【箱根駅伝2023】ランニングシューズ事情を振り返る!NIKE厚底シューズの着用率はどう変化?
Jan 10, 2023 / SHOES
Jan 10, 2023 Updated
1月2日~3日に開催された第99回箱根駅伝。今回も手に汗握る展開が繰り広げられ、駒澤大学が2年ぶり8回目の総合優勝。史上5校目大学駅伝3冠を達成しました。
レース展開とともに話題に上ったのが選手の足元を支えるランニングシューズです。今年の各ブランドのシューズ着用率はどのように変化したのでしょうか。こちらの記事では、Runtripお馴染みのシューズアドバイザー・藤原岳久さんとともに箱根駅伝2023のシューズ情勢を振り返っていきます。
藤原さんはブランドを渡り歩き、シューズ販売に携わって20年以上。47歳でマラソン自己ベスト2時間34分28秒を出した、走るシューズアドバイザーです。
ナイキシューズ着用率の動向
大森:毎年恒例になっていますが、箱根駅伝をシューズから振り返ってみたいと思います。2021年にナイキシューズ着用率が95.7%という衝撃的な結果が出てから、近年では話題になりました。2022年は73.3%に減少いて、他ブランドのシューズを着用する選手が少し増えました。
藤原:2022年はナイキシューズの着用率が73.3%に下がりましたが、薄底シューズの時代でもこれほどのシェアを得たブランドはないでしょう。
大森:一番多いブランドでも当時は30%くらいでしょうか。
藤原:当時、アシックスとミズノを足して60%程度でしたから、70%台は圧倒的な数字。2023年はナイキが61.9%で、着用した選手は130人となりました。逆にアディダスが18.1%(38人)、アシックスが15.2%(32人)となりました。アディダスは10人、アシックスが8人増加しています。シューズの多様性が戻ってきたと言えます。
大森:シューズの種類が増えましたよね。
藤原:例えば、ナイキは『ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2』はスタンダード化しました。全シューズの中で4割強、ナイキの中でも7割弱を占めています。スタンダードになっていて、今後圧倒的に少なくなることはないと思います。面白いことにアルファフライは『エア ズーム アルファフライ ネクスト% 2』と『エア ズーム アルファフライ ネクスト% 1』に分かれました。中央大2区・吉居大和選手、早稲田大3区・井川選手、青山学院大9区・岸本選手も初代アルファフライを着用して、区間賞を取った選手を見ても多くが初代アルファフライを履いていました。
大森:履き慣れているということもあるかもしれませんね。
藤原:もう一つはジンクスでしょう。吉居選手は2022年シーズン、調子が良くないケースが続いていたので、最後に『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』にかけたのでしょう。素晴らしい走りでしたね。
大森:2区のエース区間で区間賞を獲る素晴らしい走りでした。
藤原:そして、東洋大1区・児玉選手と早稲田大5区・伊藤選手はナイキ『ズームX ストリークフライ』を着用していました。中厚底シューズと呼ばれるカテゴリーは上りに合っているので、考えた上での選択ですね。今回はナイキだけでも4種類ありました。
大森:単純にナイキの着用率でしか見ていませんが、その中の割合も面白くなってきているということですよね。
藤原:アルファフライは1と2で分かれているという点も使いやすさが変わるのだと感じます。
アディダス・アシックスの着用率が増加
アディダス|18.1%(38人)
藤原:シェアを戻したアディダスは『ADIZERO ADIOS PRO 3』が圧倒的でしたが、『ADIZERO TAKUMI SEN 9』を着用した選手も6人いました。クッションがある程度あって、接地感も感じられるシューズなので駅伝にはおすすめです。
大森:自分のフィーリングに合うシューズを考えて履いている印象を受けます。
藤原:法政大3区・川上選手が『ADIOS PRO 2』を着用していました。多くの選手がADIOS PRO 3を履く中で、個性を感じますよね。世界のトップ選手でも『ADIOS PRO 2』を着用している選手がいます。
大森:ADIOS PRO 3とPRO 2はだいぶ履き心地が違いますよね。
藤原:ADIOS PRO 3の方は安定感が高く、使いやすいです。ADIOS PRO 2はクッション性が非常にあるで、クッションを使いこなせるランナーには履きやすいのでしょう。
アシックス|15.2%(32人)
藤原:アシックスも『METASPEED SKY』と『METASPEED SKY+』を履いたランナーが多かったです。SKYとSKY+ともに新色のカラーリングが同じだったため詳しくはカウントしていませんが、おそらくこの2モデルを選手たちは選び分けているでしょう。
