「簡単なレースではない……」、ドイツで開催の“10kmレース”が奥深い
Aug 16, 2017 / EVENT
Apr 26, 2019 Updated
©2017 SushiMan Photography
2017年7月29日にドイツのベルリンで、「アディダスランナーズ・シティナイト2017」というロードレースが開催された。シティナイトとあるが、サマータイムのベルリンは20時でも明るく、10kmのレースの終盤にかけて、ベルリンの都会の大通りの夜の彩りが楽しめる、10000人弱が参加する大規模なロードレースだ。前編に引き続いて、後編ではレースの様子とAR Berlinのランニング拠点である、ベルリンのランベースの様子をレポートする。
※AR=アディダス・ランナーズ
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ARメンバーにとっては特別なレース
2017年7月29日の土曜日の夜、ベルリン中心地のカイザー・ヴィルヘルム記念教会付近を発着点とする、「アディダスランナーズ・シティナイト2017」が開催された。大会会場に到着すると、私だけでなく多くの参加者が、その号砲を待ち構えている様子だった。キッズのレースの後には5kmのレースが終わり、その頃イベントのメインブースではDJが”アゲアゲ”の音楽をかけて参加者達を盛り上げていた。
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その後、スタートラインへ。10kmのレースが始まると、大通りにはたくさんのランナーで溢れた。私はフルサイズの一眼カメラを片手に、1km4分00秒ペース=40分00秒のペーサーについていった。このレースの特徴は一目でわかる。世界各地のARのメンバーたちのTシャツやユニフォームが“一目瞭然”だということである。このレースで、数千人の参加者のなかに、世界中のARのメンバーが800人ほど走っていたからだ。
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それによって、ARのメンバーたちは各々で親近感を感じられるし、レースの前にあった交流イベントで各々が事前に顔を合わせていたのなら、より親近感を感じることができただろう。私はAR Tokyoのメンバーとしてこのレースを楽しんだ。異国情緒あふれる10kmの道のりは、多くの人の情熱と、多くのランナーたちの好奇心で構成されていることには間違いなかった。
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今回のレースの特徴として他に挙がるのが、今回集まった800名ほどのARのメンバーをはじめとする圧倒的なアディダスユーザーの多さということだろう。それは、ランナーの足元を見れば一目瞭然である。ワッフル状の網目のソール=アディダスのブーストシリーズのシューズをいかに多くのランナーが履いているかが一目でわかる。
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その他に私がレースを体験して感じたこと。日本では、やはりマラソン (42.195km)が市民ランナーの目指すべき長距離種目の不動の座であるが、10kmという距離はファンランナーにとっては一番程よい距離なのかもしれない、ということだ。
※例えば、2016年のアメリカで1番の参加者を誇るロードレースは、ニューヨークシティマラソン (51,267人)ではなく、アトランタでのピーチツリーロードレース (56,993人)という10kmレースである
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ベルリンの都市部のレースであっても、沿道とコースをしきるようなロープは、ゴール地点以外ではほとんどなく、それらは人々の良心によって運営されていたのが印象的であった(ベルリンは地下鉄や電車、バス、トラムなどに乗車する際、切符を入れたりICカードをかざしたりはしない=人々の良心によって運営されている)。それは多くの日本以外の大会(日本の大会は多くの費用を警備や整理員にかける)に言えることかもしれない(さすがにベルリンマラソンクラスの大会の規模となると話は別であるが)。
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10kmの部の男子優勝者のタイムは29分36秒と、それなりのタイムであった。優勝したフィリップ・フリーガー選手は、リオオリンピック男子マラソンのドイツ代表選手である。ドイツの代表クラスの選手が出場するということからも、このレースが大きいイベントであることがわかった。そして、レース後の表彰式もアゲアゲの雰囲気で行われていたところが、いかにもナイトレースらしく感じた。
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ナイトレースの魅力:走り終わった後はもちろんビール!
