いつまでも走り続けたいランナーへ。アシックス最新シューズ「METARIDE」を履いて30km走のレビュー
Feb 27, 2019 / SHOES
Apr 26, 2019 Updated
こんにちは。Runtripの大森です。
本日、アシックスがこれまでのテクノロジーを駆使し、知識や技術の粋を集めたランニングシューズ『METARIDE(メタライド)』が発表されました。
幸運にも私はこのシューズを事前に履く機会をいただけたので、試しに30kmを走ってみた感想をご紹介したいと思います。
結論から述べると、これは私たちがランナーである時間を伸ばしてくれるシューズだと思います。ちょっと大げさな言い方に聞こえるかもしれませんが、実際に30km走ってみた後の身体の疲労具合からそんな風に感じました。もう少し具体的に言うと「あれ、30kmってもうちょっと疲れなかったっけ?」というのが走った直後の感覚です。(ある程度の距離を走ってみる方が、このシューズの魅力を感じることができると思います。)
今回はそのあたりのことを、整理してご紹介していきます。
いつまでも走り続けることがランナーの願い
このメタライドというプロダクトには、アシックスの”覚悟”にも近いような、強いメッセージが込められているように思います。なぜそう思うかというと、明らかにシューズの構造が”意図的”だからです。
構造については後ほど紹介しますが、まずそこに込められたメッセージが何かというと「できるだけ長い時間走り続けられるようにランナーを支える」という主旨のメッセージです。1回あたりに走る距離もそうですし、明日も明後日も怪我をせずに、なるべく疲労を残さずに走り続けられるように、というメッセージでもあると思います。このあたりは事前にコンセプトを伺っていたところですが、実際に履いてじっくりと走ってみると、ああやっぱりそうだ、と感じることができます。
ちなみに、本日の記者発表会でアシックスが掲げたタグラインは「WIN THE LONG RUN」というものでした。
“ランナーを速くするため”というよりも、“いつまでもランニングを楽しみ続けるため”のシューズであるというのが最大のポイントだと思います。速く走るためではないと言い切ることはある意味で覚悟がいることですが、例えばフルマラソンの35km以降に「ウォーカー」にならずに、できることなら「ランナー」でいたいと願う人たちが多いのも事実です。また、人生を楽しむためにも、明日も走れる身体・コンディションでありたいと願うのも、ランナーの本音です。
そういったランナーの願いを叶えようという意図を感じられるのが、このメタライドというプロダクトのように思います。
想いを実現させるためのソール構造
そんなメッセージを感じさる構造とは何かという方向に話題を移していきます。このシューズを履いた感想を、なるべくわかりやすい言葉で表現するなら「安定していて、スイスイ進む」という感じです。
このシューズを見たときに、まず注目するポイントはソール(靴底)の厚さでしょう。厚底がどうという話については昨今様々な場所で取り上げられているので、もしかすると少し食傷気味の方もいるかもしれませんが、今回はまたちょっと違う文脈で語られる厚底シューズになっています。
ソールはご覧の通りなかなか厚めです。だからこそ着地した時に地面の衝撃からしっかりと足を守ってくれます。これ自体はまあ当たり前の話なのですが、厚さの割にとても軽いんです。この軽さの秘密がソール内部にあるT字の空洞(側面と背面から空洞がある)です。この空洞の分だけ軽量化されています。
ですが、この空洞はもちろん軽量化のためだけにある訳ではなく、着地した時にソールの素材がぐにゃっと変形し、それによってクッション性を増すという機能を持っています。
また、かかと部分のヒールカップのホールド感も、実際の重さよりも軽く感じさせてくれる効果としては一役買っていると思います。個人的にはこの“かかとのホールド感”は以前からアシックス製品の強みだと思っているのですが、接地時の身体のブレを軽減してくれるし、かかとがフィットしているとシューズが軽く感じられます。(なのでシューズを結ぶ時はかかとをきちんとあわせましょう。履くときにかかとを踏むなんてダメ絶対、です。)
いわゆる反発性についてはそれほど強く感じませんでした。ソールの薄いシューズ(例えばターサージャパンやターサージールなど)のように、「パンッパンッ」と地面からの反発を得て加速していくというタイプのシューズではないので、その辺りは比較対象にはならないと思います。
一方で、だからこそ安定性が非常に高いです。ゆえに、怪我に繋がりにくいし、ランニング中の疲れにくさに繋がるのでしょう。
ころがるような重心移動
上述した通り、接地時の安定性は非常に高いのですが、ここからメタライドの最大の特徴とも言えるポイントをご紹介します。
これは実際に履いてみると最もわかりやすく感じられる特徴だと思いますが、シューズを履いた状態で重心を少しでも前に移動させると、シューズ自体がさらにぐいっと重心移動をサポートしてくれます。ソールのつま先部分がぐっと反り上がってゆりかごのような構造になっているので、重心が強制的に前傾するような設計になっているのです(履いたことがある方には、HOKAのシューズやズームフライ/ヴェイパーフライのような構造というのが伝わりやすいかもしれません)。このゆりかご状の構造が、ある一定の重心の位置から不安定さを生み出し、それによってとてもスムーズに前方へ重心移動ができるため、それがそのまま推進力へと繋がっています。この辺りは、履けばすぐにわかると思います。
また、このソールは親指の先に向かって力が流れるよう設計されており(ごくわずかに親指側に傾斜してると感じるのですが)、比較的どんな位置で足を接地させても、常に親指の先へと“すうっ”と重心が流れていく感覚を感じられるはずです(あえていろんな方向から足を接地して走ってみたのですが、親指の先に向けてガイドされる感じがありました)
ちなみに記者発表会では、足首の角度に着目したと発表されていました。
ランナーの足首が屈曲する時に大きくエネルギーを消費するということがわかっており、今回のメタライドのソール構造は、そうした屈曲を抑えることに成功したために走行効率を最大限高めることができたそうです。
走行時の足にかかるエネルギー消費は、従来のシューズに比べ約19%改善できたようなので、これが1歩ずつ積み重なれば確かに大きな差につながりそうです。
できるだけ無駄な力を使わずに走れる楽しさ
着地時の安定性、履いた時に感じる軽さ、そしてスムーズな重心移動によって、限りなく力を使わずに「安定してスイスイ進む」ようなランニングを楽しむことができるのがメタライドの特徴だと思います。
記者発表会では「怪我から身を守ること」と「より少ないエネルギーで走れること」の両立を目指したと話されていましたが、確かに30km走ってみた感想としては、これまでの疲労感とは差があったように感じられました。それが冒頭に記載した「ランナーである時間を増やしてくれる」と感じた大きな要因です。
もちろんシューズにはそれぞれ作られた目的があり、それによってシューズを履き分けるということがランニングを楽しむ際の1つの重要なポイントとも言えるので、どのシューズがいいというものではないかもしれませんが、この『METARIDE(メタライド)』は、速さを求めるシーンというよりは、長く走り続けることを楽しみたい方ならば、ぜひ一度試してみる価値のあるシューズだと思います。