「24時間365日をアスリートとして生きる」、世界に挑み続けた横田真人さん

–頼もしいですね。日本に帰って来てからの計画はありますか。

日本に帰って来てからは、中長距離のチームを立ち上げる予定です。私がやるから中距離のイメージが強いかもしれませんが、中距離だけじゃなく、長距離もやります。なぜか中距離と同じくらい長距離のコーチングに挑戦したいというパッションが強いです。今の日本の中長距離界は完全に停滞期です。ものごとの停滞には原因があり、停滞を打破するには「変化」が必要で、私は日本の中長距離界が現状を打破するための鍵は“多様化”だと考えています。

ちょっと本流から外れると、批判が起きたり、妬みが起きたりする。強くなる方法は人それぞれで、信念をもって競技に取り組んでいる人を批判する理由にはならない。実業団がいい、大学がいい、海外がいい、個人がいいとかどうでもよくて、それぞれの組織に携わる人はそこに信念を持ってやることが大事だと思っています。信念を持っているチームや個人にはカラーがつく。そのカラーが新たな選手を引きつけ、哲学やトレーニング理論に共感しチームに入ったり、追随するものが現れる。全体をマネジメントする人はそれぞれの組織や個人が互いに尊重して競争しあえる環境をつくる。それが大事だと思っています。

–横田選手の日本の陸上中長距離界への未来に対する想いが伝わってきます。

ただ、現状では選ぶ選手側からするとあまりにも選択肢が少ない (似たようなものばっかり)ので、新たな選択肢を自分が立ち上げるチームが提供できたらなと思っています。詳細はまだ話せませんが、他のチームとは大きく違うから、「自分に合う、合わない」がはっきりするチームだと思います。合いそうだなと思う人はぜひ来て欲しいし、合わない人は他で強くなってくれればいい。そうやって互いを尊重して刺激しあって強くなればいいと思います。そして少しずつ多様化を許容する文化が陸上界に根付いて欲しいと思っています。

また、陸上界、スポーツ界全体の話でいうと、組織の多様化だけでなく、人材の多様化も大事だと思っています。そのためには、アスリートを含むスポーツ業界に携わる人の経験を多様化させることか、他業界から人材を補うことが必要だと思っています。経験が少ない人はそもそも多様化に対して、否定的な人が多いので、少なくとも、自分が関わるアスリートの経験を多様化させ、最終的にはスポーツ界に刺激を与えられるような人材を育てたいというのも裏目標です。まずは自分がそんな人間にならないといけませんが。

「「24時間365日をアスリートとして生きる」、世界に挑み続けた横田真人さん」の画像
「横田選手感動をありがとう!」 Photo: ©h.iwakuni by Re:cords

私が今まで経験した事、海外で学んできた事、これから学ぶ事を次の世代に伝える事、発信していく事は非常に大切だと考えています。未来のアスリート達に多くの可能性・選択肢を与える事が重要です。答えは一つではありません。色んな選択肢から、その人にとってベストな方法に導く指導者になりたいですね。「選手に自信を与えること、その自信を形に変える事」がコーチの役割だと私は思っています。

これから1年間アメリカで頑張ります。今後とも横田真人を宜しくお願い致します。

プロフィール

「「24時間365日をアスリートとして生きる」、世界に挑み続けた横田真人さん」の画像 横田 真人 (よこた まさと)
1987年11月19日生まれ、東京都出身。
ロンドンオリンピック・世界陸上大阪大会・テグ大会男子800m日本代表。立教池袋高校3年時にインターハイと国体で優勝。高校卒業後は慶應義塾大学総合政策学部に入学。大学4年時に800mで1分46秒16の日本記録 (当時)を樹立。大学卒業後は富士通に入社。日本選手権の800mで4連覇を含む6度の優勝。一時はアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴやサンタモニカを拠点とした。2016年の国体を最後に現役引退。現在はアメリカ・オレゴン州ポートランドにてコーチングを学ぶ。
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