二人揃ってスパルタスロン出場!北海道に住むウルトラ夫婦へインタビュー
Aug 28, 2016 / MOTIVATION
Apr 26, 2019 Updated
ランニングブームの流れで、ウルトラマラソンに挑戦するランナーが増えているようです。大会数も増え、サロマ湖ウルトラマラソンをはじめとした人気大会は「クリック合戦」となることも。「いつかはウルトラマラソンに挑戦したい」そう考えている方は、きっと多いことでしょう。
フルマラソン完走後、100kmマラソンを次なる目標に据えるランナーはたくさんいます。私も、これまで数多くのウルトラマラソンを走ってきました。しかし、世の中には、100kmを超える超長距離レースが存在します。いったい、どんなランナーが出場しているのでしょうか?
今回は、なんと夫婦一緒にそれら過酷なレースにチャレンジしている、札幌在住の計良光昭・千里夫妻にお話を伺いました。なんとお二人、以前レースレポートでご紹介した『沖縄本島1周サバイバルラン2015(400km)』を、夫婦揃って完走したというスーパーランナー。ご主人は産婦人科医として多忙な日々を送られており、練習への取り組みも参考になりそうです。
走り始め、どんどん過酷なレースへとのめり込んでいく
–そもそも、お二人はなぜランニングを始めたんですか?
光昭さん「ミレニアムをきっかけに…というワケではないのですが、マラソンを始めたのは2000年のこと。元々は趣味でゴルフをやっていたのですが、ドライバーイップスになったんです。次第にゴルフをやらなくなったので、運動不足の解消として代わりランニングを始めました。」
千里さん「私は2004年秋頃からウォーキングを始めて、2005年の『ソウル市民マラソン』のハーフが初レース。でも実は、韓流ブームで韓国に行きたかっただけなんですよ(笑)。」
–最初は、光昭さんだけが走られていたんですね。しかし韓流ブームでマラソン挑戦って…ある意味すごいと思います。その後、どのようなレースに出場されてきたんですか?
光昭さん「走り始めた2000年の秋に、旭川のフルマラソンに参加したのが初めてのフルマラソン。4時間34分47秒でなんとかゴールしましたが、35km過ぎから足が動かなくなり、フラフラだったのを覚えています。当時は北海道マラソンの制限時間が4時間で、この大会への出場を目標に練習していたかな。」
千里さん「転勤や子育て、両親の看取りなどあって、私の場合、ハーフを走ってからはしばらく空白期間でした。初めてフルマラソンを走ったのが、2010年ですね。」
光昭さん「フルマラソンを完走した頃、ウルトラマラソンというレースがあることを知ったんです。これは走ってみたいな…と思い練習して、2004年に『サロマ湖100kmウルトラマラソン』と念願の『北海道マラソン』に初出場。サロマは12時間32分56秒、北海道マラソンは3時間58分49秒と、どちらもギリギリのゴールでした。その後は“サロマンブルー”を目標にしていたのですが、ランニング雑誌を読んでいるとき、100kmよりさらに長い『スパルタスロン』の記事を見つけてしまったんです。もう、これしかないと思いましたね。」
–偶然って、恐ろしいですね…。それが、お二人が過酷なレースにのめり込んでいくキッカケになったのでしょうか?
光昭さん「今思えばそうですね。当時スパルタスロンの参加資格だった100km・10時間30分切りを目指して、2008年の『宮古島100キロウルトラ遠足』に参加。本当にギリギリでしたが10時間29分50秒で完走でき、同年のスパルタスロンに参加を決めたんです。初めてのヨーロッパ、しかも246kmを夜通し走るレースということで、事前の練習と下調べは入念に行いました。そして初参加ながら、なんとか34時間49分で完走。このときのゴールが、今まで走ったレースの中で一番感動した瞬間です。」
千里さん「私はフルマラソン出場が2010年ですから、ウルトラマラソンなんてまだ先のこと。でも実は、2015年に私もスパルタスロンに出場しているんですよ。私の場合は159.5kmでリタイアしてしまい、残念ながら完走は叶いませんでしたけどね。」
光昭さん「他にもっと面白いスポーツがあれば別ですが、今のところは走り続けられる限り走っていたいと思っています。目標というものは特にありませんが、これからも、あちこちの面白そうなレースに参加してみたいですね。」
–お二人揃ってスパルタスロン出場…まさにウルトラ夫婦ですね。その他に、これまでどんなレースに出場されてきたんでしょうか?
千里さん「沖縄本島1周サバイバルラン400kmに佐渡一周208km、みちのく津軽ジャーニーラン200kmなど。トレイルはSTYの88kmが最長です。同じ大会には何度も参加しない(したくない)って思っているんですけど、沖縄本島1周だけは今年も再びエントリーしてしまいました。厳しさと楽しさに惹かれているんですかね。」
光昭さん「これまで完走した中で一番長いレースは、2015年に走った沖縄本島1周サバイバルランの385kmです。次は同じ沖縄本島1周シリーズのクレージーランで、312kmくらいだったでしょうか。その次がスパルタスロン(246km)です。」
産婦人科医&専業主婦のランニングライフ
–沖縄本島1周サバイバルランは、出場者42名に対して完走者10名だった過酷なレースですよね。そんなレースを夫婦一緒に完走してしまうとは…いったい、いつもどのように練習しているんですか?
