「走ることは、夢を見ること」頂点を経験した上野裕一郎氏が次世代に伝えたいこと

いつかは“引退レース”を

競技生活でのハードな練習の積み重ねの一方で、合宿で訪れた印象的なランニングコースについても伺った。高地での練習場所として有名なカリフォルニア州マンモスレイクや、アメリカ西海岸のカリフォルニア州サンディエゴ北部のミッションベイを挙げた。「ロングジョグをしながら綺麗な夕日を見られたことが心に残っています」とミッションベイでの1日を回想する。

そんな上野監督は、今後も走ることを継続していくという。故障で苦しんだ2018年のシーズン中にオファーを引き受けたが、選手としてはまだやり残していることがある。“引退レース”で、最後の花道を飾るということだ。そこには「納得する形で引退してほしい」という、彼を長年支え続けてきた妻からの助言があったという。

「「走ることは、夢を見ること」頂点を経験した上野裕一郎氏が次世代に伝えたいこと」の画像
©︎2019 Sushiman Photography

「中途半端な終わり方が1番良くないので、大きなレースで自分の競技生活を終えたいと思っています」

監督業をこなしながらではあるが、自身がこれまで活躍してきたトップレベルの舞台に「(選手として)もう1度立ち、引退したい」という思いを持っている。

「そこに向けては、時間をかけてやってきたいと思っています。春先は選手の競技力向上やスカウトなどに注力しますが、“楽しく、強くなろう!”が僕たちのチームのモットーです。チームのみんなと楽しい気持ちになれるように、できる限り自分の走りでも選手を先導していきたいと思っています」

立教大の学生と年齢もそう離れていない上野監督。ともに汗を流してコミュニケーションをとりながら、独自の方法でチームの強化を図っていく構えだ。

自信をつけてくことが大切

5年後の第100回箱根駅伝出場を目指す立教大。この秋の箱根駅伝予選会では28位とその道のりはまだ遠いが、今後のスカウト強化は欠かせない。2019年度末には選手寮が完成する予定で、上野監督は「自分がこれからスカウトする選手は、基本的には全員が寮に入ることになります。1つずつ積み上げていって、予選会で着実に順位を上げていきたいですね」と意気込む。

「今は土台を作っている段階で、3月の立川ハーフがまずは最初のレースになります。この2ヶ月、彼らの練習を見てきて感じたのは、今まで彼らは“できそうな練習”を継続してきたということです。でも、クリアできそうな目標よりも2段階3段階の上の目標を立てて、練習からどんどんチャレンジしていこうという気持ちや姿勢が必要だと感じています」

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©︎2019 Sushiman Photography

監督の目から見て、一般受験を経て入学した多くの立教大の学生は「自分で考える能力や応用力がある」。あとは1つ1つの練習をしっかりとこなして「自信をつけていくことが重要」だと説く。

今回のインタビューの最後に、“上野監督にとって走ることとは何か?”という問いをぶつけた。

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