「遊びを体験する場を!!」、街と山がシンクロする地に“外遊び”のハブスポット登場
Apr 04, 2017 / SPOT
Apr 26, 2019 Updated
アウトドアフィールドを身近に備えた都市、札幌。
この地に、昨冬オープンしたアウトドアスポーツの複合施設『SAPPORO EXPERIENCE BASE』はあります。
冬を越え、新たなシーズンのキックオフとも言うべき日に開催された体験型イベントには、アウトドアブランド「サロモン」が誇る国内のトップアスリートたちも参加。3日間のイベントは大盛況でした。
「スノーランニング」というユニークなイベントで幕を開けた北海道の春は、好天に恵まれ、サロモンの掲げるコンセプト“TIME TO PLAY”(=さぁ遊ぼう!)を体感できる絶好の機会となりました。
今回は、筆者自身も体験に加わったイベントの模様をレポートします。
街と山がシンクロする地に建つ、“外遊び”のハブスポット
まだちらほらと雪が残る3月25日。北海道札幌市の中心部から、交通機関で約40分。徐々に傾斜が急になり、両端にまだ雪が多く残るうねり道をゆくと、左手に真新しいロッジ風の建物が見えてきます。
洗練された形状にもどこか温かみを感じるのは、それが木造であるがゆえなのかもしれません。
Runtripにも度々登場した『SAPPORO EXPERIENCE BASE』(SEB)は、アメアスポーツジャパン株式会社が運営するアウトドアスポーツのコミュニティスペース兼ギアショップです。
2階建ての内部は、1階フロアーには『サロモン』や『スント』、『アトミック』等の最新モデルを展開するショップ、およびスポーツギアのチューニングスペース。2階フロアーは『アークテリクス』や『マヴィック』、『エンヴィ』等の展示ショールーム兼イベントスペースという構造。
付近には標高約300mのほどよい山々が位置し、最寄りのスキー場『さっぽろばんけいスキー場』へは車で約15分。
街と山とをつなぐ道。その途上にあるSEBは、まさにアウトドア・アクティヴィティのベースメントとして絶好のスポットといえるでしょう。
「ひとことで言えば“遊びの体験としての場”をつくるということ。北海道には富良野やルスツ、トマムといったウィンターリゾートがありますが、数年前と比べて、私たちの中でもアウトドアというジャンルが大きなウェイトを占める様になってきました。そこで、元々あるウィンタースポーツにプラスして、アウトドアにおける遊びの提案を発信していきたいという想いがあります。その為の複合施設として、1階にショップ、2階にコミュニティスペースがあり、この場を使って色々なエクスペリエンス(体験)を提供していきます」
ショップマネージャーの三日市博恒さんはSEBのコンセプトをそう語ってくれました。
そして続けます。
「今日やるクリニックなんかもその一環なんですよ」
今回、SEBを拠点として開催されたイベントコンテンツは3つ。初日の3月24日にはサロモンアスリートたちによるトークセッション。続いて彼らを交えたスノーランニングクリニック。最終日は『さっぽろばんけいスキー場』を舞台にしたレース、『ban.Kゲレンデスロープラン』です。
前日のトークセッションを経てあたたまった雰囲気の中で行う2日目のスノーランニングクリニック。正午を過ぎ、参加者の皆さんが続々と集合。中には遠くアメリカから旅行中という女性ランナーの姿も。サロモンアスリートからギアのアドバイスをもらう人、雪道でもグリップの効くシューズを試着する人。晴天のもと、SEBはにわかに活気を帯びていきます。
適度な高度と見渡す美景。魅力溢れる札幌の裏山
スノーランニング——。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、雪原を走るといういたってシンプルなスタイル。雪道で滑りにくいよう、多少ソールの溝が深いトレイルシューズをセレクトする事が望ましいですが、アイゼンなど特殊な装備は基本的に不要です。
13時。
札幌市街地寄りの円山を経由するビギナーコースと、SEBの背後に広がる3つの低山、三角山、大倉山、奥三角山を越えるエリートコースの二手に分かれ、クリニックがスタート。
筆者は思いきってエリートコースに参加。SEBスタッフで自身も実力派ランナーの反中祐介さんが事前に開拓したルートに則して、山中に分け入ってゆきます。
ザッ、ザッ、ザッ。
雪を踏みしめる心地よい音が、静かなスノートレイルに響きます。しかし気を抜いて圧雪されていない場所へ踏み入ると、ズボっと膝上まで埋まってしまう。
木々の間を縫う登坂、下降。山腹の踊り場での休憩中は、サロモンアスリートによる走法のレクチャーをはさみます。
「膝をあげて、小刻みに。接地後は蹴らずに押す感覚でいきましょうー!」
「下りはかかとから着地して、バランスを取りながら、滑るように!」
アドバイスを採り入れつつも、各々自分なりの走法をミックスさせつつスノートレイルを乗りこなしていきます。
脚を引き抜くように登り、滑るように駆け下る。
歩を進めるにつれて、次第に札幌スノートレイルの魅力に気づき始めます。
それは、冒頭でも触れた“ほどよい標高”。
約300mという低山のピークから見下ろしているためか、眼下の街が近く感じられ、雪化粧した周囲の山々に群生する木々は、やや赤みがかっているように見える。そんな光景が、遥か遠くまで広がっています。
先導する反中さんが言います。
「夜景は、もっとキレイなんです」
3つのピークを越え、最後に1972年の札幌冬季オリンピックにおいてスキージャンプ競技が開催された大倉山ジャンプ競技場を経由してSEBへ。
