マラソン芸人のM高史さんと萩原拓也さん(ポップライン)が関東地区の大学陸上部を訪問し、チームの様子をレポートする当企画。第2弾は、正月の箱根駅伝で14位だった國學院大学にお邪魔しました。専門誌では見られない学生たちの〝素顔〟を、芸人2人が引き出していきます。
●インタビュアープロフィール
M高史(ものまねアスリート芸人、左)
駒大陸上競技部では駅伝主務として選手をサポート。2011年12月より「ものまねアスリート芸人」へ転身し、〝公務員ランナー・川内優輝選手のそっくりさん〟として注目を集める。國學院大の前田康弘監督(写真中央)が駒大コーチを務めていた時の教え子にあたる。
萩原拓也(お笑いコンビ・ポップライン、右)
かつて神奈川大陸上競技部に選手として4年間所属。卒業後は2年間の役者生活を経てお笑い芸人へ転身し、現在は設楽悠太選手(Honda)のそっくりさんとして駅伝ファンを中心に密かなブレークを果たしている。
箱根では現3年生が往路で快走!
駒大OBの前田康弘監督が指揮を執った2009年頃から力を伸ばし、2011年と2012年の箱根駅伝では2年連続で10位となりシード権(※)を獲得。2011年のアンカー10区では、当時1年生の寺田夏生選手(現・JR東日本)がコースを間違える珍事件を起こし、一躍話題となりました。
(※シード権……10位までに入れば、次回大会の予選会が出場免除となる)
今年1月の箱根では14位とシード権獲得には至りませんでしたが、当時2~3年生だった4人が区間5位以内で走破。次回大会への期待が高まるチームでもあります。
【2018年箱根駅伝成績】※学年は当時のもの、赤字は現役部員
國學院大學 総合14位 11時間18分06秒
1区 浦野雄平(2年) 区間2位
2区 向 晃平(4年) 区間20位
3区 青木祐人(2年) 区間5位
4区 土方英和(2年) 区間3位(区間新)
5区 河野敢太(4年) 区間18位
6区 臼井健太(1年) 区間19位
7区 内田健太(4年) 区間5位
8区 松永拓馬(4年) 区間16位
9区 熊耳智貴(4年) 区間14位
10区 江島崚太(3年) 区間5位
特に3年生エースの浦野雄平選手は、各校のエース格が集う1区で区間2位と好走を見せた後、4月の世界大学クロスカントリー選手権(スイス)では6位に入賞。5月下旬の関東インカレ2部5000mでは3位に食い込むなど、トラック、ロード、クロカンと幅広い活躍を展開しています。
部員数は長距離男子が56人で、その他にも男女短距離ブロックや昨年から強化が進んでいる女子長距離部員2名も在籍。長距離ブロックの主な練習場所は多摩川河川敷、たまプラーザキャンパス(神奈川県横浜市)のグラウンド、砧公園など。チームは7年ぶりの箱根シードへ向けて、日々の練習に勤しんでいます。
エース浦野はクロカン初心者ながら世界6位
現チームの注目株は、やはり3年生エースの浦野選手。箱根駅伝以降の活躍については前述の通りですが、普段はどのような練習をしているのでしょうか。チームの主務を務める吹切佳太さん(4年)にもお話を伺い、「浦野雄平」の人物像を明らかにしていきます。
吹切主務には「今、勢いのある選手」として、浦野選手を挙げていただきました。
去年の関東インカレでも入賞(2部10000m8位)していますし、4月には世界大学クロスカントリー選手権で6位入賞と結果を残しています。自己分析がしっかりできていて、調子が悪い時でも、悪いなりに大会へ合わせていくところがすごいと思いますね。
自分の中では普通のことだと思っているんですけど、強くなるためにどうすればいいかを常に考えています。調子が悪い中でも、いかに自分のパフォーマンスを引き出せるかを考えますし、練習後には必ず自分のフォームチェックをマネ―ジャーに動画で撮ってもらっています。そういう点においては、チームの中でも取り組んでいる方だと思いますね。
最近の國學院大學さんは、3年生に勢いがあるのではないかなと感じているのですが、そのあたりはいかがですか?
