【箱根駅伝】街から海、そして山へ。編集部スタッフも駆け抜けた2日間の観戦記
Jan 08, 2024 / COLUMN
Jan 08, 2024 Updated
1月2日(火)、3日(水)の2日間にわたって行われた箱根駅伝。“駒大1強”との前評判を覆して青山学院大学が圧勝した今回は、100回目の節目を迎えたこともあり大きな注目が集まりました。
さらに、コロナ禍を越え4年ぶりに沿道の応援に対する制限がなくなった今年。箱根駅伝を毎年欠かさずに観てきたRuntrip Magazine編集部スタッフの木幡も「今回は選手たちの姿を追いかけたい」と溢れる思いを抑えきれず現地観戦へ行ってきました。
本記事では、熱いレースを見届けた2日間を振り返る観戦記をお届けしていきます。
観戦プランを考える時間も楽しみの一つ
東京から箱根まで、電車を乗り継いで観戦していく箱根駅伝。レースは1月2日、3日の2日間ですが、年を越す前から沿道の混雑具合や選手の通過時刻を考えて観戦スケジュールを組み立てていきます。
今回、観戦プランの参考にしたのは、駅伝ファンの間では毎年話題になる『あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド! 』(ぴあMOOK、通称・あまこま)。コースマップとともに距離や観戦ポイントが詳細に記されています。本と乗換案内アプリ、そして各大学のオーダー表を見比べながら観戦場所を考える時間も現地観戦の醍醐味かもしれません。
迎えた1月2日。1区は田町で観戦をスタート
迎えた当日。往路最初の観戦ポイントは1区5km過ぎの田町。駒澤大学・篠原倖太朗選手や順天堂大学・三浦龍司選手など注目選手が集まる今回の1区。いったいどんな姿が観られるのだろうと期待に胸をふくらませながら現地へ。
7時半ごろに沿道に着くとすでにだいぶ多くの人が並んでいます。この日は例年に比べて暖かい気温とはいえ、朝の時間帯はツンと張りつめた空気が流れます。寒さに耐えながら選手たちがやってくるのを待ちます。
8時のスタートから15分も経たないうちに大会広報車やテレビ中継車が交差点の向こうから姿を現します。
その向こうから押し寄せる歓声とともに先頭集団の選手たちが近づいてきました。
そのあと、少ししてから5位以降の選手たちによる大きな集団が通過。時速20km以上で走る選手が目の前を通過していくのはたった一瞬ですが、応援の盛り上がりや選手たちの足音、息遣いに「箱根駅伝がはじまったんだ」と強く実感が湧いてきました。
電車を乗り継ぎ保土ヶ谷、茅ヶ崎……と移動
1区の選手たちを見届けるとすぐに電車へ乗って、2区・保土ヶ谷へ。電車のなかでは駅伝ファンたちがスマホの配信を見ながら刻々と変わるレース展開を語り合い、個々に応援している大学や選手の情報が飛び交っています。
保土ヶ谷駅に到着したのは8時50分すぎ。まだ2区へたすきが渡る前ですが、すでに駅前は多くの人で賑わっていました。
商店街が立ち並ぶ保土ヶ谷はビル群を走る1区の序盤とはまた違う雰囲気。商店から沿道に出てきて応援する地元の方や店の2階の窓を開けて待つ方の姿も見られ、箱根駅伝が正月の風物詩として根付いているのが垣間見える景色でした。
9時35分ごろ、次々と選手たちが通過。花の2区とも呼ばれるエース区間、誰もが知る選手たちがものすごいスピードで目の前を駆け抜けていきます。
なかでも印象に残ったのは青山学院大学の黒田朝日選手。黒田選手はその後先頭の駒澤大学との差を縮める形で3区へたすきを渡しますが、力強く前を追う走りに目を奪われるほどでした。
保土ヶ谷での観戦を終え、3区・茅ヶ崎へ。
茅ヶ崎駅からコースとなる海岸沿いまでは少し距離があるので小走りで沿道に向かいます。
現地に着いたのは10時40分ごろ。ギリギリの時間に着いたため、反対車線側の歩道から選手の通過を待ちます。
最初にやってきたのは青山学院大学の太田蒼生選手。駒澤大学の佐藤圭汰選手との鍔迫り合いに静かな興奮を覚えながら、2人の後ろ姿を目で追いました。
前回の箱根駅伝4区で鈴木芽吹選手が先頭に立ってから、出雲駅伝、全日本大学駅伝と各区間で守り続けてきた先頭の座。結果はご存知の通りですが、太田選手が驚異的なタイムでこの区間を駆け抜け、ついに首位が交代した状態で4区へとたすきが渡ります。
青山学院大学の選手たちは並々ならぬ想いをかけてこの箱根駅伝に挑んできたのだなという熱を太田選手の走りからひしひしと感じたのでした。
茅ヶ崎駅に戻るとホームでは各大学のマネージャーたちが電車を待つ姿もちらほらと見られました。沿道へ足を運ぶファンたちと同様、マネージャーたちも電車を乗り継ぎながら移動するのです。この日のためにチームをサポートして、今もこうして選手や運営管理車に乗る監督を沿道から支える各大学のマネージャーたち。中継車が映し出す選手の姿の外側を近い距離で見られるのも魅力の一つかもしれません。
小田原に到着するとまさかの雨
さて、本題に戻すと予定では5区を観にいきたいと考えていたのですが、箱根方面では雨が降りはじめたという情報を見てこの日は4区小田原を最後とすることに。
