2016年8月2日

日本人選手はオリンピックを楽しめているか。為末大さんが感じた「悲壮感を背負わない」海外選手たち

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もう間もなく開幕するリオオリンピック。日本人選手も続々とブラジル入りし、本番に向けて調整を進めています。どんな大会になるのか、今から待ち遠しいですよね。筆者は、眠れない日々を覚悟しています。

そんな中、米専門誌『スポーツ・イラストレーテッド』では、今大会のメダル数予想を実施。日本は、レスリング女子でともに五輪4連覇の懸かる53キロ級・吉田沙保里、58キロ級・伊調馨らが金メダルに近い存在とされており、合計で13個の金メダルを獲得すると見られています。

他国を見てみると、米国と中国が45個ずつ金メダルを獲ると予想。総メダル数ではアメリカが118個になるとされています。

日本の銀メダルは7個、銅メダルは14個で、計34個のメダルを獲得するものの、最多のメダル数だった前回大会よりは4個少ない予想。実際にはいくつものメダルを獲得するのでしょうか。

そんな日本のメダリストたちをふり返ってみると、数々の名言が思い出されます。これまで残された「名言」といえば、北島康介さんの「チョー気持ちいい」「なんも言えねぇ」や、高橋尚子さんの「すごく楽しい42kmでした」、岩崎恭子さんの「今まで生きてきた中で、一番幸せです」、谷亮子さんの「田村で金、谷で金」など。どれも改めて見ると、あの時の感動が蘇ります。

もちろん、参加するすべての選手が良い結果を残し、こういった記憶に残る言葉を残すことができれば、それほど幸せなことはありません。しかし、実際にはメダルを獲得できるのはほんの一部の選手のみ。そして、多くの選手が自己最高のパフォーマンスを発揮できずに大会を去ってしまうのです。光と影がはっきりとしてしまう大会とも言えますね。

しかし、日本の場合は少し「影」の部分が濃いような気がします。この仕組みについて、疑問を呈しているのが、元ハードル日本代表選手の為末大さんです。

為末さん自身の経験によると、オリンピックのプレッシャーというものは、想像以上にきついもの。どんなにマイペースでレースに挑もうとしても、国を挙げて応援してもらっているというプレッシャーが重たくのしかかったそうです。「良い結果を出さなければ“ならない”」「必ず勝たなければ“ならない”」という重みが、為末さんをおそいました。

もちろんプレッシャーが良い影響を与えることがあるのですが、過度のプレッシャーは選手に悪影響を及ぼすことも。日本でのプレッシャーは、海外と比べてかなり厳しかったと為末さんはふり返ります。

何せ、自分のペースを取り戻そうと、「オリンピックを楽しんできます」とは簡単に言えない空気が蔓延しているのですから。実際に「楽しむ」と言葉にした選手に、バッシングが集まったこともありました。

試合前のコメントは、まるで「決意表明」。選手は口々に「結果を残す」「必ず勝つ」などと言わざるを得ず、自分を追い込むことに。そして、試合に負けた時、結果が出なかった時、「申し訳なかった」と謝罪するのです。

この状況はちょっと危ないのではないか。為末さんは心配しています。

「負けた選手だって、子どもの頃は楽しくて楽しくてしようがなかった時代があったはずだ。負けた時は、そういう原点に立ち戻ったほうが、今後の結果はいいものにつながるはずだ。それなのに、真剣に反省をしたり謝罪したりするタイプの選手には、次にスランプが口を開けて待っていたりする」と、自著『「遊ぶ」が勝ち』で語っています。

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確かに謝罪のシーンは、日本人選手によく見られる光景です。敗退が決まった瞬間に泣き崩れて、反省の弁を口にする。マスコミもその絵を待っていたかのように抑え、メディアを通して流す。選手は本当にそこまで国民に謝罪する必要があるのでしょうか。

為末さんが選手村で見た光景に驚きがあったと振り返っています。日本選手団を離れて外国人選手を見ていると、日本とは違った雰囲気やノリがあったとのこと。

「海外の選手たちには、国を背負っているという悲壮感が少なかった。むしろ『楽しんでやっている』ように見えた。その姿は『自分らしくそのまま行きゃいいよ』というノリに近い。もし、本当に苦しくなった時は、天を仰いで祈るだけ。神に自分を預けるような、そんな人もいた。なんともシンプルなのだ」(同書より)

当時の日本の選手団にとっては考えられない光景でもあります。「国を背負わない」、海外にはそんな雰囲気を漂わす選手がゴロゴロいるのです。そして、いきいきと楽しく競技に挑んでいる選手が、逆によい記録を出すことも。

国を背負う悲壮感のない海外選手が結果を残す。その姿を間近でみた為末さんは、本来あるべき姿を知ったようです。確かに、もともと国を背負うことなんてできませんよね。

さあ、リオオリンピック開幕はもう目の前。為末さんが参加していた頃よりも日本人選手は世界に近づいたのでしょうか。試合前後の表情やコメントも注意深く見てみたいですね。

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