現役引退も「マラソンを走らないのはもったいない」、函館マラソン優勝の森川千明さん

「現役引退も「マラソンを走らないのはもったいない」、函館マラソン優勝の森川千明さん」の画像

(写真 倉島周平)

設楽悠太選手のモノマネでお馴染み、ポップラインの萩原拓也さんが名を連ねるTOKYO BAY RCのコーチ陣。その萩原さんの姿を見てTOKYO BAY RCで市民ランナーへの指導を始めたランニングコーチの存在をご存知でしょうか。

女子1500mで4分12秒75(日本歴代9位)の記録を持つ森川千明さん。実業団のスターツとユニクロで活躍し、今年2月に12年間の実業団生活を終え、新たにランニングコーチとして活動を開始しました。コーチとなってから初のマラソンを走るなど、チャレンジし続ける彼女に、これまでの競技人生と走ることについての現在の心境について聞きました。

モチベーションの変化:学生時代と実業団時代

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小学校の時にバスケットボールに取り組んでいた森川さん。その頃からマラソン大会で“走ることが得意”だと感じていたといいます。中学時代には北信越大会で7位に。新潟県の三条東高校に進学し、全国インターハイや全国高校駅伝に出場。「がむしゃらに走ることが自分にとっての日常でした」と当時を振り返ります。

学生時代は、シドニー五輪で高橋尚子選手が、アテネ五輪で野口みずき選手がそれぞれマラソンで金メダルを獲得した時期で、森川さんに刺激を与えます。しかし、高校時代は、全国大会で入賞するほどのレベルではありませんでした。「高校から実業団に上がる時には、無我夢中で走っていました」。更なるレベルアップの為に実業団のスターツで競技に取り組みます。

「現役引退も「マラソンを走らないのはもったいない」、函館マラソン優勝の森川千明さん」の画像森川さんのスターツでの最初の2年間は波瀾万丈。貧血でまともに走れない時期を経て、迎えた20歳の誕生日の全日本実業団選手権のジュニア3000m。「20歳の誕生日に、実業団で埋もれていた自分が応援にきてくれていた父親の前で優勝できて、とても嬉しかったです」。9分16秒の自己新記録での優勝という快走をみせます。

その後は着々と競技力を伸ばし、ユニクロへの移籍を経て、1500m、5000mを中心に東日本女子駅伝優勝など駅伝でも活躍。1500mでは日本歴代9位となる4分12秒75を記録。日本選手権や全日本実業団選手権で、ともに3位に入るなど、その競技生活は順風満帆に進んでいったかのように思えました。

しかし、ストイックに自分を追い込むことで「長年のトレーニングにより、心身共にダメージがあって、次第に走ることが嫌いになってしまった」といいます。2017年にも日本選手権3位という結果を残したものの、2018年2月4日を最後に現役引退し、12年間の実業団生活を終えました。

新しいチャレンジへ:函館マラソンでの初マラソン

実業団時代から市民ランナーとの繋がりがあった森川さんは、引退前の2017年12月に市民ランナーと交流を深めました。「競技をやめる前は走ることが嫌いだった」といいますが、現役引退後にも市民ランナーとの交流を重ね、次第に走ることへの意欲を取り戻すこととなります。

18年間走り続けてきたものの、マラソンを走り終えずに現役引退したのはもったいないと考えました。「現役引退をしたものの、マラソンを走らずしてキッパリやめるなんて受け入れられなかったんです」。現役引退後から5ヶ月後の7月1日の函館マラソンに挑戦することを決意します。

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©2018 Shuhei Kurashima

その頃から、元々交流があった千葉県のチーム“海老川の力”の練習会に参加することに。“海老川の力”は、市民ランナーのチームとはいえ、男性メンバー17人中15人がサブスリーというエリート集団。週1回の朝6時30分からの練習会に参加して、再び走ることに闘志を燃やしていったのです。

ですが、順調に消化していた練習に赤信号が。「6月に体調を崩してすごく不安だったんですけど、最低限はサブ3で走りたいと思っていました」。初マラソンに対する不安もあったそうですが、函館マラソンのレースがスタートしてすぐに「負けたくない!」と勝負モードになった森川さん。

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出典:Facebookより 初マラソンの函館マラソンでは2時間46分37秒の大会新記録で優勝

結果は2時間46分37秒の大会新記録で優勝。アップダウンのあるコースながらも、走りながらワクワクしていたそうです。苦手な上りを克服した完走後は「感動した」といいます。マラソンという彼女にとっての新しい競技。「まだまだできるんだ!」と走る喜びやその楽しさを感じることができたのです。

走ることを楽しむ:ランニングコーチとしての今後

現役引退のタイミングで、冒頭で触れたポップラインの萩原拓也さんがTOKYO BAY RCで市民ランナーと関わっていることを知ります。純粋に走ることを楽しんでいる萩原さんを見た森川さんは、ランニングコーチへの転向を決意。市民ランナーへの指導を通じて、「競技力に関係なく、皆が一生懸命になっている姿に感銘を受けています」と話します。

現役引退をしてからしばらくは、それまでの厳しいトレーニングの反動でランニングから離れることができたものの、その選択肢を選ばなかった森川さん。ランニングコーチとして市民ランナーの指導に携わるようになり、「学生時代に走り始めた頃のランニングに対しての純粋な感覚が蘇ってきたんです」。

「現役引退も「マラソンを走らないのはもったいない」、函館マラソン優勝の森川千明さん」の画像「いろんなご縁で、いろんな人との繋がりで、これまで支えてもらってきました。そして、様々な交流を経て、やはり走ることは“自分の強み”であるということを感じていました。それが、自分がこれからも生き生きできることかな。そんなことを考えていたら、今ではすっかり走ることが楽しく感じるようになりました」。

1年前は走ることが嫌いだったものの、今ではそれを楽しんでいます。千葉県の海浜幕張の往復コースがお気に入りだという彼女は今後、子供への指導や主婦向けの講座も視野に入れているそうです。ランニングで多くの人に走る喜びを伝えるランニングコーチとして、森川さんの今後の活動が期待されます。

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<プロフィール>
森川 千明(もりかわ ちあき)1987年9月22日生まれ。新潟県出身。TOKYO BAY RCコーチ。SAYSKY、NEWTONアンバサダー。三条東高校 - スターツ - ユニクロで主に中距離競技に取り組み、1500mでは日本歴代9位となる4分12秒75を記録するなど活躍。2017年に日本選手権1500m4位、全日本実業団選手権1500m3位。2018年2月4日に現役引退し、12年間の実業団生活を終える。その後、TOKYO BAY RCのランニングコーチに就任し、ランニングイベントやマラソン大会のゲストランナー、市民ランナーの指導を行う。2018年7月の函館マラソンでマラソンデビューを果たし、大会新記録の2時間46分37秒で優勝。

・シューズ
Road: NEWTON Fate /Race: asics TARTHERZEAL, NEWTON DISTANCE

・ウォッチ
GARMIN 230J

・好きなランニングコース
稲毛海浜公園/ディズニーリゾート外周

■森川千明さんのウェアコーデ

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