小田原へ到着すると茅ヶ崎を出たころ曇りだったのが信じられないほどしとしとと雨が降っています。
雨に濡れながら急いで沿道へ。走る選手たちの足元からは水しぶきがあがるほどでした。
その後、5区の選手たちを生で観られなかったのは少し残念でしたが、この日は帰路につきました。
復路は前日のリベンジで6区・大平台へ
明けて3日、箱根駅伝は箱根・芦ノ湖から東京・大手町へと向かう復路がスタート。
前日5区へ行けなかったリベンジの意味も込めて6区は大平台へ行くことにしました。小田原駅、箱根湯本と電車を乗り継いで登っていきます。
小田原駅よりも先を走る箱根登山鉄道も、この日は行先表示の片隅にランナーが描かれています。
大平台駅で降りて、テレビ中継でも有名な大平台のヘアピンカーブへ。テレビで観ていてもすごい角度の曲がり具合と傾斜なのが伝わってきますが、実際に足を運んでみると「こんなところを選手は駆け下っていくのか……」と驚きを隠せません。
8時、往路を2位駒澤大に2分38秒差をつけて終えた青山学院大がスタート。それから約35分後、先頭を快調に走る青山学院大・野村昭夢選手が坂の上を過ぎ去っていきます。
選手たちの背後に、壁のようにそり立つ下り坂。どの選手もあっという間にカーブの先へと消えていくのです。6区は平地以上のスピードが出るのは知っていましたが、改めて目の当たりにするとその凄さに思わず息を呑みます。
大磯で途中下車。注目選手たちの姿を見届ける
大平台を後にし、元々は横浜駅前に直行する予定でした。しかし、当日変更で7区に注目選手が集まったのを見てその姿を見届けたい……と思い立ち、電車のなかで乗換案内を調べます。
大磯なら上位の選手は見られなくともシード権争いをしているチームの選手たちは見られるかもしれないと判明。「ならば行くしかない」と途中下車することを決め、大磯駅から沿道までダッシュで向かいます。
着いたときには、ちょうど東洋大学の選手が通過していくタイミング。その後、通過していった東海大学のエース・石原翔太郎選手や予選会で日本人1位の好走を見せた東京農業大学のルーキー・前田和摩選手などの注目選手たちを見届けることができました。
大観衆のなかを堂々と走る青学・倉本選手に感動
7区の選手たちを見届けて再び東海道線で横浜を目指します。その間にも先頭を走る青山学院大学は差を広げ続け、総合優勝を確信させるレース展開。前日の1区から様々な景色を振り返り、こんなことが起こるのかと噛み締めるようにレースが映し出される配信を見つめました。
箱根駅伝も2区間を残すのみ。「もう少しで今年の箱根駅伝も終わってしまう」と、楽しかった夏休み最終日を迎えた小学生のような気持ちを抱えながら横浜駅を降りて沿道へ。
この頃すでに青山学院大学と駒澤大学の差は6分以上。選手の通過を今か今かと待ち望む大観衆の前に、青山学院大学の倉本選手が姿を現したときには込み上げる感動を覚えました。
この1年、チームとしては悔しい思いをし続けてきたはず。その悔しさを晴らすように、この舞台で最高の走りを見せる彼らに感動せずにはいられませんでした。
話は少し広がりますが、箱根駅伝を毎年見てしまうのはこの舞台に立つために努力してきた選手たちの物語に心動かされ、思わず感動する光景に出会うからなのかもしれません。それは、絞られた身体から寸分違わぬフォームで繰り出されるスピードかもしれない。はたまた、走る舞台として用意された風光明媚な景色かもしれない。そのなかに美しいと思わずにはいられない一瞬があるから、毎回食い入るように見つめてしまうのです。
最後の観戦ポイントは東京・日比谷へ
箱根駅伝、最後の観戦は10区も終盤の日比谷へ向かいました。銀座や日本橋へ向かう手前の20km地点を迎えるのがこの辺り。
数時間前まで箱根山中にいたとは信じられないほど、ビルと人の多さに圧倒されます。
到着してから数十分。優勝を目前に走る、青山学院大学のアンカー・宇田川選手。そして、追う駒澤大学の庭瀬選手が通過していきます。
前回55年ぶりの出場を果たし、今回はその前回を超える14位と着実に成長を見せた立教大学のアンカー・関口選手の姿も。個人的には、ここまでたすきが途切れず10人でつないできたことに感動を覚える瞬間でした。
また、今回の箱根駅伝で躍進した城西大学や復活の兆しを見せた東洋大学の姿を見られたのも印象に残ったポイントの一つ。
10区も23人の選手の姿を見届けて今回の箱根駅伝観戦は終わりました。
10区間中8区間で現地観戦をした今回。慌ただしいスケジュールで移動していくのは大変でしたが、選手たちの息遣いや監督や沿道からの声など、「レースを近くで見られるのはいいな……」と感じた2日間でした。ランナーだからこそ、その姿を目の当たりにするときれいなフォームやスピードに驚きを覚える瞬間もありました。
箱根駅伝が終わって数日。2024年ははじまったばかりですが、早くも来年の箱根駅伝に思いを馳せてしまう日々です。
(文・写真:木幡真人)
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