既に帰還していたビギナーコースの方々も含めて、参加者の皆さんは口々に、
「(走り方が)ムズカシかった…」
と言いつつも、
「でも、楽しかったです!」
一方でこんな声も。
「足元が雪だと、丁度いいトレーニングになるんですよね!」(反中さん)
スノートレイルをゆく約3時間のクリニック。山岳競技のエリートから、初体験の人まで、各自が抱いたスノーランニング感想記がSEB内の至るところで飛び交っていました。
雪面を駆け抜ける爽快感。“ゲレラン”という名の新ジャンル
クリニックでつかんだスノーランの感覚を早速レースで試す——。
ゲレンデの高台に出来た即席ゲートにカラフルなウェアをまとった大人たちがズラリと並びました。
イベント最終日は『さっぽろばんけいスキー場』で開催される『ban.Kゲレンデスロープラン』。ゲレンデのアップダウンを利用したレース。今年で2回目を迎えます。
前日のクリニック参加者のみならず、総勢約100名の選手で競われる“ゲレラン”。ジュニア部門のレースを終えると、滑りゆくスキーヤー、ボーダーから送られる視線を横目に、ゲートを飛び出したランナーたちがゲレンデを駆け下っていきます。
ゼッケンナンバー100番でスタートした筆者。
“膝をあげて、小刻みに。接地後は蹴らずに押す感覚…”
“下りはかかとから。バランスを取りつつ滑るように…”
クリニックでのアドバイスを思い浮かべながらも、雪面を急降下した直後の登り返しにたちまち鼓動が早まり、溢れ出る乳酸。その直ぐ横を通過するリフト。スキー場のお客さんの声援が飛びます。
後方スタートで追い上げて来たサロモンアスリートの小出徹さんも、
「これはキツいっすねー!」
思わず漏れる言葉。
スタートから約30分が経過し、遠くからMCによるフィニッシュ実況が響き始める。一方、筆者はもうひと下り。
ようやくゴールに近づくと待ち構えるのは、レースを終えたランナーたちによるハイタッチトンネル。最後まで温かいおよそ5kmのショートレースでした。
そもそもなぜ“ゲレラン”は生まれたのか。コースディレクター兼MCを務めた石田満さんは言います。
「SEBもオープンするし、こんなレースをずっとやりたかったんです。色々な人に注目してもらいたくて、インパクト重視でスタートは下り坂から。都心部からのアクセスも良好で、短時間で終わるレース、ケガも無し。モットーは“近い”、“安全”、“短時間”。スキー場の皆さんの全面的なバックアップがあってこそ、ですが、これからも続けていきたいですね」
出場した皆さんに話を聞くと、
「キツかったけど楽しかったです。転んでもイタくないし!(笑)」
と思いきや、
「登りのツラさがまた楽しい」
というツワモノも。
産声をあげて間もない、キツくも楽しいスノーランニングという新しいランニングのカタチ。
「これをきっかけの一つにして、札幌に来てくれたら良いですよね」
サングラスをかけた大柄な石田さんの声には、充実感が溢れていました。
“冬”と“春夏秋”。ウィンタースポーツにプラスアルファで、オールシーズン楽しめるアクティヴィティ・フィールドへ
“ゲレラン”翌日、札幌滞在最終日に、筆者はもう一度SEBに伺いました。
この日もせわしなく動く三日市さん。3日間のイベントを終えた感触を聞くと、
「ゲレランをやっているところはまだ日本には他に無いので、面白い取り組みですよね」
今回のレースには、北海道内の人々のみならず、遠く高知県からきたランナーも。また、道内でも今までSEBに来店した事の無い人も参加していたそう。
既に定着、成熟したウィンタースポーツカルチャーに加えて、アウトドア・アクティヴィティという新提案。その意味でも、スキー場をランニングコースに据えた“ゲレラン”の開催は、両者の融合を象徴するイベントなのかもしれません。
クリニック当日に伺った三日市さんの言葉が思い起こされます。
「今回がキックオフなんです。長い冬が終わって、雪が降る10月中旬ごろまでは、いわば“春夏秋シーズン”その間は、まず、ウィークリー、マンスリーでトレイルランニングの入門体験とか、GPSウォッチの使用レクチャーも含めたクリニックを開催していきたい。初心者から上級者までのコンテンツを用意して、大規模ではなく、小さなコミュニティから少しずつという形で、今は考えています。このSEBという場を使って北海道全域の色々な情報を発信していきたいな、と」
北海道の“外遊び”シーンに加わったアウトドア・アクティヴィティという新風は、SEBという発信基地の誕生によってこれから更に勢いを増しそうな気配です。
TIME TO PLAYの概念をベースにした札幌発、新しいスポーツカルチャーの鳴動。今年の春から秋にかけて、北のフィールドを駆け抜けてみては如何でしょうか?
もちろん、旅行も兼ねて。
店舗概要
店舗名称 SAPPORO EXPERIENCE BASE(サッポロ エクスペリエンス ベース)
所在地 〒064-0952 北海道札幌市中央区宮の森2条16丁目12-1
アクセス 地下鉄東西線「円山公園駅」より円山バスターミナル14番荒井山線
またはばんけいバスにて「大倉山競技場入口」下車 バス停留所前
電話番号 011-213-7168(店舗直通番号)
営業時間 平日(月~金)11:00~20:00/土・日・祝祭日10:00~19:00
定休日 不定休
店舗HP http://seb.amersports.jp/
トレイルランニングの世界選手権代表に内定した荒木宏太さんにトレイルの魅力を伺いました
あなたは朝ラン派?夜ラン派?「絶対朝ラン派」のJuri Edwardsに朝ランの魅力を聞いてきました。