走力低下をまねく「コンディショニング不良」に注意

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個人差はあるものの、誰もが感じることがある『疲労』。年を重ねると共に、疲れを実感する機会が増えていませんか?

『脚が重い』『だるい』『お腹が痛い』『眠い』

ここぞという大会や練習の日に、疲労が溜まった状態で走りたくないですよね。毎日の仕事や家事で忙しい中でも、何とか調子を整えて良い状態で走りたい! そんなときに重要な考え方・手法となるのが『コンディショニング』。

今回はその『コンディショニング』について紹介していきます。上手にコツを掴んで、よりランニングを楽しんでいきましょう。

コンディショニングとは『カラダの調子を整えること』

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“コンディショニング” と間違われやすい言葉に“コンディション”があります。

コンディションとは、ある場面における “状態”  “体調”  “条件” を表すものです。私たち自身の状態や体調を表すときもあれば、気候や走るコースなど環境条件を表すときもあります。

コンディションはその人が持つ潜在能力と疲労が相反した結果、 “状態” として体現されます。イメージとして、天秤の片方に潜在能力、もう片方に疲労が乗っている考え方ができます。少しずつ疲労が取れ、潜在能力側に天秤が傾いた状態がより良いコンディションだと言えますね。

そのコンディションをどのようにしてより良い状態にしていくか?  その具体的な改善アプローチの過程をコンディショニングと言います。

NSCAジャパンではコンディショニングを以下のように定義しています。

❝スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えること❞

厚生労働省では

❝運動競技において最高の能力を発揮出来るように精神面・肉体面・健康面などから状態を整えること❞

ランナーに置き換えて言えば、ランニングで負荷をかけるトレーニングも含め、あらゆる側面からパフォーマンスを高めていくための準備が『コンディショニング』と言えます。

マラソン大会における気候などのコンディション(環境要因)は、私たちにはどうにもならないこと。私たちにできることはコンディショニングを実践し、自分の『カラダの調子』を整えることです。より良いコンディションでスタートラインに立つことができれば、目指す結果が近づいてきますね。

コンディショニング不良は走力の低下にも

走力を高めるには、負荷を高めたトレーニングが不可欠。負荷を高めるほど疲労が蓄積していきます。コンディショニングが疎かな状態(疲労が溜まった状態)でも、頑張って走れば “追い込み度合い” を意図的に高めることになり、更なるパフォーマンスアップが期待できるかもしれません。

ただ、これは薄氷を踏むようなもの。もし実際にパフォーマンスが上がっていたとしても、ふとしたときに代償を払うことになるかもしれません。気づかない間に貧血やオーバートレーニング状態になる恐れがあり、膝や臀部などの筋肉の筋を傷めたり、疲労骨折を起こすなど、怪我で長期離脱を強いられることも。そうなると、積み重ねてきた努力が水の泡になってしまいます。

疲労をうまく取り除き、怪我などのリスクを避けながら、より良いコンディションでトレーニングが継続できる状態を作る。これがコンディショニングです。

自分自身を知り、ライフスタイルに沿ったコンディショニングを身に付けることが目標達成のための “近道” になるでしょう。

感覚と数値でコンディションを知る

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では、どのような方法でコンディションを上げ、ランニングのパフォーマンス向上につなげていけばよいのか。

具体的なコンディショニングを行う前に、まず自身の『状態を把握』することが大切です。つまり、コンディションを把握した上で、具体的なコンディショニング方法を考えます。コンディションは大きく分けて2つ視点で把握することができます。

1.自分の感覚 ~主観的コンディション~

誰もが取り入れることができるのが、自分の『感覚』で状態を把握すること。

その際、ここでも2つの視点で把握していきます。
それがA:肉体的な感覚、B:精神的な感覚の2つです。

A:前者の例えとして、「身体が重だるい」「階段上りがいつもより辛い」「筋肉が張っている」などが日頃感じられるかと思います。

B:後者では、「気持ちが乗らない」「仕事が残っていて集中できない」「どうすればいいのか……(迷い)」といった感覚があると思います。

これらの感覚は、身体のどこかが「ちょっと待って! 」という何かのサインを示しているのかもしれません。そのサインが自分のコンディションを把握する上での1つの指標になってきます。

