全員が同じストレッチをする時代は終わり?  ストレッチへの弊害に関する指摘も

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「ストレッチにより筋力がダウンする」

こう語るのは、スポーツケア整体研究所代表の松村卓さん。ご自身も陸上短距離のスプリンターとしても活躍。北海道国体7位、東日本実業団4位、全日本実業団6位といった実績もある方です。

現役時代はケガと付き合うことが多かったようで、そのトレーニング方法を根底から見つめ直し、筋肉ではなく骨の活用に重点をおいた「骨ストレッチ」や、体幹部を活用した「松村式ランニング」を考案するなど、次々と新たな手法をあみだしています。

そんな松村さんの自著『「骨ストレッチ」ランニング 心地よく速く走る骨の使い方』で、ストレッチについて語っています。

ランニング前に当たり前のように取り組んでいるストレッチ。なかには30~40分ほどかけて入念に取り組んでいる方もいるでしょう。しかし、この当然、皆やっている行為があまり意味のないことだとしたら……。

同書で松村さんがはっきり主張しているのは、「ストレッチで伸ばされるのは、腕、肩、太ももといった体の一部だけ」ということ。多くの部位では、ほとんど役立っていないというのです。

これは何も松村さんの個人的な経験から主張しているわけではありません。スポーツ科学などの研究分野でもストレッチへの弊害が指摘されるようになっているのです。

例えば、ニューヨークタイムズ。アメリカ陸上競技連盟の比較実験によると、13~60歳の1400名を対象に、①ストレッチをしない、②ストレッチをするという2つのグループに分け、3カ月間ランニングをさせました。

すると、どちらのグループも同じ16%という割合でケガをし、同じ期間(約1週間)ランニングを休むという結果となったのです。ストレッチをしても、しなくても、同じくケガを負ってしまうのです。

また、クロアチアのザグレブ大学の研究チームが行った研究もあります。こちらは、プロのアスリートを対象に行いました。

その研究では、「ストレッチで同じ箇所を45秒以上伸ばすことで、筋力が平均5.5%、跳躍力や瞬発力も平均3%ダウンする」ということが判明したのです。このストレッチ時間が90秒以上となると、筋力の低下がさらに低下するとのこと。

さらに、オーストラリアのシドニー大学では、10人の被験者に1回につき40秒~10分のストレッチングを行い、運動後の筋硬直(筋肉痛)の程度をしらべましたが、筋肉痛が改善される事例は、ほとんどなかったのです。

これまで当然「体にいい」と思っていたストレッチが、実はそれほどでもなかったという研究結果が出てきているのです。今回のコラムでは、誰にどの方法が効いているのかをお伝えする類いのものではありませんが、スポーツの世界は常に進化しているもの。何か違和感があるものには疑ってみることも大切です。それが人間の本能というものではないでしょうか。

ストレッチに関しても、これをすることで体が重くなったり、筋肉を痛めてしまうこともあります。探究心をもって、自分の体と向き合い、ベストな調整方法を見つけてみるのが良いと思います。もう、右にならえで全員が同じストレッチをする時代は終わりつつあるのかもしれません。

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