「24時間365日をアスリートとして生きる」、世界に挑み続けた横田真人さん

2016年9月11日、慶應義塾大学日吉キャンパス陸上競技場。伝統の早慶戦のトラック上で一人の男が宙に舞いました(動画4分30秒〜)。彼の名は横田真人。日本選手権を800mで6度制し、2009年には男子800mの日本記録を樹立。そして、2012年のロンドンオリンピックでは、日本人として同種目44年ぶりのオリンピック出場を果たすなど、幾度も世界の舞台で挑戦を続けてきました。

一時はアメリカ西海岸を練習拠点とし、自問自答の日々が続いたといいます。そして、世界との差を自らの身体で感じた横田選手。2016年の国体を最後に現役引退。東京オリンピックを4年後に控え、選手としてではなく、彼なりの答えを求めて、再びアメリカの地へ降り立つ時がやってきました。

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伝統の早慶戦800mOP=“横田真人引退記念レース”を走り終えて。Photo: ©h.iwakuni by Re:cords

 

“24時間365日”をアスリートとして生きる

–現役生活お疲れ様でした。横田選手の現役時代を振り返っていかがですか。

立教池袋高校では800mでインターハイと国体を優勝して、大学は慶應義塾大学総合政策学部に入学しました。慶應義塾大学を選んだ理由は、学業面で学びたいことがあった点と、競技面では競走部にはコーチがいない点でした。「在学時に日の丸を背負う」というのが大学入学時の大きな目標で、それをセルフコーチングで達成したいと考えていました。入学後は順調に成績を伸ばし、800mで1年時に世界ジュニア選手権、2年時に世界陸上大阪大会に出場して日の丸を背負いました。メリハリをつけて、陸上は陸上。勉強は勉強。遊びは遊び。気分転換の出来るリラックスの時間や、大学時代の友人や陸上仲間との時間も大切にしました。

しかし、3年時は、北京オリンピックへの標準記録が破れず悔しい思いをしました。4年時には、奮起して800mの当時の日本記録 (1分46秒16)を樹立したものの、新たな学びが必要だと思い海外に拠点を移すことを視野に入れるようになりました。大学卒業後は富士通株式会社に入社し、競技に専念しました。「海外に拠点を置きたい」という私の無理な要望に応えてくれた唯一の企業でした。そして、入社1年目の夏、初めて海外での単独合宿をアメリカで行いました。

カリフォルニア州のサンディエゴでヨアキム・クルズ (ロサンゼルスオリンピック800m金メダリスト)というコーチに師事したのですが、彼から学んだことは非常に多かったです。私は、それまで「スピード重視」のトレーニングをしてきましたが、彼に「それはオリンピックで戦うためのトレーニングか?」と問われ、なにも返せませんでした。オリンピックを勝ち抜くためには4日間で3本のレースを走る必要があり、それに耐えられるタフさを追求する要素は私のトレーニングにはありませんでした。

そこから、「世界で戦うためのトレーニング」から「オリンピックで勝ち進むためのトレーニング」を前提にトレーニングをするようになりました。彼は、すぐに彼のやり方に私を合わせようとせず、私のやり方らから徐々に対応させていくプロセスをとってくれましたが、日々の練習は相当にキツいものでした。それまでの日々の過ごし方では次のトレーニングまでに体が回復しなかったことから、トレーニング以外の時間をどう過ごすかをいままで以上に考えるようになり、「24時間365日をアスリートとして生きる」意識が芽生えました。その意識が芽生えたことで、プロとしてお金を戴いて競技をやっていることの意味を考え、競技での結果や普段の生活にも責任を持つ事を改めて考え直すきっかけになりました。

どん底から学んだこと

–ロンドンオリンピックでは予選落ちに終わりました。横田選手にとってどういう大会でしたか。

結果としては予選落ちで残念でしたね。。オリンピックで世界と勝負するという気持ちで、全力を尽くして臨みましたが、自分の力が足りなかったという事です。オリンピックの舞台、特にロンドンという都市は、陸上人気が絶大な場所だったので、凄い雰囲気で、私にとっては特別な時間でした。しかし、私にとってのオリンピックをこれで終わりにしてはいけない。もう一度、オリンピックの舞台に立って少しでも上のラウンドを目指すこと、また次世代に私の経験を伝えていこうという気持ちが生まれました。そして、さらなる高みを目指して拠点を本格的にアメリカに置く事に決め、かつてカール・ルイスが在籍した、カリフォルニア州のサンタモニカ・トラッククラブで練習に励みました。

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カリフォルニア州サンタモニカ・トラッククラブでチームメイトと走る横田選手
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