シューズアドバイザーが驚いたナイキのフライシリーズ3代目『ズームフライ3』
Aug 22, 2019 / SHOES
Dec 20, 2020 Updated
みなさん、こんにちは。シューズアドバイザー藤原です。
今回は、ナイキのズームフライシリーズ3代目『ズームフライ3』をご紹介しましょう!
マイナーチェンジだったので「さすがにパンチが弱いのでは?」とわたくし藤原、かなり油断していましたが、これまた “ナイキやるな” という感じのシューズに仕上がっています。
派手さはないが、使いやすくなったモデル
ズームフライシリーズが発売した時、「固定観念を持ってはいけない」 と大迫傑選手が言っていましたが、まさに今回のシューズのことですね。あのBreaking2以来、市場の話題もシェアも独占してきたナイキ。実業団選手から大学生まで、着用する選手が劇的に増えました 。 “レーシングシューズならアシックス、ミズノ” のような固定観念はなくなってしまいましたね。
すべてのはじまりは、ズームフライとヴェイパーフライ4%のこの2つのモデルの登場でした。
しかし、当時のズームフライは、廉価版というイメージで、ヴェイパーフライ4%とは似ても似つかないシューズでした。ズームフライの16,200円とヴェイパーフライ4%の25,920円という価格差はもちろん、決定的な違いとして、ズームフライはミッドソールに “カーボンプレート” が使われていなかったこと。
カーボンプレートこそが速く走れるヒミツなのではないかと、誰もが “ヴェイパーフライ4%” を欲しがったわけです。25,920円という高価なシューズが秒殺で完売してしまうという異常な状態が続きました。ネットオークションでは、倍以上の金額で取引されていましたね。
前回のズームフライ フライニットでは、カーボンプレートが搭載されて、ミッドソール素材はルナロンからクッション弾性の耐久性の高いTPUソール “リアクト” に変更されました。それでいて、据え置き感がある17,280円というのは、まさにサプライズ!
さらには、ヴェイパーフライ4%と同じソックライクフィットの “フライニットアッパー” が採用されるという豪華なアップデートになったわけです。ビジュアルでの差が少なくなり、「これを買わない手はない」とズームフライフライニットのセールスが良かったのも当然ですね。わたしも正直、レース兼トレーニング(テンポアップ)なら、この2代目がベストだと思っていました。
「3代目において、もうサプライズはないだろう」と思うのも無理はありません。素材や構造には大きなサプライズはありませんが、今回の ズームフライ3 は、 “クセのなさ” という点ではピカイチです。ズームフライやズームフライフライニットを買ったけど、使いこなせなかったというランナーの声に応えたシューズになっていると思います。
接地感が感じられるソール構造に変化
これまでと最も違うのは “接地感” です。前モデル(10mm)より2mm下がった8mmドロップ(※編集部調べ)は、それでもマラソンペースで走るレーシングでは、他社を含めてもオーソドックスなもの。たった2mm、されど2mm。傾斜を少なくすることで、つま先が急に落ちるような、あの強い “カクン” という感じが弱まり、接地からの重心移動がスムーズに。シューズ全体のクセが少なくなりました。
前回までのつま先の跳ね上げ(トゥースプリング)は、使いこなせられれば、推進力が増す構造なのですが、クセが強すぎました。好き嫌いがあるのは必然かもしれません。ややフラットに、自分のタイミングで蹴り出せるようになって、多くの人にとって使いやすく、扱いやすくなったことでしょう。
また、前回と同様のリアクトのミッドソールは、柔らかくレスポンスもあるクッションで、蹴り出しの快適さをサポートしている印象です。接地した瞬間、ソフトなのに、確かな安定感があり、好きな感触ですね。前回よりもスタックハイトが実際数ミリ厚くなっていることもあるかもしれません。
アウトソールは、キプチョゲらが履いているエリートと同じパターンが採用されました。接地感を最後にしっかりとしたグリップでまとめる感じは、このアウトソールによるものが大きいでしょうね。
前回までのモデルでは、アウトソールのグリップ感とか耐久性への配慮は欠けていたと言えるでしょう。今回のアウトソール意匠は、非常に強いグリップを感じます。これは、好感です。
フィット感へのアプローチも変更