光昭さん「最近はフルマラソンを含めて、短いレースは苦しくてあまり出場しなくなりました。のんびり走るジャーニーランやウルトラトレイルが多くなっています。そのため、普段の練習もゆっくり長く走るか、山登りが多いですね。練習もレースも、夫婦で一緒に走ることが多くなっています。」
–練習も一緒にできるのは素敵ですね。日々お忙しい中、ランニングに取り組むうえで工夫されていることなどありますか?
千里さん「走ることで日常生活を崩さないように、買い物や食事、お風呂などの準備は万端にして出かけるようにしています。そうすれば、何も気にせず走ることを満喫できますから。」
光昭さん「私の仕事は産婦人科医で、月に5〜6回は当直があります。当直明けの午後からは休みのため練習に充てていますが、ほとんど眠れていない場合もあり、その際は“眠らずに走る練習に”なっているかな?と思っています。また、北海道に住んでいると冬の練習について良く聞かれるのですが、皆さん、普通に外を走っていますよ。ただし、シューズは冬用のシューズ。ウェアも冬用のゴアテックスなどを着ています。」
千里さん「この年齢ですし、走ることだってもはや健康的とは言い切れませんよね。仕事だって、見ていてとても大変だなと思っています。一緒に走りながらも、この頃は『故障しませんように』『怪我しませんように』と自分と夫を案じながらの日々ですよ。私だってスパルタスロンとか色んなレースに出ていますけど、基本的にはただの“エプロンママ”ですから。」
光昭さん「最近は段々と練習回数が減ってきて、週に2回くらいしか走らなくなってきました。お陰で、お腹周りは大変なことになっています…。」
–いつも走っているとき、何を考えていますか?
光昭さん「長い距離を走るときに考えるのは、まずこのペースで完走できるかということでしょうか。だいたい行けるところまで来たら、後はお楽しみのアルコールを飲みながら走ることが多くなってきました。
以前はレース前2週間から禁酒…なんてやっていたんですけどね。今では、むしろレース中の楽しみにお酒を飲むようになっちゃいました。でも、そうやって自分なりの楽しみを見つけることが、一番良いのではないでしょうか。」
千里さん「この先にどんな街があって、どんな景色を見られるのか。そう考えるだけでワクワクしてきます。長距離レースだと時にハプニングも起こりますが、だいたい夫が一緒なので前に進めます。そしてハプニングがあるからこそ、それを乗り越えた時の感動もひとしおなんですよね。」
–ランニングでもご夫婦で支え合っているんですね。ちなみに、それだけ一緒に走っていて、衝突することなどないんですか?
千里さん「今まで、走りながらの衝突はほぼないですよ。お互い適当同士だから、それが良いのかな。」
ランニングを通じて共通の友ができる喜び
–お二人はウルトラマラソンのどこに魅力を感じていますか?
光昭さん「フルマラソンと違い、長い距離のレースは走ることと観光が同時にできる点が魅力でしょうか。ただし、夜中に走っても何も見えませんけどね。たまに、大会でせっかくの観光スポットを夜中に通過する…なんていうことがあるんですよ。あと、過酷なレースほど参加人数が少なくアットホームな感じで、いろんな方々と知り合えるのも良いですね。仕事と全く関係のないさまざまな年齢の方と、レース前後に一緒に飲むのは楽しいですよ。レースの疲れも吹っ飛んじゃいますね。」
千里さん「人との出会いは、私も本当にそう感じます。特に目標もなく、夫と共に美しい景色を観て、美味しいものを食べて。さらに共通の友ができる“ランニング”という旅は最高ですね。」
光昭さん「そういう方々と、また別のレースで再会して楽しく飲める。最近では、これがマラソンを続ける目的の一つになっているかもしれませんね。特に夫婦で一緒に走るようになってからは、レースに出場するというより“遊びに行く”という感覚になって、より楽しくなりました。」
ランナーへ向けたメッセージ
–ランニングを通じて新しい縁ができるって、素晴らしいですね。ご夫婦一緒ならその喜びも共有できて、もっと走ることが楽しくなりそうです。そんなお二人から、最後にランナーの皆さんへメッセージを一言お願いします!
光昭さん「長いレースに参加すると、月間走行距離が500kmを超えることもあります。でも、走らない月は100km程度なんていうときもあるんです。よく、いっぱい走っているように思われるんですけどね。ただし最近は、面倒になって距離を計測すらしなくなっちゃいました。この緩さが、故障せずに走り続けられるコツかもしれません。特に若い人は頑張り過ぎちゃうことが多いので、しっかりサボって下さいね。」
千里さん「この頃のブームで、ランニングに興味を持たれている方が増えてきていますね。同世代で走っている奥様方には、『きっとゴールできますよ!』とお伝えしたいです。でも、『頑張り過ぎないで下さいね』とも。おばさんが頑張り過ぎると、ボロボロで悲しいですから…私の経験です。
ちなみに北海道を訪れたときは、ぜひ小樽朝里から札幌定山渓の峠越えコースを走ってみてください。私のオススメコースです。︎残雪のGW頃と、紅葉の10月上旬が最高ですよ。」
–“頑張り過ぎない”って、確かに大切なことかもしれませんね。大会だけでなく、練習でもものすごい形相では走っている方って多いですから…。貴重なお話を、ありがとうございました!
今年で結婚30周年、「真珠婚」を迎えられたというお二人。
お話を伺っていても、とても仲の良いことが伝わってきました。
人との出会いや、レース前後のお酒など、走ることそのものはもちろん、それ以外に楽しみを見出しているからこそ、長い距離でも笑顔で走り抜けられるのかもしれません。