29,700円のアシックス『メタライド』は費用対効果が高いモデル
Apr 25, 2019 / SHOES
Mar 13, 2020 Updated
みなさん、こんにちは。シューズアドバイザー藤原です。
さて、アシックスから出ましたね。すごいのが!!
今回はアシックス『METARIDE(メタライド)』のご紹介です。
商品発表に際しては、情報統制を徹底。スポンサーである東京マラソン2019直前の2月28日に一気に露出するというマーケティングはお見事でした。話題をさらった感がありましたね。
さて、このシューズのポイントは2点。まずは誰の目にもとまる、この見た目。話題の“厚底”。それともう一つは、アシックスの誇るテクノロジーがギュッと詰まった“ハイエンドモデル”というところでしょう。
70年代のランニングムーブメントの高まり以来、伝統的にランニングシューズのアシストは、坂道(ドロップ)+つま先跳ね上げの半強制的な揺らし方が王道、いわゆるドロップスタイルのミッドソールが代表的です。アシックスで言えば、有名な『GT-2000』や『GEL-KAYANO』、『GEL-NIMBUS』といった定番スタイルのランニングシューズがこれにあたります。
しかし、2009年から数年間続いたベアフットムーブメントが、体を前に運ぶシューズの役割としての揺らし方に変化をもたらしました。ソールに傾斜をつけずに、ランナー自身が体を前に揺らし、その意識付けをポイントにおいたロッカー(レスドロップ)スタイルが生まれたわけです。
そういった背景から、『ホカオネオネ』、『アルトラ』といった新興勢力が台頭、『ニューバランス』、『サッカニー』といった老舗定番ブランドもレスドロップ化(傾斜を落とす)するなどしていきます。
『メタライド』はそういった潮流の中、生まれたシューズと言えます。ただ、つま先、トゥースピリングのその極端な跳ね上がりがとても独特なことは間違いないです。しかも、ソール全体の構造はゼロドロップと傾斜が全くないスタイルと、老舗アシックスとして、かなり踏み込んだモデルとなっています。
シューズがしてくれること=体の前の誘導をシンプルに受け入れられれば、前に進む感触を味わえます。シューズの中足部(真ん中)から前のみを使って走っている感覚で、足をつける良いポイントを外さないぐらいの意識で走ると、本当にどんどん進みます。ミッドフットあたりで足を着地させるイメージがピッタリです。
跳ね上げ部は、まるでカーボンプレートが入っているのかのように硬く、それがかえって余計な動きがでず、踵からつま先までとてもスムーズに移動する感じ。硬く、屈曲しづらいことは悪いことではなく、過度な足首の底背屈動作が減り、ふくらはぎの負担が軽減するというアシックススポーツ工学研究所が発表したデーターにもつながるわけです。
この構造を使って、アシックスがメタライドで目指したのは、速く走るシューズではなくて、エナジーセービング(疲労をためづらい)シューズだと言えます。より長く、より楽に、をサポートするまさにランニングスペシャリティーシューズなのかもしれません。
スペックとしては、アシックスのテクノロジーのデパート。まさにMETA(高次)なシューズとなっています。
ミッドソールは2層構造になっていて、中足部(真ん中)がくりぬかれた形状です。いくつかプロトタイプを作った中で、この部分が抜けたことでスムーズに足抜けができる感触になったようです。高い技術力なしには完成しえない作りです。
そのソール、グライドソールは、『フライトフォームプロパル』の上にやや硬めの『フライトフォームライト』が乗っていて、足のその真下の底面は軽さと安定感、地面に接するボトムは、誘導感が強い形状とソフトでバウンシー(反発感のある)クッション感といった工夫の産物です。
また、通常ターサー、ソーティーなどについている前足部のTPUグリップ素材が貼ってあり、アウトソール(靴底)のグリップはとてもいいですね。ウエットな路面でも全く危なげがなかったですね。ミッドソールだけでなく、ここにも“技術のアシックスここにあり”という感じです。
忘れてはいけないこのシューズは『ニットアッパー』となっています。ここにも技術力ありです。ニットアッパーでは難しいトゥーボックス(つま先の高さ)がはっきりとあって、甲まわりと踵でしっかり固定され、つま先には安心感がある作りになっています。
最後に一つ言えることは、アシックスのラインナップがすべてこのスタイルになることはないでしょうね。ニューバランスやサッカニーなどのようにレスドロップ化するわけでなく、定番のドロップスタイルと、どちらのスタイルも提案していくことになるでしょう。
1つのブランドの中に、ドロップシューズもあれば、強烈なレスドロップシューズもある。アシックスが目指すのは、シューズブランドのデパート化でしょう。ですから『メタライド』と定番のドロップ型のシューズを併用して使ってみる。これをオススメします。何故なら、「どっちのスタイルもあり」だからです。
「タイムが速く走れれば、何でも良い」なんて、そんな薄っぺらいものではなく、より前に楽に進む感覚はランニングの醍醐味で、何ものにも代え難い体験ですよね。
シューズがサポートしてくれる部分は少なくないですが、その感覚をしっかりと身につけることがランナーの潜在的目標であり(前に進むという意味で)、そしてランナー自身の体の使い方がうまくなることで、結果、レースでのタイムアップにつながると思うんですよね。
つまり、いろんな揺れ方を体験するのは、ランナーにとって悪いことじゃないし、むしろ、それが楽しいですよね。どっちも履き分けましょう。
「長く楽に走りたい」「フルマラソンをベストタイムで走りたい」という方は、メタライドを使って、力みやフォームの乱れ、適切なクッションなど、“自身が抱えているフォームとしての課題”をクリアしてみたらいかがでしょうか?
結局、距離の長いマラソンで速く走るって、そういうことですよね。スピードが速い必要がない、そのペースでいかに楽か、それが重要ですよね。
そう考えれば、29,700円(税込)という価格も、費用対効果が高いシューズになると思いますし、現在履いている定番スタイルとの相乗効果を期待できるシューズです。是非、履いてみて下さい。
METARIDE(メタライド)
<シューズスペック>
価格: 29,700円(税込)
重量: 290g (size 27.0cm)
厚さ: 33mm (Heel), 33mm (Forefoot)
サイズ展開:
*メンズ: 25.5cm~30.5cm(0.5cm刻み)/ 31.0cm/ 32.0cm
*レディース: 23.0cm~28.5cm(0.5cm刻み)
足幅/ ラスト: 標準(スタンダード)
アッパー: ニットアッパー
ミッドソール: グライドソール(フライトフォームプロパル+フライトフォームライト+ディスクGEL)
アウトソール(靴底): グリップソールアウトソール
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(写真 Eliana)