いよいよ今シーズンも箱根駅伝の開催が近づいてきました。メンバー発表も終わり、ファンのみなさんの中には勝敗予想を立てている方もいるのでは。そんな箱根ムードの中で、今回は箱根駅伝の裏側についてもよく知るメンバーに、ちょっと違う角度から語っていただきました。
登場するのは、マラソン芸人で駒澤大時代に駅伝主務を務めたM高史さん、神奈川大時代に箱根駅伝への出場を目指していた萩原拓也さん(ポップライン)、そして大学には進まなかったものの、マラソンで2時間33分30秒の自己ベストを持ち、高校陸上部時代の同僚の多くが箱根駅伝で活躍している、芸人の宇野けんたろうさん(げんき〜ず)による“箱根駅伝座談会”。箱根ファンも気になる裏話も盛りだくさんの内容です!
萩原拓也(お笑いコンビ・ポップライン、左)
かつて神奈川大陸上競技部に選手として4年間所属。卒業後は2年間の役者生活を経てお笑い芸人へ転身し、現在は設楽悠太選手(Honda)のそっくりさんとして駅伝ファンを中心に密かなブレークを果たしている。
宇野けんたろう(お笑いコンビ・げんき〜ず、中央)
吉本興業のお笑いコンビ「げんき〜ず」のツッコミ。正則学園高校3年時に全国高校駅伝の6区を走った。マラソンの自己ベストは2時間33分30秒。TBS日曜劇場『陸王』に立原隼斗役として出演し、2019年NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』に井手伊吉役として出演することが決まっている。
M高史(ものまねアスリート芸人、右)
駒澤大陸上競技部では駅伝主務として選手をサポート。2011年12月より「ものまねアスリート芸人」へ転身し、〝公務員ランナー・川内優輝選手のそっくりさん〟として注目を集める。
箱根駅伝の給水事情
箱根駅伝は駅伝としては長丁場の大会ゆえに給水が重要です。現在の箱根駅伝では、多くのマラソンで見られるテーブルに置いてある給水を選手が取るという方式ではなく、現役部員などが選手に給水を渡すやり方がとられています。現役給水マン&旧給水マンが話す箱根駅伝の給水事情とは……。
箱根駅伝は毎年楽しみに見ているんだけど、2人は大会当日、テレビで観戦してるの?
駒澤大を卒業した後もガッツリと箱根駅伝のサポートをしてますよ!前回は4区と8区の給水を担当しました。
え!現役部員じゃなくても、OBでも給水できるんだね!
はい。チームが認めたチーム関係者でも給水ができます。9区の横浜駅前での給水はテレビに映るんですが、僕が担当した給水ポイントはテレビに映らないところでした。それでも、給水する時はメチャメチャ緊張しました!!
OBでも給水できるんだったら、萩原くんも(HONDAの)この格好で給水やればいいじゃん(笑)
箱根駅伝での給水といえば、第89回大会で当時、早稲田大学のエースだった大迫傑選手に給水したのが、やり投ロンドン五輪日本代表のディーン元気選手。長距離部員以外も給水するということで当時話題になったよね。
選手ってすごいスピードで走ってくるじゃん。軽装じゃない給水スタッフが急に走ったらキツい?
