アディダス「SPEED SQUAD」練習会 【VOL.5】運命のベルリンマラソン出場権は誰の手に……?!
Aug 13, 2018 / COLUMN
Aug 13, 2018 Updated
4月から始動したアディダスSPEED SQUAD(スピードスクワッド)。SPEED SQUADとは、アディダスが全世界で展開しているランニングコミュニティ「AR(adidas Runners)」のエリート養成プログラム。厳しい条件の中、男女9名のメンバーが選ばれた。アディダス契約専属のランニングコーチやトレーナーのサポートのもと、メンバー個別ではなく、定期的な合同のトレーニングセッションを実施。目標達成に向け、9月のベルリンマラソンまでトレーニングが行われていく。
第1回、第2回、第3回、第4回練習会を経験したスピードスクワッドのメンバー。ベルリンマラソンに出場するための“3名だけ”に与えられる出場権を目指し、今回9名全員のメンバーが全力で挑んだタイムトライアル、筆記試験の様子をレポートする。
己に挑戦するタイムトライアル
この日は、ベルリンマラソン行きの3名を決めるうえで重要なタイムトライアル。しかし、気温は34℃と、当初の予定を変更し20km走 → 15km走へ。そして、9人が同時にスタートし、今までの練習会と同様にA、B、Cグループ、それぞれの集団が形成されていく。タイムトライアルとはいえ序盤はペースが落ち着き、序盤から1人で走るというものではなかった。
代々木公園の1周1167mの周回コースを使って行われた今回のタイムトライアル。1周ごとにメンバーたちの表情が厳しくなっていく。適宜、給水を取りながら、彼らは“己に挑戦する姿勢”を見せていた。このタイムトライアルでは、タイムも重要となってくるものの、厳しいコンディションにおいても諦めない姿勢がさらに重要視されていた。
「序盤、攻めて攻めて積極的に走れたのがよかったです。今まで(SPEED SQUADに入るまで)の感覚で走っていたらダメだったと思いますが、うまく走れました」 – 属美緒さん
「7月上旬に世界という舞台(ITU世界デュスロン選手権)を経験しました。今日はそのレースのつもりで走りました。7月は今日とそのレースの2本を走ったので疲労困憊です。でも、この経験は自分にとってプラスになりました」– 下島千明さん
次第にそれぞれのグループはばらけ始め、単独走となり、各々の表情がゆがんでいく。しかし、誰1人、決して諦めないという意識が欠けておらず、熱のこもった力走をみせる。Aグループでは5名ものメンバーが競り合い、後半は秋山さんがスパートし、そのまま逃げ切り先頭でフィニッシュ。
「思い通りに後半ペースを上げられて、1番にゴールできて満足です。この日に向けての調整も上手くいきましたし、普段の仕事もあるなかで、両立しながらランニングに情熱を注いできました。今持っている力を出し切ることができました」– 秋山太陽さん
厳しいコンディションのなか、朝倉さんが2番目にフィニッシュ。後続のメンバーたちも必死の形相で走りきり、フィニッシュ地点に続々と続いた。
「今日は厳しいコンディションでした。ラスト5kmからペースを上げていこうと思っていましたが、実際には上げたつもりが、イーブンペースを保つのがやっとでした。後半苦しくなりましたが、2位狙いで大きく崩れることなく走れました」– 朝倉和眞さん
SPEED SQUAD、そしてこのタイムトライアルを経験した多くのメンバーから“メンタルの成長”が感じられた。
「5月ぐらいから調子が上がってこなかったのですが、今日は最初から最後まで諦めずに走りました。前半ペースが速くなかったので先頭集団に付いていきました。自分の今の実力を発揮して走れました」– 青木純さん
「この4ヶ月は、これまでで1番、本気で走ることに取り組んだ4ヶ月でした。今までは夏の“暑さ”から逃げていましたが、今回を通じて自分の今まで消極的だった殻を破れました。ワンランク、自分のレベルが上がったと感じています」– 邊見勇太さん
筆記試験と自己分析
タイムトライアルを終えたメンバーたちはその後、筆記試験の会場へ移動。この筆記試験は、これまでのSPEED SQUAD練習会後に行われた室内セッションで学んだことに加えて、座学で学んだ戦略的リカバリー(休養、食事、アフターケアなど)に対する理解度を確認するためのものであるが、この採点結果がベルリン行きの3名を決めるにあたって大きな比重を占めた。
午前中のタイムトライアルの後で疲労感もあるなか、これまでの集大成としてメンバーたちは集中して問題を解いていく。競技力向上のために、走力だけでなく、知力の向上も目指していくのがSPEED SQUADのプログラムである。
筆記試験を終えた後、昼食を挟んで室内セッション。今回を含めて5回の練習会でレベルアップを図ったメンバーたち。練習会を重ねるたびに成長の姿がしっかりと感じられた。このトレーニングの前には、SPEED SQUADの室内セッションを担当してきたフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏より自己分析についての話があった。
