「箱根駅伝の選手の脳内には○○が分泌」サブスリー精神科医が分析【ランニング ×メンタル】

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『スポーツ精神科医』として、メンタルの専門家として、アスリートのメンタルケアに取り組んでいる精神科医師の岡本浩之です。

学生時代は陸上競技、中でも中長距離に取り組んでいました。当時はメンタルのコントロールがうまく出来ず、結果を残せませんでしたが、精神科医になり、自分のメンタル強化に向き合ってコントロールする方法を身につけました。その経験を活かして、ランナーの皆さんがメンタルの不調に悩むことなく、ランニングを楽しめるようにサポートしたいと活動しています。

フルマラソンを2時間48分で走る精神科医が『メンタル』について、連載でお伝えしています。

前回は、『ランニングを継続するコツ』をお伝えしました。

お正月に箱根駅伝を観て、感動したという方は多いのではないでしょうか。

仲間のため、チームのため、支えてくれる人のために走り、死力を尽くして、タスキを次の走者に渡す姿は感動を呼びました。普段は陸上競技を観ないけれど、箱根駅伝だけはテレビや沿道で観戦しているという方も多いでしょう。

そこで、今回は選手の脳内の働きのお話をします。

箱根駅伝選手のメンタル

私は小学1年生の頃、駅伝中継を観て陸上選手に強く憧れ、本格的に走り出しました。

今回は、箱根駅伝で走り出す前の選手の様子を脳内物質の働きと共に考えてみましょう。実際の脳内はそんなに単純ではないですし、脳内物質だけで走りが決まるなんてことはないのですが、メンタルに関係する主な脳内物質のみに焦点を当ててみます。

テレビ中継される駅伝に出るということは、当然ながら、特別な感情が生まれます。

選手に選ばれて走り出す時点で、あまりの注目の大きさにとてつもないプレッシャーを感じて、逃げ出したくなった人もいるかもしれません。直前の練習で調子が上がらず、「ブレーキしたらどうしよう?」「タスキを途切れさせるようなことがあったらどうしよう?」と強い不安を抱えていた人もいるかもしれません。
そういうときの脳内では、ノルアドレナリンが多く分泌されています。

ノルアドレナリンは、短期間で爆発的な集中力を発揮するのに大きな役割を果たします。緊張や不安があった方が好結果につながると言われるのは、ノルアドレナリンの働きが関係しています。しかし、過剰なノルアドレナリン分泌は不安、緊張、恐怖をより高め、力を発揮するどころか混乱状態にさえ陥ります。

走り出す前、チームとして、個人としての目標を共有し、それを実現できるものとして強く意識付けている、そういう選手の脳内ではドーパミンが分泌され、目標達成に向けて、気力のみなぎった状態になっています。しかし、ドーパミンも過剰になると、興奮状態で冷静な走りが出来なくなります。

なかには、箱根駅伝であろうと全く緊張せず、リラックスしてタスキを待つ選手もいます。そのような選手の脳内では、セロトニンが分泌されています。セロトニンは心の安定をもたらし、またドーパミンやノルアドレナリンが過剰に働かないように抑えてくれます。安定した心で走り出すと、自分の走りを見失いにくいのです。ドーパミン、ノルアドレナリンを出しつつ、セロトニンもしっかり利かせている。そんな状態が良いですね。

また、レースの前には気合を入れて大きな声を出して、自分を奮い立たせることがあります。このとき、アドレナリンが多く分泌されます。アドレナリンが分泌されると、筋力と集中力がアップして、力を発揮できます。ただ、アドレナリンの効果は長く続かないので、走る前にあまり奮い立たせすぎると、走り出すころには疲れ切ってしまいます。

箱根駅伝では、スタート前の選手の様子を映して、談話を伝えてくれますね。その情報から「あの選手の脳内では、今ドーパミンも出ているけど、セロトニンでコントロール出来ていそうだな」などと推測してみるのも、楽しみ方のひとつかもしれません。

中学時代の私は「緊張で気持ち悪くなってきた。吐いたらどうしよう」「今日もブレーキしそう」などと考えてしまい、顔面蒼白で食事も喉を通りませんでした……。そんな私の脳内では、ノルアドレナリンが過剰になり、全くコントロール出来ていなかったのです。

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