箱根駅伝2022のシューズ情勢を振り返る!ナイキシューズ着用率の変化は?
Jan 17, 2022 / SHOES
Feb 06, 2022 Updated
青山学院大学が圧倒的な強さを示し、総合優勝を飾った2022年の箱根駅伝。今回も多くの区間新記録が生まれ、選手の足元を支えるランニングシューズにも注目が集まりました。厚底レーシングシューズの登場以来ナイキのシューズが席巻してきましたが、2022年の箱根駅伝ではその状況に変化が起きたと言います。
こちらの記事では、Runtripお馴染みのシューズアドバイザー 藤原岳久さんとともに箱根駅伝2022のシューズ情勢を振り返っていきます。藤原さんはブランドを渡り歩き、シューズ販売に携わって20年以上。47歳でマラソン自己ベスト2時間34分28秒を出した、走るシューズアドバイザーです。
ナイキシューズ着用率の動向
大森:Runtripお馴染みのシューズアドバイザー 藤原岳久さんと箱根駅伝2022のシューズ情勢を振り返っていきます。藤原さんは箱根駅伝の出場選手たちが着用したシューズを集計したということですが、事前の予想と結果に変化はありましたか?
藤原:今シーズンの学生三大駅伝や国内の主要レースの状況から、過去2年間圧倒的な着用率を示していたナイキシューズの着用率が70〜80%に下がると予想していました。結果は見事に当たり同着用率が73.3%でした。
大森:ナイキシューズを着用した選手は210人中154名。過去2大会のナイキシューズ着用率を振り返ると、2020年大会で84.7%、2021年大会が95.7%と多くの選手が着用する状況でした。今シーズンは各ブランドから高性能な厚底レーシングシューズが登場したことから「2022年は70%ほどに落ち着くのではないか」という予想でしたね。
藤原:はい、その通りです。箱根駅伝の前に開催される出雲駅伝や全日本大学駅伝でも注目選手がナイキ以外のブランドのシューズを着用するケースが見られ、前回よりは分散すると考えていました。
着用率が各ブランドに分散した理由
シューズの選択肢が増えた箱根駅伝2022
藤原:今回シューズの着用率が分散したポイントが2つあります。1つはシューズの選択肢が増えたこと。ナイキ1強だった2020年大会では、ナイキの『ヴェイパーフライ』一択という状況でした。当時、他ブランドは新たなシューズのスタイルである『厚底レーシングシューズ』に開発が追いつかなかった印象がありました。
この状況に拍車をかけたのが2020年3月に登場した『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』。2021年大会は『アルファフライ』か『ヴェイパーフライ』を着用する選手が増え、さらに『ナイキ一択』の状況が作られていきました。2022年大会も依然としてナイキがシェアの大半を占めていますが、内訳を見るとシューズの選択肢が増えたと言えます。
大森:たしかに他ブランドのシューズを履く選手も見られました。各ブランドの着用率はナイキ73.3%(154名)、アディダス13.3%(28名)、アシックス11.4%(24名)、ミズノ1%(2名)、ニューバランス0.5%(1名)、プーマ0.5%(1名)という結果(藤原さん集計)です。ナイキが95.7%を占めていた前回大会と比べると、数ブランドに分散しました。
藤原:そうですね。特に前回大会では、アシックスのシューズを着用した選手がいませんでしたが、今回は24名の選手が着用。『METASPEED Sky』、『METASPEED Edge』の登場が大きく影響しました。
ライバルと異なるシューズを履く選手が増加
藤原:着用率が分散したもう1つの要因は「ライバルに勝ちたい」という選手たちの心理状況が作用したと思います。前回大会までは「他の選手に後れを取りたくない」という考えからナイキのシューズを着用する選手が多くいたはず。
一方、今回大会は選択肢の幅が広がり各選手の足に適したシューズを選べる状況になりました。「ライバル選手と同じシューズでは勝てない」と判断した選手が一定数いたことで着用シューズが分散したと考えられます。たとえば、アディダス『ADIZERO ADIOS PRO 2』や登場したばかりの『ADIZERO TAKUMI SEN 8』を着用する選手もいました。
大森:『ADIZERO TAKUMI SEN 8』は短い距離に適性があり接地感を感じられるシューズ。たしかに、こちらの方が実力を発揮できる選手もいますよね。
藤原:そうですね。『実戦で使用できるシューズが増えた状況』と『実力を発揮しやすいシューズを着用した選手』という2つの要因があったからこそ分散したと言えます。
大森:選手たちが自分の足に合うシューズを探し出した結果ということですね。
大森:そのほか、藤原さんが見たなかで注目したシューズはありましたか?