2.数値で評価 ~客観的コンディション~

自分の感覚では問題ないように思えても、身体には疲労が溜まっているという場合も。その見えない疲労・変化を可視化してくれるのが『数値』です。その数値の例が下記にあげるものです。

・体重 ・食事 ・練習記録 ・体温 ・心拍数

・活動量 ・睡眠  ・排便 ・月経 ・気候 など

これらの数値は基本的に科学的な研究データを基にしたもので、複雑な計算や精密な機械などにより、見えない疲労・変化が数値として可視化できるようになります。だからと言って、数値だけで決めつけるのは不十分です。数値そのものの正確性にも注意を払う必要性もあります。どの計算方法・機械にも、どこかに真実と不一致が生じるもの。

そのため、どちらか一方に頼るのではなく、これらをうまく組み合わせてコンディションを “考える” こと。より正確な、自身のコンディションを把握することができます。これが分かるようになれば、あとはコンディショニングの実践あるのみです。

コンディションに応じて実践を

生活環境やランニングの走り方によって、コンディションは複雑に変化します。その時々に応じたコンディショニングを実践していくことが重要です。では、具体的なコンディショニング方法をご紹介します。

2つの側面からアプローチする

先述のように、コンディションは潜在能力と疲労を天秤にかけてイメージができます。疲労が抜ければ潜在能力側に傾く。つまり “コンディションが良い” という表現をしました。実際にアプローチをしていくコンディショニングでも、2つの側面から考えることができます。

コンディショニングでは『負荷』と『回復』の2つを側面からアプローチし、疲労を残さないことを目指していきます。

1.負荷の側面

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“負荷がかかれば、疲労が溜まる”

負荷がかかる量を減らしたりそのタイミングを調整したりすることで、パフォーマンス向上を阻害するような負荷をなるべくかからないようにする。これが負荷の側面から見たアプローチ方法です。走るトレーニングはもちろん、仕事でのストレスなども関係してきます。

特にトレーニング要素の高いランニング(いわゆるポイント練習)も負荷がかかります。そのため、疲労が溜まらないよう、うまくタイミングを調整して自分の『ランニングサイクル』を作ることも1つの方法ですね。また、時間がかかりますが、ランニングフォーム改善も負荷の軽減に繋がります。様々な視点でランニングの “走り方” を模索しながら、体験を重ねていくのも市民ランナーの魅力と言えるかもしれませんね。

2.回復の側面

一方、溜まった疲労をうまく取り除いて回復させること、それが狭義のコンディショニングです。

具体的には、ストレッチングや入浴、サウナ、短期的なレクリエーション、長期的なバカンス、食事、睡眠などが挙げられます。ストレッチング・入浴・サウナは筋肉に直接、回復効果をもたらし、食事・睡眠は身体作りには不可欠(栄養素の供給と合成)です。そして、これらは精神的なリラックス効果も期待できます。質の良いトレーニングを実施するには、走りに臨める、集中できるメンタリティーも大切なコンディション要素です。

また、負荷の少ないジョギングも回復をサポートしてくれます。血液の循環を促して老廃物を取り除き、温まった身体でストレッチングを行うと、効果的なリカバリーが可能になります。

これらの細かな手法については、下記の記事を参考にしてみてください。

普段の生活リズムが調子を大きく変える

コンディショニングは、体の張りをほぐしてくれる治療院から睡眠アドバイザー、ランニングアドバイザー、管理栄養士など、どの分野にも専門家がいるほど奥が深いもの。

「さらに調子を上げたい!」と思う人こそ、ご自身に対する理解をより深め、専門家のアドバイスやレクチャーを仰ぎながら、日々の生活リズムを見直してみてください。そうすれば、日頃の調子が少しずつ上がってくるはずです。年齢に負けない、疲れ知らずのコンディショニングを身につけて、ランニングをさらに楽しんでいきましょう!

参考文献

・土肥美智子ら(2014)『成長期女性アスリート 指導者のためのハンドブック』独立行政法人日本スポーツ振興センター 国立スポーツ科学センター(JISS),pp. 77-80. https://www.jpnsport.go.jp/jiss/Portals/0/column/woman/seichoki_handobook_10.pdf
・鈴木志保子(2018)『理論と実践 スポーツ栄養学』日本文芸社

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