【ランニング初心者】ジョギング・ランニングの最適なペースとは?1万人指導のプロコーチに学ぶ“マイペース”を知る方法
Dec 01, 2023 / HOW TO
Dec 01, 2023 Updated
いよいよマラソンシーズンに入り、毎週末のように全国各地でマラソン大会が開催されているこの季節。今シーズン、初めてフルマラソンに出場する方も多いのではないでしょうか。
マラソン本番に向けて日々ジョギングをしているけれど、ご自身にとってちょうどいいペースはどれくらいなのか分からないという方もいるはず。こちらの記事では、マラソン完走やタイム更新のヒントを『ペース』という切り口からお届けします。解説していただいたのは、プロランニングコーチ・高橋良さん。
30年に渡り、ランニングコーチとして1万人以上のランナーを指導。ご自身もこれまで100本以上のフルマラソンを走った実力者です。今回はスポーツMC・ヤッホーカレンさんが実践して、高橋さんから学んでいきます。
マラソン完走には自分のペースを知り、無理のないペースで走る
カレン:初心者向けのペースの配分について伺っていきます。
高橋:ランニングにはテクニックがあり、1つは『ランニングフォーム』、もう1つは『ペースをコントロールすること』。今回はペースに着目して解説しますね。マラソンは長い時間走り続けますから、自分のペースをしっかり把握して、無理のないペースで走る切ることが大切です。
意外と自分のペースがわからない方が多いですよね。例えば、周りの人が5分ペースで走っているので、それに合わせて同じペースで走っている方もいますよね。したがって、今回はビルドアップ走を通じて自分のマイペースを確認するための方法を紹介します。
マイペース把握の指標は心拍数
カレン:自分にとってちょうどいいペースの把握はどのようにするのでしょうか。
高橋:マイペースは運動強度によって確認するのが良いです。運動強度は1km何分というスピードではなく、心拍数によって分かります。
最大心拍数に対して約80%の心拍数がジョギングペースとなり、85%程度が初心者にとってフルマラソン完走にちょうどいいペースになります。85%を超えるとハーフマラソンや10kmのペースで頑張って走る感覚になります。それを心拍数をもとに計算して、自分のペースを把握することが大切です。
カレン:心拍数を求めるための計算式はありますか?
高橋:一般的には〈(220-年齢)×運動強度(%)〉で心拍数の目安が出てきます。求める数値は、年齢によって変わってきます。
カレン:私は今年30歳になるので、〈(220-30)×80%〉= 152です。つまり、心拍数152がジョギングペースになります。
高橋:カレンさんの場合は85%で162くらいになりますので、150中盤〜後半のペースで走っているとフルマラソンのマイペースになります。
そうはいってもどのような感覚になるかわからないですよね。大切なのは「苦しい」や「楽に走れる」などの自分の感覚、ランニングウォッチに表示された心拍数、実際に走ったときのペースの3点を把握することが大切になります。
ビルドアップ走でマイペースを把握
マイペースの把握方法を学んだところで、いよいよ実践に移っていきます。高橋さんは、運動強度を1回のジョギングのなかで変えていくビルドアップ走がペースへ慣れるためのトレーニング方法としておすすめとのこと。3つのペースに分けてカレンさんが実践します。
高橋:今回はジョギングペース、フルマラソンペース、ハーフマラソンペースと徐々にペースを上げていくビルドアップ走を行います。それぞれのペースを体感することで、フルマラソンのペースを掴んでいきましょう。
カレン:時間はどの程度走ると良いでしょうか。
高橋:理想は60分のジョギングで20分ごとにペースを上げていくことですが、時間が取れない方や長い時間を走るのが厳しい方は30分のジョギングを10分ごとに分けても大丈夫ですよ。今回は10分ごとにペースを変えていきましょう。
1.ジョギングペース(運動強度80%以下)
高橋:まずは運動強度80%以下、ジョギングペースで走ってみましょう!
カレン:このペースは楽な感じがします。今、心拍数は141ですね。
高橋:ジョギングはこれくらいのペースで良いと思います。おしゃべりができるくらいですね。
カレン:心地いいペースで走っています。
高橋:気持ちいいペースと実際の数字が合っていたら、マイペースが掴めている証拠です。目標としているのはフルマラソンペースの152ですから、それよりも下のペースでジョギングをしたことになります。余裕を持って走れているので、ちょうどいいですね。
2.マラソンペース(運動強度80〜85%)
高橋:走り始めて10分が経ちました。運動強度80〜85%のペースに上げていって、最後はフルマラソンのペースまで持っていきましょう。走っている間は心拍数とペースを細かく確認するのが大変ですから、後からの確認でも良いですよ。自分の感覚を信じて走ってくださいね。
カレン:今の心拍数は152ですよね。
高橋:カレンさんの目安としては152を超えるくらいが今のちょうどいい心拍数です。160まで上がると少し頑張りすぎになりますね。
高橋:152〜153で推移しているようですので、ちょうどいいですね。今はおおよそマラソンペースの下限になります。マラソン本番、そのくらいのペースでスタートできると無理なく走れますね。
カレン:なるほど。少し上がりましたが、157です。
高橋:いい感じです。先ほどよりペースが上がりましたが、これで良いと思います。これ以上頑張り過ぎるとオーバーペースになってしまいます。160手前(運動強度80〜85%の心拍数)がこんな感じかとご自身でインプットしてくださいね。
3.ハーフマラソンペース(運動強度85%以上)
高橋:最後の10分になりました。このあとはどのくらい頑張れるか確認していきましょう。全力で走る必要はありませんが、ハーフマラソンを走っているくらいのペースで走り、最後は少し上げましょう。痛いところなどはないでしょうか。
カレン:痛いところはありませんが、少し呼吸が上がってきたように感じます。
高橋:それが良いと思います。確実に呼吸は少しずつ苦しくなってきます。
カレン:178です。心拍数が上がってきましたね。
高橋:それで大丈夫です。これくらい心拍数を上げるとどのくらいのペースになるのかの確認なので、ちょっと上げ過ぎたとしても問題ありません。トレーニングの効果を得るために、ペースダウンするのは避けるようにしたいですね。180前後の心拍数のままでいきましょう。
カレン:心拍数は181に上がりました。かなり息も上がってきましたが、まもなく30分。もう少しでフィニッシュします!
