ASICS RUNNING CLUBコーチの池田美穂さんに聞く!「フルマラソンだけが楽しみではない」ランニングの話
Feb 25, 2017 / MOTIVATION
Apr 26, 2019 Updated
東京マラソンは今年11回目を迎え、新しいコースへと生まれ変わります。東京マラソンの発展は、日本におけるランニングブームの始まりを告げ、全国の都市型マラソンの模範となりました。
そのランニングブームとともに歩んで来たのがアシックスランニングクラブコーチの池田美穂さんです。池田さんは、株式会社アシックス入社後に、営業職を経て、現在のランニングコーチとしての活動を始めました。
そして池田さんは、全国津々浦々、老若男女への指導を経て、日本におけるランニングブームの中心的存在を担ってきました。
ランニングブームと皇居ランのはじまり
学生時代は陸上中長距離に取り組んでいた池田さん。埼玉大学を卒業後、株式会社アシックスへ入社し、まずは営業職を経験しました。その中で、仕事が終わってから会社の人と一緒に走ったり、レースに出たりと普通の市民ランナー生活を過ごしていました。そして入社してから2年目の冬のある日。数ヶ月後に第1回の東京マラソンを控えていた頃に突然、営業職からの異動を命じられて、マーケティング部に移ることとなり、アシックスの直営店“アシックスストア東京”の立ち上げに携わることになったのです。
それまでの一般的なアシックスのブランドイメージといえば “部活!” “本気ならアシックス!” といった、どちらかというと堅いイメージでした。池田さんを含むアシックスストア東京立ち上げのメンバーたちはそのイメージを払拭すべく、主に銀座周辺で働く女性が、仕事帰りにヒールから履きかえてお洒落にランニングを楽しむという“銀座ランナー”のコンセプトを考えました。そして、店舗がオープンしてから池田さんは直接店舗に立って、ランニングに必要なモノの選び方や、それぞれのランナーの足にあうシューズの提案などを積極的に行いました。
アシックスストア東京での勤務とともに、自らのランニングライフもより活発になり「この2007年と2008年は人生で一番働きました。」と自信を持って池田さんは話します。その甲斐もあって、ランニングブームの波とともに市民ランナーとしての自分のタイムもどんどん更新していったそうです。店舗でも、ランニングの現場でもランナーとの交流を深めていった池田さん。
「走る事はストレス解消でもあり、自己表現する方法の一つです。楽しく走っている自分が好きで、その楽しさを人に伝える事が大切だと学びました。」
彼女にとっての大きな出来事はそういった気付きだけではありませんでした。アシックスストア東京の誕生とともに、その店舗内に、今で言うランニングステーションのスペース – ロッカーやシャワーを初めて導入したのです。それまで皇居の周りを走るランナーは、半蔵門や神保町周辺の銭湯から走り出して皇居の周りを走って銭湯に戻ってくる。という現在も継承される古き良き日本の銭湯ランというクラシックスタイルでした。
そこで、アシックスがランナーに提案したのが、この“ランステ”スタイルです。アシックスストア東京のオープンを皮切りにランニングステーションは皇居周辺に増え、やがて東京の都心で走る人たちによる、皇居ランというムーブメントに繋がります。現代のランニングブームの支えになったのは、東京マラソンに始まる都市型マラソンの発展による広がり、ランニングチームや大会、イベントの増加が挙げられます。それに加えて、皇居ランのムーブメントもその要因の一つでしょう。
池田さんは、その頃会社の上司である島田佳久さんに見出され、アシックスランニングクラブのコーチとしての活動を始めました。最初の頃は「元々自分から手を挙げて、コーチになりたいです!という訳ではなかったんです。」と話す池田さんですが、「周りの方々の支えによって段々と私自身もその気になってきて、コーチという重要な役割を果たす事が出来るようになっていきました。」と日頃の活動とともに自身も徐々にレベルアップしていったと当時を振り返ります。
フルマラソンを目指すことだけが走る事の楽しさではない