自分の他にも、土方(英和)、青木(祐人)という主要選手がいるんですけど、1年生の時からAチームで切磋琢磨してきて、自分が結果を出せば彼らもやってくれる、そんな良い関係性を保てています。
前田監督に「うちのチームでやらないか。強くなれるぞ!」と声を掛けていただいて、その言葉に惹かれたのがきっかけです。
高校は富山商とのことですが、高校時代から活躍されていますよね。
(※浦野選手は謙遜しますが、インターハイでは3年時に1500mと3000m障害の2種目に出場。3000m障害は決勝15位という成績を収めている)
では大学に入ってからトレーニングを積んで成長したわけですね。3年生キャプテンの土方選手も大学に入ってから急激に伸びたと伺ったのですが……
(土方選手・・・高校時代ベスト5000m14分43秒20→現在10000m28分44秒28)
そういう選手が多いというのは、チームにとって良いことですよね。クロカンが強くなったきっかけはあるんですか?
実はクロカンをやったのは2月の選考会が初めてだったんです。
女子マネージャーは体力勝負!
話題はマネージャーの話へ。ここでは女子マネージャー代表として4年生の藤巻香織さんにも話を伺い、普段の仕事内容やマネージャーになったきっかけをお話しいただきました。
マネージャーの2人にもお話を伺いたいのですが、吹切主務はいつ頃からマネージャーをやっているのですか?
自分は選手で入部したのですが、結果が出せず、故障が多かったためマネージャーになりました。最初は「走りたい」という気持ちがあったのですが、いざマネージャーになるとチームに貢献できている実感がわいてきて、その中で後輩たちが結果を出してくれているのは非常にうれしいですね。
藤巻さんは高校時代に何かスポーツをされていたんですか?
バレーボールを8年間やっていました。中学校の時に駅伝をやっていたので、その時に初めて箱根駅伝を知ったんです。大学に入ったらマネージャーをやろうかな、という思いは当時から少し持っていました。
まず自分がやっていた競技と違うので、正直最初はわからないことばかりでした。ひたすら先輩についていく過程で、だんだん仕事の要領がわかってきた感じです。
自分は3年生からなので、正直(藤巻マネージャーは)自分よりよっぽど要領がよくて、いつも頼りにしています。
女子マネージャーの仕事って、どんなことをするんでしょうか?
基本的には練習のタイム取りや給水、あとは「予選会まであと〇日!」など、チームの雰囲気を上げる取り組みですね。
そうですね、自転車に乗る時はバリバリこぐので……(笑)
学生たちのアイドル事情について
試合や練習では真剣な表情を浮かべる彼らも、普段はキャンパスライフを送る今どきの大学生。好きなアイドルやアーティストの話題で盛り上がりました。
チームでよくアイドルの話をするのですが、『乃木坂46』が人気ですね。
出ましたね。駒大でも主務の吉川くんが挙げていましたね。
※詳しくは駒大編を参照
これ記事になったら、ご本人に届くかもしれないですよ(笑)
ゆっくり寝て、午後から外に出るか出ないか、という感じですね。
試合前は何を食べて、何を食べないとか。朝・夕は寮で食べるのですが、土日と昼は各自で食事を済ませないといけないので、普段から気を遣っています。
すみません、「飲みに行かないんですか」とか聞いちゃって……(笑)
今年は「上位で勝負したい!」
最後に、学生の皆さんに今年の國學院大の注目ポイントを挙げてもらいました。
「今年の國學院のココが違う!」という点があれば、アピールをお願いします!
今までは他大学の主力と張り合うというより、総合力で勝負するというチームでした。今年は現3年生の浦野、青木、土方を軸として、上で勝負していきたいです。
そんな浦野選手は、箱根駅伝の1区で区間2位と好成績を収めました。振り返ってみて、いかがでしたか?
あのレースは1年間やってきたことが、“かたち”となって出たレースだと思っています。でも終わった後に周りから「まさかの2位」とか言われて、正直うれしいのか、うれしくないのか、わかりませんでした。そこまでの選手としか見られていなかったのかなって。もっと國學院の名前を広めていきたいと思いましたし、自分と土方と青木を中心にもっと上で戦っていきたいと思っています。
まずトラックを極めていきたいと思っているので、まず日本選手権に出場できるようにしたいです。一方で駅伝も重要なので、次は近年成績を残せていない(箱根駅伝の)2区とか5区を自分が走らなくてはいけないと思っています。
すごい決意がみなぎっていますね。藤巻さんは4年間マネージャーをやってきて、今年のチームに対する想いもあると思いますが……。
そうですね、浦野を中心に「今年はやってくれるだろう」という信頼が女子マネージャーの中にはあります。この3年生の勢いに4年生も乗っかって、チームが1つになれたらなと思います。
なるほど。本日は練習前の貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました!
1991 年生まれ、東京都出身。スポーツをメインに取材・執筆を行うフリーライター。陸上競技 の専門誌『月刊陸上競技』での執筆経験を生かし、当媒体では元陸上ランナーのインタビュ ーや箱根駅伝関連の記事を多く執筆している。