たんぱく質はどれくらい必要? 2020年改訂の食事摂取基準から考える
Mar 17, 2020 / FOOD
Mar 17, 2020 Updated
最近、 “サラダチキン” や “プロテイン” など、たんぱく質に関連した食事や言葉が、より身近になっているように感じます。栄養学の面でも、たんぱく質を摂る重要性は高いため、このような流れは良いことだと思います。
たんぱく質をしっかり食べる意識はしている…という方、実際にはどれくらいの量を摂ると良いかご存知でしょうか。それを知るための1つの目安とされてきた『食事摂取基準』が、2020年版として新しく改訂されました。そこから見える最新の “たんぱく質事情” から、私たちに必要なたんぱく質の量などをチェックし、身体作りのために明確な目標を設定してみませんか。今回はたんぱく質と身体作りに関連した情報をお伝えします。
たんぱく質は “体の骨組み”
『たんぱく質=筋肉』とイメージされる方も多いのではないでしょうか。確かに、たんぱく質は筋肉に多く含まれます。そのため、肉や魚から多くのたんぱく質を摂っています。食事で摂ったたんぱく質は、主に筋肉の材料として使われますが、赤血球や骨の材料としても使われています。カラダを栄養素別で分けた場合でも、たんぱく質は水分・脂肪の次に多い成分です。このように、たんぱく質は様々な場所で機能し、健康に生きていくには無くてはならない栄養素の1つとして役割を果たしてくれているのです。
痩せ過ぎないように
2020年版として改訂された食事摂取基準の中でも、たんぱく質摂取に関連したものが2項目。最新の研究を踏まえ、どのような指針が示されたのか、チェックしていきましょう。
対策はより早い時期から
2015年版までの食事摂取基準では50歳以上の方の区分けを『50~69歳』と『70歳以上』と1区切りにしていました。今回の改訂では、『50~64歳』『65~74歳』『75歳以上』の2区切りになりました。
どのように区切りが変化したのか。新旧の『目標とするBMI』の値を参考にして見てみましょう。
(※いずれも男女共通)
<2015年版 食事摂取基準>
年齢(歳) | 目標とするBMI(㎏/m²) |
18~49 | 18.5~24.9 |
50~69 | 20.0~24.9 |
70以上 | 21.5~24.9 |
<2020年版 食事摂取基準>
年齢(歳) | 目標とするBMI(㎏/m²) |
18~49 | 18.5~24.9 |
50~64 | 20.0~24.9 |
65~74 | 21.5~24.9 |
75以上 | 21.5~24.9 |
目標とするBMIの下限値が21.5と増えるのが、2015年版では70歳以上からでしたが、今回の改定によってBMI21.5を目標とする時期が5年早まって65歳からになりました。これまでよりも早い時期から痩せ対策を打つ必要がでてきたのです。
歳を取ってもたんぱく質をしっかり
では、身体作りをしていくためにはどんな栄養素や食事が良いのか。 身体作りに大切な栄養素の1つ、たんぱく質の目標量も、今回の改訂で数値が変更になりました。赤字で示した箇所がその変更点になります。
<2015年版 食事摂取基準>
性別 | 男性 | 女性 |
年齢(歳) | 目標量(%) | 目標量(%) |
18~29 | 13~20 | 13~20 |
30~49 | 13~20 | 13~20 |
50~69 | 13~20 | 13~20 |
70以上 | 13~20 | 13~20 |
<2020年版 食事摂取基準>
性別 | 男性 | 女性 |
年齢(歳) | 目標量(%) | 目標量(%) |
18~29 | 13~20 | 13~20 |
30~49 | 13~20 | 13~20 |
50~65 | 14~20 | 14~20 |
65~74 | 15~20 | 15~20 |
75以上 | 15~20 | 15~20 |
目標量とは、生活習慣病や痩せの予防のために、どれくらいたんぱく質を摂るべきかを示した量になります。たんぱく質については、他のエネルギー源栄養素(炭水化物・脂質)とのバランスを取る必要があるため、1日のエネルギー量に占める割合(%)で示されています。
多くの方は年を取るにつれて、1日に食べる量≒摂取エネルギー量が少なくなる傾向にあります。目標量の下限値が上がったことが意味するところは、年を取ってもタンパク質の量は、概ね保つことが大事ということです。
1日にどれくらい必要か
この数字だけを見ても、パッと具体的な食事のイメージは浮かびにくいと思います。実際にたんぱく質の目標量の下限値を満たすにはどれくらい必要になるのか。65歳で1日の必要エネルギー量が2,400kcal、BMI22.0、体重維持(痩せ予防)を目的としている方を例して計算をしてみましょう。
1) たんぱく質のエネルギー量 2,400kcal × 15% = 360kcal
2) たんぱく質の必要量 360kcal ÷ 4kcal/g = 90g (※たんぱく質 1g当たり4kcal)
よって、65歳で1日の必要エネルギー量が2,400kcalの方の場合、痩せ予防に必要なたんぱく質量は1日90g、1食当たり30gになります。肉・魚がしっかりとある主菜に加え、ご飯や豆腐の味噌汁などがあれば目標量をクリアできます。コンビニ食ではパスタ・丼ものにゆで卵などを1品加えることで大方クリアできます。料理によって大きく異なりますので、ラベルの栄養成分をチェックしてから購入するようにしましょう。
エネルギーも摂ることを欠かさず
体重維持でも、増量でも、減量でも、注意することはたんぱく質の量だけに目を向け過ぎないことです。体重維持をするためには、たんぱく質の量をクリアすることに加えて、1日に必要なエネルギー量も満たすことも必要になります。先ほど例にした65歳の方では、1日の必要エネルギー量が2,400kcalでしたので、糖質・脂質もバランスよく摂ってこの数字を満たす必要があるのです。
たんぱく質を1日90g摂れていたとしても、ご飯を抜いたり油ものを控え過ぎてしまえば、エネルギーが2,400kcalに至らないことにもなります。これでは体重が減ってしまいます。肉だけ、プロテインだけといった偏った食事ではなく、なるべく主食・主菜・副菜を意識した内容の食事にするように心がけていきましょう!
痩せもリスク しっかりとした食事を
リスクを理解しておくことは不安感を和らげてくれる1つの方法です。「将来のあなたの健康を支えます」と、この食事摂取基準の数字は、膨大な研究結果を基にして私たちを支えてくれます。是非、そこに信頼を置いてみてはいかがでしょうか?
参考文献
・厚生労働省, 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書.