東京マラソンのオフィシャルパートナーであるアシックスや、アシックスランニングクラブコーチの池田さんは、日頃のイベントだけでなく、東京マラソンとともにランニング文化を拡張させてきました。今日も、一から走り始めたランナーが、いつの日かフルマラソンの達成感を味わいたく42.195kmの道のりに挑戦することを夢見ているのかもしれません。そんな中で「フルマラソンを目指すことだけが走る事の楽しみではないんです。」と池田さんは話します。
日本におけるランニングブームは、2012年からの日本のランニング人口の微減に見られるように勢いを失いつつあります。しかし、東京マラソンが始まった2007年時点での日本全国の大会の数と比べると現在では約35%ほど大会が増えています。こういった供給過多の状況の中で、ランニング人口を増やす為には、競技志向にとらわれない“走る楽しさ”の普及活動が必要とされています。
池田さんは「たくさんのランナーの方々と一緒に“感動の瞬間”を経験することや、ランニングを続ける事によって得られるメリットを感じてもらうことが大切です。」と話します。イベントや店舗での接客を通じて、人に感謝されるという事は素晴らしく、こういった活動にはとても意味があるという事を肌で感じることで、自身の活動へのモチベーションへと結びつけてきたそうです。
さらに「ランニングを継続することによって気持ちもカラダもより健康的になって、ライフスタイルがより豊かになっていきます。私もランニングがキッカケで、むくみが取れたり、スヤスヤと寝れるようになりました。」と自身の経験を話します。フルマラソンは過酷なイメージですが、楽しく運動する事の魅力を念頭に置き、自らの体験とともにそれを伝え、日頃からランニングの普及活動に励んでいるそうです。
「もう一度、過去の自分の自己記録に挑戦したいと思うこともあるのですが、自分が楽しくランニングをしているという体験を伝える事で、一人でも多くの人に走ることの魅力を知っていただけたらと思っています。」
最近は、世の中の健康志向の高まりもあって、企業が社内で従業員の健康促進のために何か良い方法は無いものかと、より一層考えるようになっています。池田さんは、アシックスランニングクラブの通常のイベントでの指導の他に、最近は企業に勤める従業員を対象にした、大人数に対しての運動指導の機会も増えてきているそうです。
その中で池田さんは、ランニング未経験者のランニングに対するハードルの高さを感じるそうですが「こういった機会でランニングに取り組むようになるキッカケを作ることが大切です。通常のイベントとは違って、走る事に興味をまだ持っていない人をその気にさせる為に必要なことを、私自身もこういった機会で学ばせて戴いています。」と話します。そのほか、アシックスでは過去の東京マラソンEXPOで開催された“ASICS KIDSかけっこ教室”や、日本各地の大会でのキッズスポーツチャレンジの企画を通じて、キッズ層への指導にも力を入れています。
「私自身も、新しい事にもどんどんチャレンジしていきたいと思います。かけっこ教室が子どもたちのスポーツでの将来の成功を見出すキッカケになったり、また、走る事で健康な人が一人でも増えて、将来の日本の健康寿命をどんどん伸ばせていけたら嬉しいですね。」
現在は市民ランナーだけでなく、タレントへのランニング指導も板についてきた池田さん。彼女の今後の活躍からますます目が離せなくなりそうです。
プロフィール
池田 美穂 (いけだ みほ) 1981年8月2日生まれ。アシックスランニングクラブコーチ。健康運動指導士。埼玉大学在学時に中長距離を専門に取り組む。大学卒業後、株式会社アシックスに入社。営業職を経て、現在はアシックスランニングクラブのコーチとして主に市民ランナーの指導を担当。東京マラソン、ニューヨークシティマラソン、ホノルルマラソンや、横浜国際女子マラソンなどの国際レースも経験。日本全国で市民ランナーの指導を行いつつも、海外マラソンツアーのコーチや、タレント・モデルなどのパーソナル指導も担当。フルマラソンのベストは、2012年名古屋ウィメンズマラソンでの3時間2分43秒。著書に「RUN女子入門〜自分を変えるランニング」「ランニング手帳2012」(ともにディスカヴァー・トゥエンティーワン) 池田美穂オフィシャルブログ / Twitter / Instagram |