「アメリカまで来て最後の最後で負けたくない」、トレラン/スカイランのホープ・上田瑠偉さんの素顔に迫る
May 27, 2016 / MOTIVATION
Apr 26, 2019 Updated
2014年、日本山岳耐久レース(ハセツネカップ)において、大会新記録で優勝し、その名を一気に轟かせた、トレイル/スカイランナーの上田瑠偉さん。
まだ、大学を卒業したばかりの上田さんからは、希望に満ち溢れた言葉の数々がうかがえます。
この4月には海外レースで初優勝を飾り、スカイランニングの世界選手権に向けて幸先の良いスタートを切りました。
今回はそんな上田さんの練習法や今後の目標などをお聞きしました。
歯がゆい経験と影での努力
—中学時代に都道府県対抗駅伝で長野県代表メンバーとして優勝し、佐久長聖高校に入学されましたが、高校時代を振り返ってどうでしたか。
高校3年間は、貧血や腸脛靭帯の故障で棒に振ってしまい、実績を全く残せないまま卒業してしまいました。
特に、入学してからの1年間はとても辛く、陸上競技をやめたいという葛藤ばかりで精神的にも辛かったです。
その中でも、入学してから駅伝部の学年責任者に自ら立候補し、3年時にはキャプテンを務め、その責務を果たすべく毎日奮闘していました。
それでも、競技でチームを引っ張っていけないことはとても歯がゆかったです。
故障している自分と向き合うことは、とても辛かったですが、この経験を経て今となっては時には100kmほどを長時間走るスカイランニングの基礎になったと思っています。
具体的には故障している時に、山歩きや水泳を長時間行っていたので、メンタル面が成長したと思います。
—大学は早稲田大学に進学されましたが、競走部ではなく陸上競技同好会を選びましたね。
早稲田大学の競走部に入らずに、同好会に入るということで親と言い争いになったこともありましたが、楽しく走りたいという気持ちがありました。
同好会での4年間は色んなチャレンジが出来て、基本的な走力も上がりましたし、結果的には得るものが大きかったと思っています。
トレイルラン / スカイランニングに取り組むようになって脚筋力が強化され、5000mのベスト記録も14分26秒まで引き上げることが出来ました。
ハセツネを大会記録で優勝してからは、サンフランシスコに1ヶ月ほど滞在して、語学のレベルアップや現地の選手との交流も出来ました。
去年の夏にはUTMB (ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)のレースの一つである、CCC (101km / 6,100mD+)にも出場し、世界の舞台を体験出来ました。
基本的なスピードを磨く
—上田さんの練習メニューは、山で走ることはもちろん、トラックレースや駅伝に出場するなど様々ですね。
スカイランニングの世界トップレベルの選手と対等に勝負するには、基本的なスピードをつけないといけないと思っています。
その中で、普段からインターバルトレーニング、トラックレース、駅伝などを活用してスピードの強化を図っています。
スピードを付けつつも、フルマラソンでも2時間20分を切るようなレベルに引き上げていきたいですね。
今年の2月に開催された、おきなわマラソンではこれまでの自身のフルマラソンで初めて優勝することが出来たのでとても自信になりました。
レース後には恩師の両角先生に優勝を報告しました。
合宿でたまたま沖縄の宮古島に滞在していて、僕のレースをテレビで見てくださっていたそうです。
両角先生から激励の言葉をかけて戴き、とても良い機会となりました。
海外レースで初優勝
—この3月に早稲田大学を卒業し、社会人としての初レースは海外レース。アメリカの選手との競り合いに勝ち大会記録で優勝!おめでとうございます。
Gorge Waterfalls 100kというレースに出場しました。
レースはオレゴン州・ポートランドのコロンビア川の渓谷を走る100kmのレースで、大会前から現地入りして試走、リラックスして当日を迎えることが出来ました。
レースでは45kmぐらいから先頭に立って、そのまま逃げ切りを図りましたが、最後のエイドを通過して、最後の1マイルで脚が止まってしまって。。。
10秒ぐらい止まっていましたが、最後は「アメリカまで来て最後の最後で負けたくない」と、気持ちで押し切り、先頭でゴールすることが出来ました。
体力を全て出し切ったので、ゴールしてからは本当に疲れていました。。
—9時間も走って接戦ですから、本当に価値のある勝利ですね。レース後は、高校時代の先輩である、大迫傑 (3000m,5000m日本記録保持者)さんと食事されたそうですね。どういうお話をしましたか?
ポートランドに住んでいる大迫先輩から連絡を戴き、食事をしました。
大迫先輩と会うのは高校以来だったので、殆どが高校時代の話になりました。
その他、大迫先輩が所属するアメリカのナイキの中にトレイルチームがあるらしく、その事情について聞いてみたのですが「トレイルチームについてはほとんど知らない」と言っていました(笑)
大迫先輩は日本選手権や、その先に目指しているリオオリンピック、僕はスカイランニングの世界選手権と、最後はお互いの今後の健闘を約束しました。
いざ世界選手権へ
—スカイランニング世界選手権(スペイン・7月22~24日)と、ユース世界選手権(イタリア・7月29~31日)を2ヵ月後に控えていますが、現在の調整具合はいかがですか。
5月上旬の上田バーティカルで、初めてバーティカル(5km程度の距離で1,000m程度を走って上る競技)という種目を経験し、初めて世界レベルの宮原徹さんと走って、多くの学びがありました。
その後、5月下旬の経ヶ岳バーティカルリミットでそれを実践してみたら、昨年の宮原さんの大会記録を更新できました。
このレースでやっと「世界と戦う上で最低限のレベル」になったかな、という感じです。
7月の世界選手権まであと2ヶ月ということで、ここからさらにレベルアップ!というよりも、連戦(バーティカルの翌日に42㎞のレースなど)に耐え得る体作りや低酸素への耐性を作るトレーニング、そしてピーキング。
自分の今の実力を出し切れるように準備していきます。
—最後にお聞きしますが、トレイル / スカイランニングの魅力は何ですか。
とにかく、下りを一気に駆け抜けるのが気持ちいいです。
また、日本の山もそうですが、海外の素晴らしい自然の中で走れる素晴らしさをいつも感じています。
いつかはアメリカのグランドキャニオンやアンテロープキャニオンなどの壮大な場所を一気に駆け抜けたいですね。
プロフィール
上田 瑠偉 (うえだ るい) 1993年10月3日生まれ、長野県出身。 モントレイル/マウンテンハードウェアサポートランナー。 2016スカイランニング世界選手権、ユース選手権日本代表。中学時代、長野県代表として都道府県対抗駅伝に出場し優勝。佐久長聖高校に進学するも、故障により目立った成績が残せず、早稲田大学に進学。早稲田大学陸上競技同好会で競技を続け、2014年の日本山岳耐久レース(ハセツネカップ)にて大会新記録で優勝。2016年4月にはアメリカでのGorge Waterfalls 100Kにて海外レース初優勝。好きな“すしネタ”はサーモンマヨと炙り穴子。 |
こちらのインタビュー記事も人気です