ランニングシューズ作りの裏側に触れる。池井戸潤 著『陸王』を読む
Nov 03, 2016 / COLUMN
Nov 08, 2018 Updated
こんにちは、“走る”フリーライターの三河です。連載『三河の本棚』も、早いもので10回目となりました。そんな記念すべき今回ご紹介するのは、走りを支える側の挑戦を綴った一冊『陸王』です。
最近は各メーカーが技術力を駆使し、実にさまざまなランニングシューズを展開しています。スポーツ用品店に足を運び、その品揃えに
「どれが良いのだろう」
と頭を悩ませた経験は少なくないはず。お気に入りの一足に巡り合うまで、履き比べするという声もよく聞きます。では“足袋”と聞いて、そこからランニングを連想できる方はどれだけいるでしょうか?
老舗足袋業者が創り出すランニングシューズ
足袋を履く機会といえば、今では浴衣を着る夏シーズンくらいかもしれません。そのような時代の流れもあり、経営が苦しくなってきた足袋業者。資金繰りに苦しむなか、現状を打開するための策として打ち出したのが、ランニングシューズでした。
足袋作りの技術をランニングシューズに活かす。それは、簡単なことではありません。納得できる一足が完成するまでには、さまざまな苦難と苦悩の連続。さまざまな人々の思いが交錯する中、諦めず取り組むチームの力が、やがて形となります。
しかしシューズが出来ても足袋業者。スポーツ分野で実績はなく、業界への展開もまた一筋縄ではいきません。果たして、老舗足袋業者の挑戦は実を結ぶのか!?その結末は、ご自身の目でご覧ください。たとえランナーでなくとも引き込まれ、あっという間に読み終えてしまうことでしょう。走ること以外にも、仕事にかける情熱や人と人との繋がりなど、感じ取れることが山ほど。“読み物”として十分に威力的な一冊といえます。
実はモデルとなっているシューズがある!?
ちなみに本著では架空の足袋業者の話として書かれていますが、実際に開発・販売されている『無敵』というシューズがモデルになっていると言われています。
確かに、見た目は足袋のようですね。指先は2つに分かれており、ソールも薄そうです。一見すると「これで走れるの?」と疑問に感じてしまいますが、お気に入りのヘビーユーザーも多い様子。気になる方は本著と合わせ、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。