ゴール後のゴール地点付近は独特な雰囲気であった。この大会はドイツのビールメーカーである、エーディンガーが協賛しており、ゴール後には無料で瓶ビール小1本分のビールが貰えるのだ!ゴール後に泥酔しないように、ノンアルコールビールではある。しかし、小麦のビールであるヴァイツェンのノンアルが飲めるのだ!ピルスナー以外の種類のノンアルは、なかなか日本ではお目にかかれない代物。しかもノンアルとは思えない美味しさだった!ビールマニア悶絶級、ヴァイツェンのノンアルを本気で作るあたり、さすビール大国のドイツである。
※エーディンガーはドイツの多くのスポーツイベントに協賛している。トライアスロンチームが強い。
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ビールを片手にレースを終えたランナー達の姿は、私にとっては新鮮そのものであったが、これがいかにもビール大国のドイツらしい。ビールは受け取らないこともできるが、ほとんどの人が手にしていた。
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そのビールを飲み終えて、夜のウォーミングアップを終えたら、イベント会場でハングオーバーになるのもいいが、出来れば夜の街に繰り出すのがオススメである。ヨーロッパの若者が一番行きたいと熱望する街であるベルリンは、歴史と伝統的建造物、それにアートや、充実した夜のナイトクラブが街中にある。実際に、ARのメンバー達を対象に行われたランベースでのアフターパーティは、終始クラブのようなアゲアゲの雰囲気であった。
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AR Berlinのメンバーで、キャプテンでもあるジョイス・ビンボースさん (写真:ゼッケンF819)は、今回のレースを走った感想を次のように述べた。
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「レースは簡単なレースではありませんでした。10kmという距離は、自分の持ってる力150%出しきらなきゃいけないから。気温も高く、みんな最初からとばしすぎて、5~7km辺りで苦しんでました。それでも、レースの雰囲気やバンドの演奏は最高でした」
「ゴール地点のライトとエネルギーに満ち溢れた感じがとても好きでした。幸福感、嬉し泣き、いい汗をかいた人たち、そしてベストを尽くした人たち」
「本物の戦士は“痛みは一時的なものだ”ということを知っています」
「レース後のランベースでのパーティーは素晴らしかったです。明け方まで踊り続けている人もいましたね。いろんな国からランナーが集まって、とても居心地がよかったです」
ランニング拠点の理想形:ベルリンのランベース
ランベース・ベルリンは従来のランステとは思えない、まるでスポーツジムのような場所である
レースの翌日に、ベルリンの東側にあるランベース・ベルリンを訪れた。ランベースというのは、ARの活動拠点でもあり、ランステとしてビジター利用もできる。世界各地にARの拠点があるが、ランベースを持っている拠点は意外と少ない(例えば、交通網が少なく車社会の場所ならば、ランステの需要はあまりないのかもしれない=車に荷物を置く)。
ベルリンのランベースはランニング拠点の理想形に思えた。このランベースでは、ランステの機能としてはもちろんの事、トレーニング、エクササイズ、食事、コーヒータイム、リラックス、ランナーのデータ管理など様々な面を兼ね備えており、それらを一つで完結させることができるのだ。
スポーツジムのように、ほぼ毎日何かしらのプログラムが行われている
言い換えれば、ランステとして使えて、トレーニングプログラムやヨガのプログラムもあるし、さらに、ほぼ毎日セッションがあり、ワークアウト終了後もすぐに、その場で食事に移ることができる。また、その後はリラックスして、気の知れた友達と交流できる空間がそこにある。それは、各々のコミュニケーションを生み出す空間であって、それは日本のランステでは簡単に実現できないことなのかもしれない。
AR Parisのメンバーとアディダス・ジャパンランニング部門の宣伝広報担当の安藤氏
今回、フランスのAR Parisのメンバー達と話したが、AR Parisは、AR Parisの中でもそれぞれにチームが分かれていて、それぞれのTシャツの裏側にそれぞれのキャラクターのロゴが入っているそうだ。こういった世界中のARメンバーと気兼ね無く、親近感を持って話せるのが、このランベースの特徴である。今回のイベントに限らず、ベルリンマラソンなどでベルリンに来るチャンスさえあれば、世界各地からこのランベースを訪れる世界各地のARメンバーは多いことだろう。
