石川弘樹さんが提案“走る+歩く+泊まる”を合わせた自由な旅「トレイルトリップ」
Oct 17, 2016 / COLUMN
May 24, 2019 Updated
日々、マラソンやトレイルランニングを楽しんでいるランナーは、様々な装備・アイテムが揃っていることから、登山やキャンプといった“別の遊び”にも手を伸ばしやすいもの。
この登山・キャンプといった遊びは、なかなかお金がかかるもので、最初から全てを揃えようとすると、それなりの出費となってしまいます。しかし、シューズを始め、ウエアや防寒具などが既に揃っているランナーの場合は、何も持っていない方よりも、この遊びを始めるためのアドバンテージがあると言えるでしょう。
また、昨今のキャンプブームから、既にテント泊の経験があり、それなりのアイテムが揃っている場合は、ランニング、トレラン、登山、キャンプのどれにも当てはまらない“遊び”が体験できそうです。
それは、「トレイルトリップ」。
このトレイルトリップという言葉を、今回初めて知る方も多いでしょう。これは、トレイルランニングの第一人者である石川弘樹さんが提案する、「走る+歩く+泊まる」の三つを組み合わせた自由な山旅です。
バックパックに衣食住のすべてを背負って、時に走ったり、時に歩いたりと自由に自然を楽しむスタイルです。ランニングやトレラン、また、登山をしていると、どうしても早くゴールに到達したいという気持ちになります。しかし、それをグッとおさえ、まるで旅を楽しむかのように、マイペースで進むのです。このように旅の要素が強いことから、石川さんは、「トレイルトリップ」と呼んでいるようです。
山旅をすることで、トレランではわからないような山のスキルを習得できるのもメリット。山には多くのリスクが潜んでいますが、それらを察知する力や回避する力を得ることもできます。また、登山にランニングを加えることで、下山時にテンポよく走って降りることもできます。
このトレイルトリップは確かに様々な効果が得られそうですね。
書籍『トレイルトリップ ガイドブック』では、実際にトレイルトリップを堪能するときの必要なアイテムを紹介しています。ざっと見てみると、バックパック、シューズ、フットウェア、トップス、ボトムス、ミッドレイヤー、アウターレイヤー、レインウェア、サングラス、帽子、手袋、調理道具、食料、給水システム、テント、寝装、スリーピングマット、救急セット、ライト、時計、熊鈴、地図……。これらの用意ができたら、いざ、トレイルトリップへ。
同書ではおすすめのコースとして、大雪山、飯豊連峰、大峰山脈、箱根外輪山、奥秩父主脈、パタゴニア パイネ・サーキットなどがあげられています。その中の一つ、屋久島には筆者も訪れたことがあります。
石川さんがセレクトしたのは、南側にある尾之間港をスタートして、登山を開始。宮浦岳、永田岳、縄文杉を堪能して、白谷雲水峡を経て楠川港にゴールする「SEA TO SEA」のコースです。
当日は午前五時にスタート。海抜0mの尾之間港に集まるチーム・石川。聞こえるのは波の音だけ。木々が鬱蒼と生い茂る屋久島の自然。しかし、急ぐ必要はなく、時々走ったり、また、時々歩いたりと、自分たちのペースで進む。
屋久島の宮浦岳は九州最高峰の1936m。そこからの景色にはなかなか感動的なものがあります。そのまま1886mの永田岳に向かい、宿泊地である鹿之沢小屋へ。そこでトレイルトリップは終わりではなく、楽しい夕食の時の始まり。クッカーを使って、食事を楽しむのです。中には、お酒を持ち込む強者もいそうですね。
翌朝は3時過ぎにスタートし、永田岳山頂で朝日を見る。縄文杉を超えるとトロッコ道がはじまります。歩くと単調なこの道も、走り抜けると気分の良いもの。最後は、急登の太鼓岩へ。これまで登ってきた宮浦岳、永田岳が一望できるのが嬉しい。そして、楠川港でゴール。1日目は標準16時間50分のコースを、10時間30分(休憩時間を除いた行動時間)で、2日目は14時間のところを7時間1分でかけぬけました。
いかがでしたでしょうか。トレイルトリップは、ランニングの延長線上にある“遊び”。石川さんも楽しんでいるこの遊びを試してみませんか?