「(競技を長く続けてきて)競技力が伸びる選手と伸びない選手の差というのは、選手それぞれが“イメージしている動き”と、“実際の動き”とのギャップの大きさに関係しています。そのギャップが大きくズレていると、その選手は伸び悩みます。ギャップを埋めていくことが必要です」
と中野氏は述べ、ギャップを埋めていくためには、きちんとした“自己分析”を行うことを挙げた。そのやりとりのなかで中野氏は、SPEED SQUADのメンバーたちに「自分の走りについて良くない点は何か?」と問いかけ、各々が考える時間を設けた。
運命のベルリン行きの結果発表
いよいよこの時を迎えた。メンバーたちが精一杯取り組んだ4ヶ月の結果を前に、空気がシーンとなる。
「日高久登さん」
「木村泉穂さん」
「藤田大夢さん」
3名の名前が読み上げられ、彼らに送られる拍手。
同時に、落胆の表情を浮かべる者もいた。力を尽くしたが、落選してしまった6名。落胆するのは、彼らがこれまで人一倍真剣に取り組んできたからだろう。
今回名前を読み上げられた3名はAグループ、Bグループ、Cグループからそれぞれ1名ずつ選出された。SPEED SQUADでは走力の高いものから3名選出するのではない。以下の要素の総合的な視点からこの3名が選出された。
- 情熱やその熱意、取り組む姿勢
- タイムトライアルや筆記試験の結果
- この活動を通じて周りの人たちに与える影響力
「走りも勉強も、習ってすぐ自分の普段の練習に反映できるように実践していました。自分にとって海外レースは初めてなので、このチャンスで自分を奮い立たせたいです。目標は2時間40分切りで、最低でも2時間40〜45分を目指したいです。これから夏にどう追い込むかがポイントです」– 日高久登さん
日高さんは筆記試験の問題を作成した中野氏も驚くほどの高得点で、9名中トップ。また、この4月から東京→福岡への転勤となり、この練習会の度に福岡から東京にやって来ている。日高さんの熱意を感じた同僚が今回のタイムトライアルのために応援に駆けつけ、そして日高さんはこの活動を通じて周りの人たちに影響を与えた。
「びっくりしていますが、本当に嬉しいです。今回ベルリンマラソンへのメンバーとして選ばれてなかったとしても、この秋にマラソンで結果が出せるように、心身ともに強くなれるようにと思って取り組んできました。ベルリンでの目標は3時間10分切りです。そのためには今までの積み重ねに加えて、スタミナ強化、体幹強化が必要です」– 木村泉穂さん
木村さんはSPEED SQUADで2人だけの女性ランナーとして、属さんとともに高め合い、そして見事にベルリン行きの切符を手に入れた。練習会でのトレーニング終了後に、コーチに対してアドバイスを求めるその姿勢は「自分を高めたい」という気持ちに溢れていた。木村さんにとってベルリンは、今年4月のボストンマラソン以来の海外レースとなる。
「自分よりも速い人がいるなかで、今回ベルリンへの出場権を得ることができました。今日は秋山さんに負けたもののそれも勉強の1つで、マラソンでは洞察力も必要です。ベルリンでは2:30切りで自己記録を更新を目指しています。学生時代は怪我が多く、苦労していた時に栄養学を勉強をしました。今日の筆記試験ではその時の知識が生きました」- 藤田大夢さん
藤田さんは練習会や今回のタイムトライアルで、中盤からAグループを積極的に引っ張っていく前向きな姿勢が評価された。現在の走力では秋山さんや朝倉さんには及ばないが、“積極的な姿勢がマラソンに繋がる”と本人のその前向きな気持ちを押し出した走りは、中野氏も高く評価。また、筆記試験でも全体で2番目に高い点数を出した。
ベルリン行きを決めた3名だけでなく、9名全員が精一杯尽くしたこの4ヶ月で、それぞれ成長を感じていることだろう。このプロジェクトは9月のベルリンマラソンの日まで続くが、ベルリンへの切符を獲得できなかった6名にとっても、秋までの2ヶ月間でさらなる成長へのステージが待っている。
adidas Runners of Tokyo(AR Tokyo)とは
adidas Runners of Tokyoは2016年9月に日本で発足。ランニング初心者から、シリアスなサブ3ランナーまで、様々なタイプのランナーに合わせた幅広いコンテンツを用意。プロのランニングコーチによるセッションや、フィットネスプログラムなど、「自分を高めたい」という思いを叶えるハイレベルなプログラムで、ランナーたちを更なる高みへと導く本格的なサポートをしている。また、ベルリンやソウルなど、海外のコミュニティとの共同セッションや、ヨガ・フットボールなどカテゴリを超えてのコラボセッションなど、ユニークなコミュニティ活動をきっかけにメンバー同士が深く繋がるなど、楽しみながら成長できるのも魅力の一つ。
【adidas Runners of Tokyo】:https://shop.adidas.jp/running/community/