大森:アシックスもシェアが15%超と昨年から伸びていますが、その中でも複数のモデルが履かれたというのがポイントですよね。
藤原:やはり、ブランドだけでなくシューズのモデルという観点でも多様化していますね。
多くのブランドが躍進した箱根駅伝2023
藤原:驚かれた方が多かったかもしれませんが、プーマのシューズは2023年7人が着用。往路は東京国際大2区・丹所選手をはじめ、各区間で1人は履いていました。
大森:プーマシューズの着用7人は大躍進と言っていいですよね。プロダクトそのものが、他ブランドと比べて遜色ないですよね。
藤原:プーマは『ディヴィエイト ニトロ エリート 2』と『FAST-R NITRO ELITE』が履かれ、学生ランナーはニトロ エリート 2を好む選手が多かったです。FAST-Rは形からいっても特徴的ですし、私も10kmで履きましたが、とてもクッションのバウンドが良かったですね。
大森:20kmという距離では、こういうシューズは履きやすいですね。
藤原:10区を走った関東学生連合(慶応大)・貝川選手がアンダーアーマー、帝京大1区・小野選手がニューバランスのシューズを履いていました。帝京大の選手はユニフォームがアシックスですので、アシックスの着用率が高く、ナイキ『ヴェイパーフライ』は1人のみ。シューズの多様性という意味では、帝京大学は面白いと思います。
また、創価大4区・嶋津選手が今回もミズノを履いていました。
箱根駅伝2023シューズ事情を振り返る
藤原:箱根駅伝に出る多くの選手たちはトップ層の選手を見ていますので、『ヴェイパーフライ』『ADIOS PRO 3』『METASPEED SKY』などを基準に選んでいたと思います。
大森:SNSも使っているので、自然に情報が入ってきますよね。
藤原:東京国際大・丹所選手のようなランナーがプーマのシューズを履くと注目を集めますよね。プーマの躍進はそういった要因が少なくともあったと思います。
大森:シューズについてのリテラシーも選手の中では上がってきています。どれを選んでも結果が出るプロダクトが出てきたのは、ランナーにとってもいいニュースですね。
藤原:沿道で選手の走りを見て感じましたが、『ヴェイパーフライ』が登場した頃はエリート選手でも市民ランナーと同じように足音が「パカパカ」とうまく使えていない音がしました。今やそうした足音で走る選手は誰もいません。厚底シューズに適応してきているのでしょうね。
大森:変わってきているんですね。
藤原:大森さんが言うように、シューズも性能が上がってきています。これから、さらに多様化してくるのでしょうね。
ここまでシューズアドバイザー・藤原さんによるシューズから振り返る箱根駅伝2023をお届けしました。着用するシューズが多様化した2023年の箱根駅伝ですが、今後登場するレーシングシューズからも目が離せません。
シューズ詳細情報
1.ナイキ|ズームX アルファフライ ネクスト%
・価格:¥33,000(税込)
2.ナイキ|ズームXアルファフライ ネクスト% 2
・価格:¥31,900(税込)
3.ナイキ|ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2
・価格:¥26,950(税込)
4.ナイキ|ズームX ストリークフライ
・価格:¥20,350(税込)
5.アディダス|ADIZERO ADIOS PRO 2
・価格:¥26,000(税込)
6.アディダス|ADIZERO ADIOS PRO 3
・価格:¥26,400(税込)
7.アディダス|ADIZERO TAKUMI SEN 9
・価格:¥20,900(税込)
8.アシックス|METASPEED Sky
・価格:¥27,500(税込)
9.アシックス|METASPEED SKY+
・価格:¥27,500(税込)
10.プーマ|ディヴィエイト ニトロ エリート2
・価格:¥26,400(税込)
・商品ページ:メンズ/ ウィメンズ
11.プーマ|FAST-R NITRO ELITE
・価格:¥27,500(税込)
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藤原 岳久さん
F・Shokai 【藤原商会】代表
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
日本フットウエア技術協会理事 /JAFTスポーツシューフィッター / 元メーカー直営店店長,販売歴20年以上
ハーフマラソン:1時間9分52秒(1993)
フルマラソン:2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
藤原商会オフィシャルサイト