30分のビルドアップ走を走り切ったカレンさん。心拍数を確認しながら走りましたが、実際のペースはどのくらいだったのでしょうか。心拍数と実際のペースに対する感覚を合わせていくためのヒントを高橋さんに伺いました。
ポイントは感覚・運動強度・ペースをすり合わせること
カレン:今回はビルドアップ走ということで3つのパートに分けて行いました。最初はジョギングペースで、心拍数は141〜143で走れました。
高橋:カレンさんの場合、140前半の心拍数は運動強度が80%を超えないベストな運動強度だと思います。
カレン:ペースは約6分30秒くらいになりました。続いてのパートがマラソンペースで、心拍数が152〜161くらいでした。
高橋:カレンさんの場合、この強度(80〜85%)のターゲットが152〜162でしたので、まさにぴったりの強度。そして、最後は運動強度85〜90%が目標でしたね。
カレン:ここでの心拍数は最大181でした。
高橋:最後に少しペースアップしましたので、約93〜94%まで上がりましたが、平均すると約90%の運動強度でした。本当に予定していた通りのビルドアップ走だと思います。
カレン:普段自分が体感しているペースがしっかりと合っていたというでしょうか。
高橋:最初に話しましたが、ビルドアップ走のポイントは自分の『走っている感覚』『実際の運動強度』『その時のペース』の3点をすり合わせることです。今回走っている間、ウォッチに表示されたペースをあまり見ないようにして走っていただきました。そのためカレンさんは自分の感覚、強度、心拍数がぴったり合っているということなんです。
カレンさんの結果でいえば、ジョギングペースは6分30秒、マラソンペースは6分、ハーフマラソンペースが5分30秒ペースでした。カレンさんは以前マラソンサブ4を達成して、フルマラソンを約5分40秒ペースで走ることができましたが、マイペースはその時期の体力など様々な要素が絡んできます。現在は6分ペースがカレンさんにとってのフルマラソンのベストペースになりますね。
カレン:今回は心拍計付きのランニングウォッチで心拍数を計測しましたが、心拍を測るものがない場合はどうすれば良いでしょうか。
高橋:その場合には、ビルドアップ走の合間、給水時に頸動脈や手首などの脈拍を約10秒測って記録します。そして、計算式で出した心拍数の目安を6で割った数と照らし合わせて確認しましょう。
カレン:良いマラソンシーズンを迎えるためにも、無理なペースで走るのではなく現在地を知ることが大切ですね。
高橋:オーバーペースにならず、無理なく楽しく走るには「このくらいのペースがちょうどいい」と確認、実感することが大切です。
カレン:まずは今を知っていただいて、より楽しいランニングライフを送っていきましょう。
高橋:毎回でなくても2〜3ヶ月に1回、心拍数を測ってペースを確認する現在地の把握ができます。そのときのご自身のコンディションや変化を確認することもできるので、定期的にこの方法でビルドアップ走を行ってみましょう。
カレン:トレーニングを継続していると、レベルアップしているかもしれませんからね。
高橋:その通りです。
カレン:ぜひ読者の皆さんも今回ご紹介した心拍数を基にしたビルドアップ走を実践して、マイペースの把握をやってみてくださいね!高橋さんありがとうございました。
高橋:ありがとうございました。
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ランニングを楽しく、そして無理なく続けていくためにはご自身にとっての適切なペースを知ることが欠かせません。そして、今回ご紹介した方法は、フルマラソンやレースに参加してレベルアップを目指すランナーにとっても目標設定のヒントになりますね。これからのシーズン、ご自身のマイペースを把握するためにビルドアップ走を実践してみては?
【動画でご覧になる方はこちら】
【高橋良さんに学ぶ『正しいランニングフォーム』はこちら】
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髙橋 良さん
株式会社ルネサンス 地域健康推進部 次長 / リスタートランニングクラブ コーチ
ランニングセミナー・ランニング大会でのペースアドバイザー等、様々な市民ランナー指導の場で30年に渡り活躍してきたプロランニングコーチの草分け的存在。「速さ」ではなく、「怪我なく」「効率良く」、そしていつまでも「楽しく」走り続ける為のアドバイスが指導の基本。
・ハーフマラソン:1時間7分33秒
・フルマラソン:2時間32分09秒
94年ヨロンマラソン 総合優勝 など
・100km:7時間40分