クリスマスイブに行われた「箱根OB座談会」。箱根駅伝常連校のOB4名が集結し、様々な選手やチームの裏話を暴露してくれています。今回の記事は前編に引き続き、その約3時間の対談(という名の飲み会)の模様をお届けします。お酒も進み、ますます話は盛り上がります!
座談会前編はこちら
<メンバー>
法政大OB・大森英一郎さん(ラントリップ代表)、早稲田大OB・八木勇樹さん、城西大OB・玉澤悠輝さん、青山学院大OB・高橋宗司さん
青山学院大学初優勝のウラ側
じゃあ八木くんとしては23㎞走ってる中で、どこがきつかったですか?
横浜は覚えてますね。日差しも暑いし、勘弁してよと。沿道に人がめちゃくちゃいるじゃないですか。下手な走りもできないし、調子が悪いなかで最高の走りをしないといけない。ましてや優勝が懸かっている走りだから、「今日調子悪かったからダメでした」で済まされない。しかもそれ1年目で経験してるので。その時は僕が詰められて、次の8区で抜かれたんですよ。遊行寺の坂で。
僕と全くタイプが違って前半稼ぐタイプでもなくて、みんなが失速する中でフォームも変わらず淡々と押していくみたいな。
よくご存じですね。すごいうれしい(笑)。遊行寺の上り800mの坂、あそこ僕めっちゃサボるんですよ。上りが得意ではないので。8区って遊行寺の坂をがんばるイメージがあるじゃないですか。僕は「上りがダメなら下りでがんばればいい」っていう発想なので、下りだけがんばるんですよ。
靴とかも5回くらい文句言って作り直してもらってる。僕だけいつもマネージャーに怒られてました。「お前何でそんなに細かいの?」って。時計も、走りながら見る動作が無駄だなと。遅いと(ペース)上げちゃうじゃないですか。
でも、遅いかどうかわからない不安の中で走るよりも、認識できた方がいいじゃないですか。それはないんですか?
いや、スタートラインに立つ時点で自分の認識よりも遅いってことはないんですよ、僕の中で。しかも4年目は後ろが8分以上離れてて、その時はさすがに着けなくても良くないですか?
前の日に学年LINEで、「宗司、明日がんばれよ」って。4年生2人しか出走しないので、2人に対しての学年の盛り上がりがすごかった。僕が「がんばるぜ!」って送ったら、川崎友輝っていう僕の同期が「もうがんばらなくて良くない?」って言ってくれたんです。すごい気が楽になって、「あ、がんばらなくてもいいんだ」って。
これいろんな説があるんですけど、「なぜ(ハーフ)64分13秒の高橋が区間賞取れたのか説」っていうのが……(笑)
ラントリップさんに前書きましたけど、好きな子に電話したかったって書いたじゃないですか。すべてはそれです。
※高橋さんの単独インタビューはこちらから
恋愛は競技においてプラス? マイナス?
女性とか、好きな子がいることで、競技へのエネルギーに変わるかどうかっていう点ではどうですか?
大学3年の時まで(彼女が)いたんですけど、夏に別れてしまって。次は最後の年だったので、(彼女を)作らないと決めて最後に懸けようと思いました。
僕は(合宿所が)所沢で、門限(22時半)もあるので遊びに行けないんですよ。僕らは1年生の時に竹澤(健介/現・住友電工)さんがいて、やっぱり飲むとか遊ぶとかを一切してなくて、空気がそんな感じになってたんですよ。その中で、遊びに行って帰りが遅いやつは誰もいなかったですね。
ありますね、かなり。だから僕らは全然行かなかったですね。
自分もプラスになる面もあればマイナスになる面もあって、別れてからマイナスになると判断しました。
話変わりますけど、ファンレターってどのくらいもらってました?
