いつでも走ることができる競技と、チームがないと活動できない球技の話
Mar 22, 2019 / COLUMN
Apr 26, 2019 Updated
リーグ戦が行われたパームスプリングス・スタジアムは、ダウンタウンの中心部からすぐ近くにある。ダウンタウンと言っても流石はリゾート地。他のアメリカの大都市に見られるような荒廃した雰囲気は、みじんもない。地名の通り、パームツリーが並んだ芝生の美しい公園の中に建てられたこじんまりとした球場だ。もっとも野球をするフィールドそのものは広く、ホームベースから外野フェンスまでの距離は両翼106メートルもある。ちなみに東京ドームは100メートル、甲子園球場は95メートルだから、その広さがわかるだろう。
ぼくは性格で時間に遅れると言うことが出来ない。いつも試合開始時刻よりずっと早くに球場に着いた。そうなると車のトランクに入っているランニングシューズの出番になる。
よく球場の周りを走って時間を潰した。公園のとなりには高校があり、その周辺も閑静な住宅地の中によく整備された歩道が続いていて、ちょっとしたジョギングをするにはちょうどよかった。砂漠の中に作られた街だけあって、土地はひたすら平らで広く、坂道はまったくない。それも走るには都合がいい。サイクリングを楽しむ人も多いようだった。
ゆっくり走りながら、あれこれ考え事をする時間が何より好きだ。ランニングを趣味にして良かったとつくづく思うのは、いつでもどこでも走りたいと思いさえすれば、ぼくらランナーはただ走り出せばいい、ということだ。そこには、資格も条件も何もない。たとえレベルに天地の差があったとしても、ぼくのような素人でもオリンピックランナーと同じマラソンコースを走ることだって出来る。
だけど、野球選手はそうはいかない。どんなに野球が好きでも、そして自分の実力に自信があったとしても、受け入れてくれるチームがなければ野球を続けることが出来ない。スカウトだって、例えばマラソンのタイムのようにはっきりした数字で評価が下されるわけでもない。打率やら防御率やらの数字だって、試合に出なければ、そもそも結果を残す機会すらないのだ。その貴重な機会を求めて、あるものは仕事を辞めて、あるものはアルバイトで資金を溜めて、このスカウトリーグにやって来る。