この場所がそれぐらい、魅力的な空間であることは、ほぼ間違いなさそうだ。このベルリンでいうランベースとは、単純にランステという概念ではなく、ランナー同士のコミュニケーションを生む場であるということが確認できた。ベルリンに行く際は、もし、AR Tokyoのメンバーでなかったとしても、必ず訪れておきたいランナー必見の場所である。
ARのネットワークは言葉や文化を越えランニングで繋がる
今回の「アディダスランナーズ・シティナイト2017」と、レース前のARの交流セッション、そして、ランベースを訪れて感じたのは、ARの国際間のネットワークの繋がりである。現在、世界各地にARの拠点があり、国際間のコミュニケーションはますます重要視されるであろう。
お互いにとって、良いものは学び、取り入れ、そしてより良い形に改善していく。特にヨーロッパの地域に根付いた陸上クラブや、都市型のランニングチームにから感じ取れることは、走ることを本当に楽しんでいて、心から愛している。そして、それがきちんと文化として根付いているということである。
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今回、ポーランドのワルシャワから参加したAR Warsawのクラウディア・ゼブロウスカさん (写真:ゼッケンF3834)は、次のように話した。
「自分の地元以外で走るのは、いつも特別な経験です。今回のシティナイトは素晴らしいイベントで景色も美しく、タイムの出るコースです。今回は途中に、足の痛みやまめも気になりましたが、その時に世界各国から集まった800人のARのメンバーのことを思いました。今まで参加した中でも、楽しいレースの1つでした!」
地元のベルリンから参加したAR Berlinのポール・ベンツコーさんは、
「夜のレースは素晴らしかった。様々な国から多くのランナーが集まり、みんなの興味は一緒で、走ること。 ゴールをして、知ってる人、知らない人関係なく、みんなと握手して、それはとても素敵な瞬間だった」
と、感慨深い様子で話してくれた。
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また、ドイツのフランクフルトから参加した、AR Frankfurtのアレクサンダー・シュミットさん (写真:ゼッケン7758)は、次のように話した。
「まずは、 金曜日に街中を軽く観光ラン。その夜は世界中のARのランナー達との楽しい会話で幕を閉じました。 土曜日は、スタジアムでゲームがあって、グループには違う都市のランナー達が集まった。楽しいことにみんなで真剣に取り組む、そんな感じのイベントでした」
「夜はいよいよ、レース。5kmを走る人、10kmを走る人、応援の人もいる。ARのみんなが集まって応援している場所は、本当に盛り上がっていました。その応援ポイントでは、まるで飛んでるかのように速く走れました」
「 レースの後は、ランベースで素晴らしいパーティがありました。週末は、日曜日の朝のブランチで幕を閉じました。 素晴らしい週末でした。他の都市のARの方々と会える機会があり、フランクフルトや他全ての場所からのランナー達と、すべての瞬間ひとつひとつを、楽しめました」
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今回のベルリンでの「アディダスランナーズ・シティナイト2017」では、多くの気づきや学び、そして多くの交流が持てた。今後、ARのグローバルイベントとして、9月には韓国のソウルで「miRUN SEOUL」が、さらにその後の秋にはアディダス・ジャパンが日本で、世界各地のARメンバーとの国際交流イベントを兼ねた、ランニングのパーティーイベントを開催する予定だ。
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走ることは時に孤独であるが、ともに走る仲間がいれば、しかもそれが、世界中にいればなお、その楽しみは増えていくことだろう。ランニングはシリアスランナーだけのものでは無く、ファンランを楽しむ人や、健康のために走るランナーも、それに取り組む動機が大切である。
AR Tokyoでは今後も継続的にメンバーの募集を行っている。次はどの都市でこういった国際交流イベントが行われるのか。そして今、一番アツい世界のARのコミュニティは一体どこなのか。今後も、世界各地のARコミュニティやそのネットワークの動向から目が離せない。
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