か1つでも要素が欠ければ完璧な走りはできません。その全ての要素を揃えることが難しい競技です。彼らが何故、マラソンに挑戦し続けるのか。プロ選手でも市民ランナーでもそれぞれに目標があります。SPEED SQUADで彼らの各々の目標やストーリーを聞いて、本当に感動しました」
SPEED SQUADはこのレースをもって終了となるが、この3名だけでなく、9名全てのメンバーにとって“マラソン”という魅力的な競技への高まった情熱が消えることはないだろう。ほぼ毎週どこかでレースが開催され、活躍の場は無限に存在する。まだまだ可能性に満ち溢れている9名のSPEED SQUADメンバーの今後の活躍に期待したい。
adidas Runners of Tokyo(AR Tokyo)とは
adidas Runners of Tokyoは2016年9月に日本で発足。ランニング初心者から、シリアスなサブ3ランナーまで、様々なタイプのランナーに合わせた幅広いコンテンツを用意。プロのランニングコーチによるセッションや、フィットネスプログラムなど、「自分を高めたい」という思いを叶えるハイレベルなプログラムで、ランナーたちを更なる高みへと導く本格的なサポートをしている。また、ベルリンやソウルなど、海外のコミュニティとの共同セッションや、ヨガ・フットボールなどカテゴリを超えてのコラボセッションなど、ユニークなコミュニティ活動をきっかけにメンバー同士が深く繋がるなど、楽しみながら成長できるのも魅力の一つ。
【adidas Runners of Tokyo】:https://shop.adidas.jp/running/community/