国内レースは未経験も42.2kmを100日連続で走った上山光広さん

『マラソン』という名の42.195kmのドラマ。ランナーは“レース”という場所で、その長い道のりを体験する。それまで“国内のレースに出場したことがなかったランナーが、100日連続フルマラソンを走破”したという話をあなたは信じることができるだろうか?

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兵庫県神戸市在住の上山光広さん。2018年12月1日から2019年3月10日まで、100日連続でフルマラソンを走破した男である。およそ4220kmを100日間で走ったのだが、「これまでに日本のマラソン大会には出場したことがない」という。そんな上山さんに話を聞いた。

誰にもできないことをやりたい

普段は書家として活動する上山さんは、「あなたを見て言葉を書きます」という即興パフォーマンスを続け、15年間で約4万人もの人々に言葉を送り続けてきた。

マラソンとの出会いは、2017年。友人からペルーのイカ砂漠マラソン(250km)への誘いを受け、人生初のレースで、いきなりウルトラマラソンの最長カテゴリーともいえる砂漠マラソンに挑んだ。

しかし、この無謀な挑戦は途中棄権に終わってしまう。

「正直、舐めていました」

上山さんは諦めきれず、その悔しさをバネにして、2018年のモンゴルのゴビ砂漠マラソン(250km)に挑戦。日中の気温はおよそ15~35℃、夜は0℃近くまで下がるという、世界で最も気象変動が大きいゴビ砂漠で、6日間の道のりを全て走りきった。

「2日目は気温が40℃あって、ミネラルが欠乏してしまい、空を見上げて泣いていました。3日目は氷点下でしたが、他の参加者からアドバイスをもらって、次第に体が回復してきたんです」

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気温だけでなく感情の起伏も激しくなる“極限の世界”において、上山さんは書家として自分が存在する意味を考え、徹底的に自身と向き合った。

「自分には “速く走る” という才能はないけれど、誰もができるランニングで誰にもできないことをやりたいと思ったんです」

その年の暮れに、“100日連続フルマラソン”という、さらなる自己探求への道を切り拓いた。

月間1300kmを3.3ヶ月継続する長き旅。自宅周辺の42.2kmから始まり、やがては自宅から6km先にある『しあわせの村』まで走り、そこで1周2.7kmの外周をひたすらグルグル走ってから自宅に戻るマイコースが定着した。

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週間295km、月間1300kmを走破(Stravaより)

とはいえ、どんな天候でも、どんな体調でも、42.2kmを毎日継続しなければならない。上山さんは、“走りたいときに走り、休みたい時に休む”というスタイルではなく、“決めたルートを決めた時間帯に絶対に走る”というルーティンで、2ヶ月間の2600kmを走破した。

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©︎Mitsuhiro Ueyama

「次第に、同じコースに飽きてきてしまったんです」

3ヶ月目の2019年2月から走行ルートの変更を検討するも、自宅周辺以外で神戸のランニングコースを知らなかった上山さん。そこで役に立ったのが『Runtrip』のコース検索サービスだった。マイコースをベースに、神戸市中央区のハーバーランド付近で走り終えるルートを開拓。次第にモチベーションが上がっていったという。

上山さんは日々の記録をStravaで公開し、70日目からはInstagramを毎日投稿するようになった。そして、日々積み上げていく走行距離と同じように、1人、また1人と上山さんを応援する人がSNSを通じて増えていった。 “誰にもできないぐらいのことをやりたい” という気持ちで始めた100日連続フルマラソンは、いよいよ佳境を迎えていく。

ランニングは自己表現

走行距離は3ヶ月連続で月間約1300kmを記録し、3月に入って残すは10日間。3ヶ月目あたりから、次第にダメージを残さない走りを身につけ、 “人体の不思議” を感じていたという。

「省エネなフォームに勝手に変わっていって、走った後の疲労も少なくなってきました」

ストライドを短くして、上半身のブレを少なくする。ダメージの少ない走りで、最後の10日間はゴールタイムもどんどん速くなった。それまで90日間で2回しかなかった『サブ4』を最後の10日間で3回も記録した。

迎えた100日目の3月10日。この日は、100日連続フルマラソン走破の瞬間を見ようとゴール地点に駆けつけた多くの人々が、笑顔でゴールテープを切る上山さんを祝福した。

「今回達成できたのは、家族のお陰でもありますが、マイコースでよく会う人からの 『今日も頑張ってんなぁ』という励ましであったり、一緒に走ってくれたランナーの存在であったりSNSを通じて世界中からの励ましのコメント、僕のことを知って背中を押してくれた全ての人の声が力になりました」

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多くのランナーを惹きつける上山さんに、“走ることとは何か? ”という問いをぶつけると、『ランニングは自己表現』だと教えてくれた。

「あくまで自分は、書家であって表現者。自分が何者であるかを表現するのが書道で、ランニングも同じ。100人のランナーがいたら、100個のランニングコース、100個の表現がある。ランニングには、誰でもヒーローになれる可能性があるんです」

これからも、彼はランニングの可能性を信じる表現者であり続けるだろう。

『月間3000km』の領域へ

現在、1日に20〜30kmの距離を走っているという。そして、最近の愛読書は、千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)に関する本だという。千日回峰行とは、7年間でおよそ1000日もの期間にわたって長距離を歩き続ける天台宗の回峰行の1つである。

37歳で100日連続フルマラソン走破を達成した上山さんは、次の目標を『38歳で100日連続100km走破』と決めている。

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©︎Mitsuhiro Ueyama

「追い詰められて、極限の状態で自分が何を考えるかに興味があるんです。言葉にできない、震え立つほどのランニングの魅力と出会えるような気がするんです」

100日連続100kmは“月間3000km”で、日本の最南端から最北端までの直線距離に相当。100km × 100日=10000kmは、東京からシカゴやローマまでの距離に相当する。全国カーライフ実態調査2018による、マイカー所有者の平均年間走行距離6361kmの1.57倍の距離でもある。いずれにせよ、とてつもない距離である。

100日連続100kmの開始時期や場所は確定していないが、上山さんは“家族や仲間の力は大きいので、地元の神戸で走りたい”と、未来を見据えている。

「朝の5時に出て、どれだけかかっても15時間で(午後8時までに)100kmを走り切って、また翌日ですね」

過去にゴビ砂漠マラソン(250km)を6日間で完走しているが、1日で100kmを走ったことは、これまでにないという。今後は100kmを走るためのトレーニング、シューズ等のギアのチョイス、補給方法など戦略的な要素も重要になってくる。

「100日連続100kmは、僕の周りにやった人がいないので、期待も不安も実感もないし、見当がつかないんです。準備も大切ですが、100日連続の最中にベストな方法がわかってくるでしょう」

シンプルなようで奥の深い“ランニング”という行為の探求者は、前人未到の領域へと舵を切る。まだまだ手探りの状態ではあるが、10000km先への航海を前に、希望に満ち溢れていた。

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上山 光広(うえやま みつひろ)1981年6月23日生まれ。兵庫県出身。書家、ランナー。15年間で4万人の人々に「あなたを見て言葉を書きます」という即興パフォーマンスを行う。2017年から走り始め、2018年9月のゴビ砂漠マラソン(250km)を6日間で完走。その後10月に初の著書『やればできる』を出版。2018年12月1日から2019年3月10日まで100日連続でフルマラソンを走破。上山光広の幸せ感染ブログ『やればできる』

写真 Eliana

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