藤原:4区で区間賞を獲得した嶋津選手(創価大)はミズノのプロトタイプシューズを着用していました。おそらく『WAVE DUEL NEO』のようなシューズです。4年連続で3区を走った遠藤選手(帝京大)もミズノのプロトタイプシューズでしたが、嶋津選手とは異なる厚底モデルだと思います。
5区で区間賞の走りを見せた細谷選手(帝京大)の着用シューズは『ADIZERO TAKUMI SEN 8』。上り続けるコースでは、ある程度接地感があるシューズの方が走りやすいと思います。
大森:たしかに、こうしたシューズの方が上りの走り方にはフィットしそうですよね。
藤原:そうですね。一方、区間順位が3位以内だった選手の着用シューズは引き続き『ヴェイパーフライ』『アルファフライ』が多いという傾向。来年以降、上位の選手たちのシューズがどう変化していくか注目していきたいです。
箱根駅伝におけるシューズ情勢の展望
藤原:やはり、各選手が足に合ったシューズを選べる状況が自然だと思います。話題が広がりますが、箱根駅伝以外の年末年始に開催された駅伝を見ると、さらにシューズの選択肢が広がっている印象を受けました。
大森:そうなんですね! 箱根駅伝でシューズ情勢が変化しているなか、さらに変化が起きているんですね。
藤原:はい。昨年末に開催された富士山女子駅伝(大学女子駅伝)を見たところ、箱根駅伝で着用選手がいなかった『サッカニー』や『ブルックス』、『ホカオネオネ』のレーシングシューズを着用する選手がいました。「このシューズでなくてはならない」という固定概念ではなく、各シューズの良さを感じて使っている印象を受けました。昨年12月26日に開催された全国高校駅伝では、12月に入ってから発売された『ADIZERO TAKUMI SEN 8』を着用する選手がいたほどです。
大森:発売から間もない時期にレースで着用することは、よほど感覚が合ったということでしょうね。
藤原:そうだと思います。そうした選択をする高校生が大学へ進学して、今後の箱根駅伝のシューズ情勢もさらに変化していくと思います。現在、多くのブランドから展開される厚底レーシングシューズはフルマラソン向けに開発されたものがほとんど。ハーフマラソン相当の距離である箱根駅伝では、状況が変化していくのではないでしょうか。
大森:なるほど。選手たちが着用するシューズの変化を注目していきたいですね。2022年もどのようなシューズが登場するか楽しみです。
ご紹介したシューズの詳細情報
ナイキ|ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2
・価格:¥26,950(税込)
ナイキ|エア ズーム アルファフライ ネクスト%
・価格:¥33,000(税込)
アディダス|ADIZERO ADIOS PRO 2
・価格:¥26,000(税込)
アディダス|ADIZERO TAKUMI SEN 8
・価格:¥20,000(税込)
アシックス|METASPEED Sky
・価格:¥ 27,500 (税込)
ミズノ|WAVE DUEL NEO
・価格:¥25,300(税込)
ニューバランス|FuelCell RC Elite v2
・価格:¥28,600(税込)
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藤原 岳久さん
F・Shokai 【藤原商会】代表
ランニングシューズフィッティングアドバイザー
日本フットウエア技術協会理事 /JAFTスポーツシューフィッター / 元メーカー直営店店長,販売歴20年以上
ハーフマラソン:1時間9分52秒(1993)
フルマラソン:2時間34分28秒(2018年別府大分毎日マラソン)
藤原商会オフィシャルサイト