先日公開した対談記事では、箱根駅伝の裏側について語ってくれたM高史さん(ものまねアスリート芸人)。現在は東京マラソン財団スポーツレガシー事業チャリティ・アンバサダー、東京マラソンウィーク宣伝部長など、いくつもの要職を兼任しています。
2月25日には第12回東京マラソンが開催されますが、一体どのような役割を任されているのか、また自身の今後の人生プランをどのように考えているのか。ラントリップ代表・大森英一郎が聞いてみました。
※この記事は2月10日に公開された『母校の大学で箱根に参加できるって本当!? 芸人・M高史の箱根駅伝“出走”の理由』の後編です。
チャリティ・アンバサダーとは?
もうすぐ東京マラソンが開催されますが、今年はどういう関わり方をされるんですか?
今は東京マラソン財団のスポーツレガシー事業のチャリティ・アンバサダーを任されています。スポーツレガシー事業というのは、次世代アスリートのサポート・応援や、スポーツの普及、障がい者スポーツの啓蒙活動などですね。レガシーは遺産という意味なので、比較的幅広く、中長期的な活動になります。
そのための事業に対して、寄付してくださる方を増やすためのチャリティ・アンバサダーをしているわけですね。
そうですね。マラソンやスポーツを通じて寄付を募っています。海外のマラソンとかすごいじゃないですか。
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そういうドネーション(寄付)文化は日本にまだまだ根付いていないですからね。
身近なところから大きな団体まで、気軽に自分の興味のある所にチャリティをする、そういう文化が根付いていけばいいですね。東京オリンピック・パラリンピックもありますけど、そこでフィニッシュではなくて、そこから飛躍していけたら。
そうですね、もっと楽しく走れる環境を作るために、みんなでチャリティし合って、より良いものを作れていったらいいですよね。
「応援してくれた方たち、チャリティ先の方たちを思い浮かべながら42㎞走ります!」
本番当日は、僕もフルマラソンを走らせていただきます。
ガチのガチですね(笑)。前回は手元の時計で2時間59分だったんですけど、グロスでは3時間1分だったんです。周りからは「サブ3じゃないじゃん」って言われまして……(笑)。
ちゃんとグロスでも3時間切れということですね(笑)。
今年はかなり肉体改造をしていまして、一本歯下駄を履いてバランスを養成したり、一度身体作りからしっかりやろうと思ったんです。あとは最近結婚をしたので……。
ありがとうございます。妻が栄養バランスのとれた料理を作ってくれるので、 本当に感謝しています。「食」と「トレーニング」と、あとは
『スポーツアロマ・コンディショニング』さんにサポートしていただいたりしていて、そういう「ケア」も大事にしています。
あとはたくさんの方のご縁ですね。公園に行ったり施設に行ったり保育園に行ったり、いろんな方が応援してくださるので。またチャリティランナーで走らせていただくので、今回はクラウドファンディングで寄付を募ったんですけど……
ありがとうございます。たくさんの方々に応援していただいたので、キツくても背中にその人たちがいると思って走ります!
そうですね(笑)。なので、それはそれでいい意味でプレッシャーになっていますし、下手な走りはできないなと思います。あとは、未来の子どもたち、障がい者スポーツ、ダイヤモンドアスリートとか、そういうチャリティ先の方たちをイメージしながら42.195㎞走っています。まぁ、後半はキツくてそれどころではないんですけどね(笑)。
素敵な42㎞ですね。今回はタイム的にはどのくらいを狙っているんですか?
前回よりは状態がかなり良いので、前回のタイムは超えたいです。
「東京パラリンピックで伴走をしたい」
例えば大迫傑選手ってあまり記録のことについて言わないじゃないですか。自分の持っている100%を出すみたいな。僕も『マインドフルネス』の本とかかなり読んでいて、あんまりタイムとか順位とか気にしすぎたり、「ああしたい、こうしたい」という思いが強すぎると、脳みそも無駄にエネルギーや酸素を消費してしまうんです。
では、今回はその時の自分のベストの走りをして、その結果、去年の自分のタイムを上回っているだろうと。
ただ、現在日本盲人マラソン協会の強化指定選手の伴走(ガイドランナー)を定期的にやらせていただいていて、強化選手はものすごく速いんです。男子だと2時間20分台、30分台とか。女子でも道下美里選手がこの前世界記録(2時間56分14秒)を出して話題になりました。
▲盲人マラソンの伴走をするM高史さん(左) 【写真=本人提供】
個人的に目標がありまして、東京パラリンピックで伴走をしたい気持ちがあるんです。
すばらしい!(拍手)では、パラリンピックでメダルを取る選手の横には、Mさんがいるかもしれないわけですね。
そのためにも、自分の走力を上げたいというモチベーションで走っています。
そうなると、さっきの「好きなことを続けていたら、箱根駅伝を走れた」という話の先には、もしかしたらパラリンピックで日の丸を背負ってメダルを取る日が来るかもしれないわけですね。
特技を生かして、お役に立ちたいというところですね。好きなことをやり続けていくと、その先に見えてくるものはあるのかなと思います。なので、自分のタイムだけ早くなりたいというモチベーションだったら、多分そんなにがんばれない。やはり僕が走力をつけて、「ハイレベルの伴走者になる」という気持ちで走っています。
伴走って、相手のリズムに合わせるから難しいんですよね。
僕が伴走をさせてもらっている方は、身長150㎝ないくらいなので、歩幅がかなり違います。普段の走り方ではリズムが合わないので、終わるとハムストリングスが痛くなるんです。
あと、伴走ひもから選手の感情が伝わってくると聞きました。
青学大の原晋監督の「ハーモニー」じゃないですけど、まさにそういう感覚です。歌手同士でハモるような。表面上じゃなくて、きちんと呼吸を合わせる。ただ、メインはアスリート。伴走者はあくまでもハモリ担当ですから。
長期的な目標としては、パラリンピックでガイドランナーとして日の丸を背負うと。
そうですね、今度4月の霞ヶ浦マラソンにも伴走をさせていただく予定です。
▲箱根駅伝、東京マラソン、そして東京五輪へ、走り続けるM高史さん 【写真=本人提供】
最後に、ラントリップマガジンの読者に向けてメッセージをお願いします。
さっきの話と重複してしまうんですけど、人生1回きりですし、好きなことをずっとやっていると、どこかで花が開く時が来ると思います。もしスポーツだったり、音楽だったり、好きなことに取り組んでいるのなら、それは決して無駄にはなりません。さらに、そのやってきたことを通じて、世の中のお役に立てるかもしれない。自分の欲求を満たすよりも、他者に貢献できた時の方が、人間って幸せを感じるそうなんです。まさに自分がそうなので、それを今後も続けていきたいですし、皆さんと幸せと笑顔をシェアしていきたいと思います!
M高史(ものまねアスリート芸人)
中学・高校は陸上部(長距離)に所属し、駒澤大学陸上競技部では駅伝主務として選手をサポート。卒業後は知的障がい者施設の支援員として約5年間勤務した。2011年12月より「ものまねアスリート芸人」へ転身し、〝公務員ランナー・川内優輝選手のそっくりさん〟として注目を集める。現在は東京マラソン財団スポーツレガシー事業チャリティ・アンバサダー、東京マラソンウィーク宣伝部長、「NPO法人アトリエ言の葉」理事長と、幾多の役職を兼務している。
1991 年生まれ、東京都出身。スポーツをメインに取材・執筆を行うフリーライター。陸上競技 の専門誌『月刊陸上競技』での執筆経験を生かし、当媒体では元陸上ランナーのインタビュ ーや箱根駅伝関連の記事を多く執筆している。