2017年3月1日

あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像
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世界自然遺産に登録されている小笠原諸島。日本とは思えないような、温暖な気候と、雄大な自然に恵まれたその島には、日々ランニングを楽しむランナーの方がたくさんいらっしゃいます。

しかし、「小笠原で毎日ランニングを楽しむ」ということがどういうものなのか、上手く想像ができません。どのような生活をしているのか?小笠原を走る魅力とは?実際に聞いてみたいことがたくさんありました。

そこで、毎日、朝焼けを見ながら走っているという女性ランナーの矢嶋和歌子(やじまわかこ)さんに、小笠原でのランニング生活についてインタビューをさせていただきました。小笠原に来た経緯から、小笠原ランの魅力までお話を伺いましたので、是非ご覧ください。

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像

 

「全国を転々としていたら、ここにたどり着いた」

早朝5時45分、島の東側に位置する旭平展望台からスタート。朝日が綺麗に見えるポイントとのことで、父島の市街地から車で10分ほどで着きます。今回はこちらの展望台で水平線から昇ってくる朝日を見てから走っていきます。

まだ外は暗く、太陽は海の下。しかし、小笠原の人々の朝は早いです。矢嶋さんも、この時間には既に走り始めているそう。朝日が昇る前に、小笠原諸島で暮らすことになったきっかけと毎日の生活について伺いました。

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像日の出前の海と空。わずかにオレンジ色の光が見えるが、辺りはまだまだ暗い

ー本日はよろしくお願いします!早速ですが、矢嶋さんはどのようにして小笠原諸島に住むようになったのでしょうか?

はい、まず島ではみんなに「わかちゃん」と呼ばれてるんで、わかちゃんでいいですよ!私は小笠原に来て22年になります。当時は、いろいろな仕事がしたかったので、日本各地を2年くらいかけて巡っていました。女性なので、いずれ結婚して家庭に入る前に様々な職業を経験したいと思っていたんですよ。北海道へ行ったら、北海道ならではの仕事をしてみる、といったように。まあ簡単に言えばフリーターですね(笑)。

これを、日本全国で行っていきたい!と思っていたのですが、何ヶ所目かで小笠原に来て、あまりのこの土地の素晴らしさにはまってしまって(笑)。それまでは、だいたい3ヶ月で他の場所に移っていたのですが、小笠原では3ヶ月の予定が半年、1年と伸びて、気がついたら3年!みたいな感じで、そのまま暮らすようになりました。もうそれからは帰るつもりもなく、あとは旦那さんと結婚して、今日まで住んでいます。

ーなるほど、面白い経歴ですね。私もお言葉に甘えて「わかちゃん」と呼ばせていただきます(笑)。ちなみに、小笠原ではどのような生活をされているのでしょうか?

そうですね、6時くらいから子どもを学校に行かせる準備があるので、それまでに毎朝4kmほど走っています。夏場だと、4時過ぎくらいから明るいので、そのくらいから走り出すことも多いですね。逆に冬場は6時くらいにならないと明るくならないので、そのあたりは調整しながら走っています。

毎日1回は走るようにしていて、朝焼けがたまらなく綺麗なので、早朝に走っています。あと、「朝の静かな音」があるんです。鳥の声とか、海の音とか、生活音が鳴り始めるちょっと前の静けさがある小笠原が私にとってはとても魅力的なので、その音を聴きながら走るのが毎日楽しいんです。ランナーの皆さんには、早朝の小笠原を走ってみることをおすすめしたいですね。

ランニングが終わったら主婦業をして、夜にお酒を飲んで寝ます。あと、町のスーパーが閉まるのが早いんです。18時には閉まってしまうので食事も早い時間になって、だいたい21時には寝てますね。旦那さんが漁師をしているので、それもあって朝は早いです。

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像雲の切れ間から朝日が見え始める。島の1日が始まる。

午前6時を過ぎると、だんだんと太陽が昇り、空が明るくなってきます。わかちゃんは軽く身体をほぐしてから、早朝の小笠原を駆けていきます。

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像軽くストレッチ。静けさに包まれながら、走ることに集中していく。

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像朝焼けの空と海を見ながらランニング。かなりのハイペースで走っていて、あっという間に置いて行かれてしまう。

 

「お酒を止めたくなくて、走り始めました。」

ー走り始めたきっかけは何でしょうか?

小笠原で走りはじめて、5年が経ちました。それまでは主婦業をしていて運動とは縁遠かったのですが、きっかけは島の健康診断でした。健康診断の時にちょっと引っかかるところがあって、保健師さんに「運動をするか、お酒を控えるか、どちらかをしてください。」と言われたので、大好きなお酒を止めることはできず、走り始めました(笑)。

それで、40歳を過ぎたあたりからランニングを始めました。小さい頃から運動は得意なほうで、好きだったこともあります。やると決めたらスイッチを入れて、仲間を作って、スタートしました。最初は、走っているのが恥ずかしかったのですが、やっていると体重や体脂肪がどんどん落ちていって、楽しくなってきて。それからは色々なコースを走るようになりました。

見られるという意識も出てきたので、スポーツウェア選びも楽しくなりました。どんどん体調も良くなっていて、お酒を飲んでも二日酔いしなくなりました!(笑)。風邪も引かなくなって、良いことづくしだったので、走ることが生活の一部になっていきましたね。

ーお酒がお好きなんですね。たしかに、小笠原で飲むお酒は美味しかったです!他にも小笠原の良いところを教えていただけますでしょうか?