フィット感にもクセがなくなりましたね。フライニットアッパーは、どうしてもクセがあります。ややタイトに仕上げないと伸びやすく、足をしっかりホールドできないことがあるからです。ソール幅面もそれほどないシューズで、細身でしたね。
今回は、 “Vaporweave(ヴェイパーウィーブ)” という技術が使われています。フライニットアッパーの弱点、「雨を吸って濡れると重くなる」という選手からのクレームを改善しています。しかし、フライニットの良さ、足あたりの良さが出ない素材ですので、今回は2層構造のソックライク式になっています。
個人的には、前回のフライニットアッパーと比べて、全体的に余裕を感じました。幅面もしっかり足が乗り、おさまりがいいですね。前足部はややスぺ―スがあり、サイズは少し大きめです。私はワンサイズダウンの24.5cmにしました。履いた瞬間、つま先のあたりが詰まった感じになりますが、シュータン(シューズのベロ)を引っ張ってみてください。そうすると、まさにソックスなので、中の収縮性のあるソック生地がおさまって、違和感がなくなりました。
コンクルージョン=耐久性・重量をどう考えるかで使い方は変わる
ナイキは、ズームフライシリーズに『しっかりとした耐久性』をイメージしていると思います。逆に、ヴェイパーフライシリーズには『耐久性より軽さ』を追求していると言えます。
<活用例>
・ジョグやロング走:ペガサス36、ボメロ14
・ペースラン:ズームフライ3
・レース:ヴェイパーフライネクスト% というのは典型的なイメージでしょう。
もちろん、
・ジョグやロング走:ペガサス36、ボメロ14
・ペースランやレース:ズームフライ3
というパターンもいいでしょう。
逆に
・すべてのトレーニング:ズームフライ3
という使い方をトレーニングの頻度が少ない(週1や月1)方ならできるのも、汎用性の高いズームフライシリーズの大きな特徴でしょう。ヴェイパーシリーズをこの使用法で使うのは、耐久面から限界があります。
わたしはハーフマラソンのレースで履いてみました。重さより、クッションやレスポンスの良さがアドバンテージにしか感じられませんでした。ただ、TPUソールの重さが気になるのは正直なところです。
マラソンでサブ3など、タイムを意識しているランナーなら『ヴェイパーフライネクスト%』をレース用シューズとして選ぶのもひとつの選択肢でしょう。ZoomXフォームは合成樹脂の中でもEVAよりも軽い、ぺバックスを使用してますので、とても軽量ですからね。
私は勝負レースでネクスト%を使うでしょう。では、ズームフライ3はトレーニング用か……ということでもなく、今後もハーフなどいくつかのレースで試してみるつもりです。今回のレースで、走ってる間は重さが気になりませんでした。持った重量や履いた瞬間の重さよりも、実質的に走っていてどうかですからね。
8mmドロップのズームフライ、そしてネクスト%、どちらもクセが少ない良いシューズになりました。メリットとデメリットを自身の使用用途でどうバランスをとるか、それにつきます。今回はレディースモデル、レディースカラーもできて、サイズ展開は本格化しました。是非、このズームフライ3を多くのランナーに試してもらいたいですね。
ズームフライ3
・価格(定価):17,280円(税込)
・ドロップ:8mm(前足部28mm 後足部36mm)※編集部調べ
・アッパー:ヴェイパーウィーブアッパー+ソックライク構造によりフィット感など向上
・ミッドソール:ナイキリアクト+フルレングスカーボンファイバープレート搭載
・アウトソール:ヴェイパーフライネクスト%と同じ素材、意匠が前足部、後足部必要な部位に配置
こちらの動画でも、シューズアドバイザー藤原さんによるズームフライ3の解説、歴代ズームフライシリーズとの比較をご覧になれます。前作からの進化、ズームフライ3の魅力がより詳しく語られていますので、こちらも参考にしてみてください。
駅伝シーズンに向けたEKIDEN PACKが登場!
ナイキから2020-2021年の駅伝シーズンに向けた『EKIDEN PACK』コレクションが、12月17日より日本先行発売開始されました。このコレクションにはズームフライ3もラインナップ。
駅伝ランナーからのインスピレーションを受けたコレクションで、ズームフライ3のほかアルファフライネクスト%、ヴェイパーフライネクスト%からテンポネクスト%、ペガサス37などが入っています。
(写真 Eliana)
■「ズームフライ3」が前作から変わったポイントは?