【ランニングのケガ予防】「ランナー膝」の原因とは?ランニングコーチが解説&エクササイズをご紹介
Nov 04, 2023 / HOW TO
Nov 13, 2023 Updated
いよいよ秋冬のマラソンシーズンに突入しました。レースに向けて練習を積んでいる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。中には練習し過ぎで膝を痛めて、
安全に楽しく走るために、ケガの予防法を知っておくことは大切な要素となります。そこで、こちらの記事では初心者ランナーからシリアスランナーまで多くのランナーをサポートしているプロランニングコーチ・黒川遼さんに膝の悩みの解消法やケガ防止について、スポーツMCのヤッホーカレンさんがお話を聞いて実践していきます。
膝の痛みは全ランナーに共通の悩み
多くのランナーを見てきた黒川さんによると膝の痛みに関する悩みは、走り始めたばかりの方から熟練度の高いシリアスランナーまで多くの方が悩むケガだといいます。
まず、膝周辺の痛みがある箇所ごとにどのようなケガが隠れているのか聞きました。痛みが発生する場所ごとに、原因となる走り方のクセや筋肉の緊張があるといいます。それはどのようなものなのでしょうか。
膝の痛みと原因について
カレン:人によって膝のどの部分が痛いか違ってきますよね。私が最初に痛めたのは膝の外側なんです。はじめに、膝の外側の痛みについて教えていただけますか?
黒川:おそらく『腸脛靱帯炎』ではないかと思います。腸脛靱帯炎は膝の外側が痛くなります。お尻や骨盤の横にある大腿筋膜張筋の張りが原因になっていることが多いですが、太ももの横の外側広筋の張りが原因になっている場合もあります。靭帯が引っ張られて摩擦が起こるので痛くなります。
カレン:たくさん走ったりするとなりやすいのでしょうか。
黒川:ゆっくり走ったり、長い距離を走ったりすると起こりやすいですね。
カレン:マラソン前は要注意ですね。
黒川:そうですね。膝が内側に入りやすい方も要注意ですね。
カレン:膝の内側の痛みはどうでしょうか。
黒川:内側の場合も外側と原因は同じだったりしますが、張ってくる箇所が違います。内側のハムストリングス、内転筋の一部の薄筋、骨盤の前の骨から捻って膝の内側までいく縫工筋のどこかが張っていることが多いです。そこが引っ張られて『鵞足炎』を起こしていることがあります。
カレン:膝の上下はどうでしょうか。
黒川:膝の上や下が痛くなるのは『膝蓋靭帯炎』が考えられます。上下の痛みも原因はほぼ同じですが、跳ねたり、足を地面に叩きつけるように走るランナーは痛めやすくなります。
カレン:毎回走った後に予防やストレッチをすると良いでしょうか。
黒川:いっぱい頑張って走った後は、筋肉が縮んだりしているのでケアが大切になってきます。ただ、ケアをしても治らない場合は骨と骨の間にあるクッションの半月板が損傷している場合もありますので、病院に行くことをおすすめします。
カレン:それでは、ケガ予防の実践についてこれからお伝えしていきます。いろいろなケガが多いと思いますが、やはり最も多いのは『ランナー膝』と言われるアレでしょうか。
黒川:そうですね。ランナー膝とも言われますが、やはり『腸脛靭帯炎』が1番多いです!
痛みの箇所 | 考えられる障害名 | 原因 |
外側 | 腸脛靱帯炎(ランナー膝) | ・大腿筋膜張筋 ・大臀筋 ・外側広筋 etc. |
内側 | 鵞足炎 | ・薄筋 ・半腱様筋 ・縫工筋 |
半月板損傷 | ・半月板の摩耗 | |
上下側 | 膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝) | ・大腿直筋 |
腸脛靭帯炎かどうかを見極めるテスト
黒川さんに腸脛靭帯のテストを教えていただきました。
1. 座って右足を伸ばす
2.太ももの横をさすると尖っているところがあるので、そこから指を体幹のほうに1〜2cmずらして、その部分を両手で圧迫する
膝を上下した時点で膝の外側が痛い場合はケガの予兆の可能性がありますので、この後のエクササイズをしっかり行って予防しましょう。
エクササイズ①筋肉の緊張緩和とストレッチ
凝り固まった筋肉をゆるめて、伸びやすい状態をつくる流れが大切です。その後にストレッチしましょう。
セルフでのゆるめ方
1.骨盤前の骨と太もも横の骨の間にある筋肉を圧迫したり、軽くさする
2.大臀筋を緩める。仙骨から骨盤のふちを4本の指でさすって、ゴリゴリしているところを触ると動きやすくなる。手のひらでお尻全体を緩めるのも効果的
3.太ももの横の外側広筋を緩める。両方の手で圧迫しながら膝の近くから骨盤の近くまで大きく動かすと少し緩みやすくなる