そうですね、小笠原の良いところは「気が楽なところ」ですね。自然の流れに身を任せると、自分が楽なんです。「なぜ、なぜ?」とかいろいろ考えずに、良いことも悪いことも、起こることは全部自分に起こるべきことなんだ、って感じやすいんです。

内地(本州)に住んでいたときには、その流れに気がつくことが難しかったんです。色々な楽しいことや忙しいことの中で、自分のそういったことを考える余裕が無くて、自然の流れに逆らって苦労したこともありました。でも、ここだとそういう時間も持つことができて、自分を見つめ直すこともできるので、前向きに考えることができるんですよ。そこが、私は一番の魅力かなと思いますね。

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像走りはじめておよそ10分。ちょっと休憩として長崎展望台に立ち寄る。

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像雲が表情を変えて、旭平展望台とはまた違った朝焼けが見られる。

 

「挨拶をしよう、そうすれば小笠原がもっと楽しくなる。」

ー小笠原を訪れてみたいランナーの方々にご覧頂いていると思うのですが、そんな方々に向けて小笠原ランの魅力も教えて頂けますか?

はい、素晴らしいコースはたくさんあるのですが、どこを走っても信号がないのが魅力でしょうか。内地(本州)で走ると、たくさんの信号をまたがないと走れないので。小笠原には信号が2箇所しかないんですよ。だから、自分のペースでスムーズに走れます。

気温が一年を通して暖かいので、防寒具が少なくて済むのも魅力的ですね。内地(本州)だと2月の早朝には走れないです、走る前に身体が凍っちゃって(笑)。あとは、走っていて目にする景色が本当に飽きないです。海が見えたり、山が見えたり、鳥がいたり、季節によっても変わるので、いつも「綺麗だなあ」と思って、走りながら見ています。

それと、島なので山あり谷ありで、トレーニングにも適していると思います。坂道も多いので、長い距離を走る時の筋力や肺活量のトレーニングもできます。小笠原ランには、いろいろな魅力がありますね!

ーありがとうございます、実際に小笠原に来るとしたら、誰と来るのがおすすめですか?

そうですね、どの方でも自然の流れに沿えば全て楽しめると思います。1人で来られても、たくさんの島の人と交流することができるので、良いと思います。あと、私が25歳で島に初めて来たときに「誰とでも挨拶をしよう」と教わりました。実際にみなさんに挨拶をしていると、本当に受け入れてくださったんですよ。

今でも、走りながら挨拶をしているんですけれど、そうすると「あの時の!」というように覚えてくださっていることが多くて、親しくなれるんです。それに、挨拶をすると多くの人が返してくれて。都心だとあんまり無いですよね。朝から挨拶をすると楽しい気分になれます。

そういう触れ合いも、小さい島ならではなので、1人で来られても楽しいと思います。ただ、1週間に1本しか船が出ないので、仕事や家庭をお休みして来ることはなかなか難しいと思うんです。それで、1番多いきっかけとしては、仕事を辞めたきっかけとか、大学を卒業する時期とかですね。

そんなタイミングで来られると、自分を見つめ直す良いきっかけになると思います。楽しいときも来てほしいですが、これからの人生で何をしたら良いか、考える時に来ても良いのかなと思っています。その時に走れば、いろんな出会いがあるはずなので。

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像休憩を取りながら、小笠原の魅力を楽しそうに語るわかちゃん。

ーなるほど、私も大学を卒業するときにはまた来たいと思います!最後に、全国のランナーに向けてメッセージをください。

はい、東京から1,000km離れたこの小笠原に、「いつか来たい!」と考えている方は多いかと思います。なので、考えるだけでなく、是非1度で良いので来てください!実際に訪れると、その体験は人生においてとても大きなものになると思います。

私も、是非みなさんと一緒に走りたいと思っています。この小笠原で、思いっきり大自然を感じるために、ぜひ遊びに来てください!

ーインタビューにご協力いただき、本当にありがとうございました!

「あなたはなぜ、小笠原諸島で暮らす? 女性ランナー・矢嶋和歌子さんの場合」の画像完全に太陽が出た後の港にて


午前7時30分、取材とランニングを終えて、小笠原の清々しい空気を感じました。波が打ち寄せる音、青い空に浮かぶ大きな雲、静かな朝。これを感じると、この島から離れたくないと思ってしまいます。

インタビューさせていただいたわかちゃんも、非常に気さくで話しやすく、小笠原に来たことを歓迎してくださいました。人の温かさも感じられる小笠原諸島。ラントリップの目的地としていかがでしょうか?

小笠原ランの様子はこちらの記事に掲載しています。

今回、わかちゃんが走ったランニングコースはこちら!

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平池拓也が執筆した記事

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