僕は現役選手じゃないので入念に給水のためのウォーミングアップをしますね。
第91回大会では青学の9区を走った藤川拓也選手に給水を渡した川崎友輝選手が、最初に胸に給水を突き出したけど、その後引っ込めて、驚かせてから給水を渡すってっていうシーンもあったね。
普通のチームだったらあの状況でふざけるなんて絶対にできない。相当チームの雰囲気も良くて実力的にも余裕がある証拠ですよね。細かいけど、ああいうところに強さが垣間見えます
僕はそんなこと3000%できないです(笑)運営管理車に乗った大八木監督が後ろにいますからね…。
運営管理車から見た箱根駅伝
箱根駅伝といえば、選手の後ろから追走する運営管理車からの監督が選手にかける一声が見もの。なかでも駒澤大の大八木監督がゲキを飛ばすシーンは多くの駅伝ファンに愛され、現在も語り継がれています。その大八木監督と運営管理車で一緒に同乗していたというMさん。運営管理車から見た箱根駅伝とは一体どういったものなのでしょうか
大八木監督は練習の時は厳しいんですけど、本番は優しいんです。「よーしいけるぞー!男を見せろ!」とか「故郷の両親や先生に勇姿を見せろ!」とか、大八木監督は厳しさの中にも根本的な優しさを持っているアツい人です。
僕が4年生の時、大八木監督と一緒に運営管理車からレースを見ていました。その時に10区を走った僕の同級生の治郎丸健一に大八木監督がいつも通り声をかけていました。その後、僕にマイクを渡して「お前、最後言っていいぞ」って声をかけていただきました。
うそ!そんなことさせてもらえるんだ!すごい。それで、なんて言ったの?
「いけー!治郎丸最後だー!!」って言いました。そこから治郎丸がペースアップしたんです。それで、レース後に治郎丸に聞いたら……
「全然聞こえなかった」って言われましたけどね(笑)
一同(爆笑)
トイレを我慢することですかね。レースが始まってからだいたい6時間ぐらい乗車しているので、水分を取らないようにしていました。
運営管理車には監督や主務、運転手以外にも人が乗っているのですが、僕が3年生の時にある人がいきなり「トイレ行きたい」となり……そこで、やむをえず3分ぐらいコンビニへ行きました。
駅伝は先頭でない限り、駒澤大の選手の前にも選手や運営管理車が位置しているので、その3分のロスを詰めるのが実は難しいんです。それから大八木監督の表情が厳しくなってきて……そこから先は想像にお任せします(笑)
今大会注目の選手
今大会は5連覇を目指す青山学院大に例年通り注目が集まりますが、激しい優勝争いに加えてシード権争いも激しくなります。駒澤大出身のMさん、神奈川大出身の萩原さん、そして大学には進まなかったものの箱根駅伝を楽しみに毎年観戦している宇野さん。この3人の今大会の注目選手は一体誰でしょうか。
今大会の注目はやっぱり青学。注目選手は2人いて、1人は前回1区を走った鈴木塁人選手。彼は僕の高校の陸上部の恩師が指導した選手で、鈴木くんも今回自信満々みたい。もう1人はドラマの『陸王』で共演した神林勇太選手。共演した時に色々話したけど「青学は強いからなかなか箱根駅伝に出れなくて悔しい」と言っていた。この2人の活躍に期待だね。
僕の注目選手は神奈川大の山藤篤司選手、越川堅太選手、荻野太成選手の主力メンバーですね。関東インカレで母校の応援に行ったんですが、その時に荻野くんにレース前に話しかけたら「調子悪いんですよ」と。不安なことを言いながらも3000mSCで3連覇したので勝負強いです。神奈川大は去年の全日本大学駅伝の前は、それほど注目されてなかったけど優勝したりと、カチッとハマった時の強さがあるので、うまくいけば往路3位に入る可能性もあります。
僕は自分がマネージャーだったこともあって、あえて各大学の主務を応援していますね。前回もそうですし、今回も僕は母校のサポートに回るので、後輩とはいえ駒澤大の吉川大和主務にもお世話になっています。各大学の主務、縁の下の力持ちにの彼らにもスポットが当たるといいな、と思ってます!ということで、今回も箱根駅伝の現場にいるので、当日僕を見かけたら皆さん宜しくお願いします!
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■箱根OB座談会(前編)
■箱根OB座談会(後編)
|ライター|フォトグラファー|
学生時に陸上長距離で全国大会出場、引退してから20代後半には計8ヶ国のロードレースに出場し、ローカルレースでは勝利を飾る。ライターとして南米、南極以外の大陸で取材・撮影を経験。2019年にハワイでバギーランデビューを果たした1児の父。またの名をすしマン。