僕で30通くらいですね。神野(大地/現・コニカミノルタ)・久保田(和真/現・九電工)は200通はいってますよ。
マジか! バレンタインとかもすごいんじゃない? 箱根優勝した後とか。
あいつらはすごいでしょうね。僕はバイト先に来たのがビックリしました。
町田に青学みんなでご飯を食べに行く場所があるんですけど、そこで2ヵ月バイトしていて、ツイッターで発信しているので場所がばれるんですよ。その店にめっちゃファンの方が……。まぁ売り上げに貢献しましたけど。
優勝したらサインは書きますね。でも、早稲田は関係者にも配るんで、手が腱鞘炎になるくらい(笑)。
八木くんとかはファンからのアプローチはあるんですか?
僕らの時は、まだ他にも人気選手がいたので。矢澤(曜)とか、大迫(傑/現・ORPJT)が多かったですね。
高橋宗司は〝三田信者〟
これまで結構コアな裏話が出てきたと思うんですけど、初めて観る人の中には「箱根の何がおもしろいの?」という人もいると思うんですよ。みなさんはどの辺が箱根駅伝の魅力だと思います?
応援する大学があるか、応援する人がいるか、だけで変わってきますよね。
何かガイドブックみたいなのを見て、そしたら選手の一言みたいなのも書いてるじゃないですか。あれを見て、持ちタイムとかを見ながら「この選手は強いんだ」とか。
あれ何でアイドルとか聞くんですかね。好きな曲とか載せますもんね。当時は何て書いたんですか?
「BUMP OF CHICKEN」とかですか?(笑)。僕はすごく覚えているのが、三田(裕介)さんのプロフィールで、好きな女性のタイプの欄に「みんな素敵です」って書いてあったんですよ。かっこいいな~と思って。
いや、三田さんだからかっこいいんですよ。僕三田さん信者なので。
大学で陸上をやった理由のひとつが、荒井輔先輩(青学大OB)と、三田裕介さんなんですよ。だから、僕は何でも三田さんの真似をしたがるんですよ。三田さんがプロフィールに「みんな素敵です」って書いたので、僕も同じことを書いたんですよ。まぁ見事にすべりましたね(笑)
一同 (爆笑)
三田さんだからできたことであって、俺が思ってたのと違うなと。
なるほどね。でも、玉澤くんとかが書いたら良さそうですよね。「みんな素敵です」って。
2人が共通して見た「箱根5年目の夢」
箱根当日ってどういう動きをしてたんですか? 9区ってスタート遅いですよね。
遅いですね。だから5区、9区は比較的ゆっくり。もはや当日のスタートもテレビで観れるんですよ。
不思議な感覚でしたね。テレビで観ていた選手が自分の目の前に来るんですよ。
アップ終わって待つ時の緊張感がすごくて。やっぱりテレビが絡むから、本当にでかいイベントだなと。もう「祭り」みたいな。
僕4年目は出てないんですけど、覚えてないんですよ。選手の付き添いで行ってたんです。でも順位とかも覚えて無くて。
八木さんが3年目で優勝して、4年目に出られずに終わるっていう終わり方が、想像を絶するストレスだと思うんですよ。夢に出てくるだろうなって。ちなみに僕は5年目の夢を見るんですよ。
メンバー選考に置かれる立場にいる夢を見て、起きてから「あ、俺引退したんだった」って。
「良かった、俺引退してるわ」って思いつつも、「もう終わったんだな、俺の青春」っていう感じの夢をすごい見てます。最後順調に終わっても見るのに、4年目出れないで終わると、引きずるんじゃないかなって。
確か(総合)4位だと思うんですけど……。しかも終わって反省会とかで順位を言ったりしてると思うんですけど、全然覚えて無くて、当日のレース展開もまったく。自分の中で記憶に残らないようにしてるんじゃないかな。
相当なストレスだから、脳がシャットアウトしてるんじゃない? それくらい危険なストレスなんですよ。
箱根駅伝の裏側を語った4人。次回は“おまけ編”として、93回大会を大胆に予想します。
1991 年生まれ、東京都出身。スポーツをメインに取材・執筆を行うフリーライター。陸上競技 の専門誌『月刊陸上競技』での執筆経験を生かし、当媒体では元陸上ランナーのインタビュ ーや箱根駅伝関連の記事を多く執筆している。