アイテムを使ったゆるめ方
ご自身の手でうまくできない場合はボールを使うとより効果を感じやすいです。
1.骨盤の横(ポケットの辺り)にボールを当てる
2. 横に寝て、痛みと心地いい感覚が両方あるポイントを探す。上半身や骨盤は少し前に倒すイメージで行う
3.お尻にも当てて、ゆっくりと動かす
黒川:マッサージガンは振動が適度で痛みを引き起こしづらいため、緊張することなくエクササイズができておすすめ。マッサージガンをお持ちの方は、心地よい強さで脚に当てて使ってみてくださいね。
大臀筋のストレッチ
1.四つん這いになって左脚を前へ出して、脛を横に倒す
2.膝・かかと・骨盤をなるべく平行にする(股関節や膝が固くてうまく体勢を取れない場合は無理をしなくてもOK)
3.かかとを股関節に近づけ、骨盤は下に向ける
4.腕立て伏せをするように胸を落とし、起き上がる
5.身体を膝やかかとを置いている方向(斜め前)に倒す
6.慣れてきたら膝やかかとを大きく超えて倒す
黒川:ストレッチと筋トレを掛け合わせたエクササイズですので、よりストレッチ感が強くなったりとか、お尻を使えるというところにも効いてきます。左右差などがある場合は特に動きが悪い方を行うと良いでしょう。
大腿筋膜張筋のストレッチ
次は、左側の骨盤にストレッチをかけていきます。
1.立って右足を左足とクロスさせるように前へ出し、左手を上に伸ばす
2.右手は骨盤において、右側に倒れる。指先は遠くに持っていく
3.少し前方へ覆い被さると腰のストレッチにもつながる
黒川:筋膜ライン的に膝の外側が痛い方は、腰も張っていることが多いです。骨盤の横と腰に気持ち良くストレッチをかけられます。
エクササイズ②膝のお皿の動きを促進させる
次は腸脛靭帯炎だけでなく、膝全般の動きに関係するストレッチを行なっていきます。
1.足を伸ばし、膝のお皿をつかむ
2.膝のお皿を上下、左右、斜めに動かしたり、内側、外側に捻る
黒川:ケガをしやすい方はこの皿周りがあまり動きません。膝の動きをスムーズにすると大腿四頭筋などのブレーキもかかりにくくなるので、おすすめです。
エクササイズ③股関節の可動改善(内外旋・内外転)
着地や蹴り出しに必要な内側への捻りや外側に捻るエクササイズを行っていきます。膝は股関節の動きや足元の動きが関与しているので、改善することで再発予防に役立つと黒川さんは言います。
1.片方の足は固定しながら、もう片方の足をパターンと内側や外側に倒す
2.男性は内側がきつかったり、女性は外側がきつかったりするので、少し動かしづらい方を頑張る
3.身体が後ろにいきやすいので身体を少し前の方に持っていくと膝と胸の位置が近づく。
4.慣れてきたら両方の足を同じ方向へ倒す練習をして、より連動させていく
5.同じ方向へ両足を倒した状態から、膝で立ち上がる。立ち上がった時にしっかりとお尻に刺激が入る感覚が大切
黒川:できない場合は壁を使ったり、人に補助をしてもらったりすると行いやすいです。上級者は胸に手を当てて行うとより効果を得られます。
エクササイズ④股関節の可動改善(屈曲・伸展)
ランニングに直結する前後の動きを良くしていきます。
1.右足を踏み出して、ランジの姿勢になる
2.おへそを引き込みながら、骨盤をやや後傾させる。そうすると股関節の付け根にストレッチがかかる。骨盤の上に身体が乗ると効果的
3.上に向かって両手を伸ばす。手首が掴まれているようなイメージで上半身を引き上げる
4.上半身を右側に倒す。左側の股間節の付け根や腰が伸びている感覚があればOK
5.右膝を伸ばし、股関節を折りたたむイメージでお尻を後ろに引く。ハムストリングスがストレッチされる
6.もう一度右膝を曲げて、左足を持ち、かかととお尻を近づける。左の太もも前側がストレッチされる
黒川:バランスがうまく取れないときは壁を利用してみるのがおすすめです。
痛いときは医療機関や治療院を受診しよう
黒川さんに“ランナー膝”とも言われる腸脛靭帯炎の予防&改善エクササイズを教えていただいた今回。マラソンシーズンで走る距離も長くなるこれからの時期、ぜひランナーの皆さんは取り入れてくださいね。
カレンさんも実践を通して「膝のケガは注意したいところだったので、日々のストレッチに取り入れたい」と振り返りました。黒川さんは最後に注意点として「普段からストレッチを行い予防することが大切ですが、痛みを感じたときは手遅れのケースが多いので、治療院や医療機関で診てもらうことが大切です」とコメント。
走りやすい気候が続くこれからのシーズン。ストレッチを取り入れながら、安全に楽しくランニングを続けていきましょう。
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