「ぼくが指導するチームはとても弱い」、高校クロスカントリーチームがカタリナ島へ

このまとまりのない態度からも想像できるように、ぼくが指導するチームは強くない。と言うより、とても弱い。どれくらい弱いかと言うと、うちのトップランナーのタイムだと、普通の高校では補欠チームにすら入れないくらい弱い。それはぼくの指導力に問題があるわけではなく、やむを得ない事情もあるのだ、ということを説明するとやや長くなる。だから米国における高校クロスカントリーという競技に興味がない人は、ここから先は読み飛ばしてもらって構わない。でも出来れば読んでほしい。

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レース前に高校のフィールドでウォーミングアップ

クロスカントリーのレースは各部門ごとの参加者全員が一斉に走り、順位は個人と団体の両方で競われる。団体戦は、チーム内の上位5人の総合順位を合計し、ポイント数が最も少ないチームが勝ちというルールだ(個人総合1位だと1ポイント、10位だと10ポイント)。仮に、2チーム以上が上位5人までの合計ポイントで同点になった場合は、6位と7位の順位の合計で勝敗を決める。

つまりレース結果に反映されるのはチームの上位7人なのだから、部員数が多いチームが単純に有利だ。仮に100人の部員がいるチームから選ばれた上位7人と、10人しかいないチームの上位7人では、当然だがその差は大きい。

学校の規模が大きくなるとクロスカントリー部に入部する可能性がある生徒の数もそれに比例して多くなる。だから、カリフォルニアでは公平を期すために、州内の高校を生徒人数によって1部から5部までに分け、それぞれの部ごとに州チャンピオンを決めている。ぼくの高校が所属するのは生徒数500人以下の小規模校が集められた第5部だ。それどころか、小中高一貫の小規模な私立学校で、高等部の生徒は全員で200人ほどしかいない。その中から15人程度の男女がクロスカントリー部に入ってくるが、この人数では強いチームを作るのは難しい。何しろ、普通の公立高校ならクロスカントリー部に100人以上の部員が集まることは珍しくないのだ。

この日ぼくの高校から参加したのは男子4人、女子4人。テストやどうしても抜けられない授業があるなどの理由で参加できなかった生徒が多かったためだ。最低人数の5人に満たないので、団体戦のスコアもつかない。

レースは5キロの距離で行われた。コースはアップダウンが多い山中のトレイルだ。大切に保護された島の自然はとても美しいが、走るランナーたちにはそれを鑑賞する余裕はないだろう。

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レースは険しい山の中で行われた

無理に頑張っても仕方ないから、楽しんで走ってこい、とりあえず歩くな、と甚だ気合の入らない指示をスタート前に出すと、そういうときだけは言うことを聞く。なんとか全員無事にゴールまで帰ってきてほっとした。未熟なランナーほど自分のペースを知らないから、周りの雰囲気に呑まれて限界を超えてしまうことが時々あるのだ。

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一斉にスタートする男子選手達
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