伸びない記録に苛立つ時の解決法。サブスリー精神科医が伝授【ランニング ×メンタル】

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『スポーツ精神科医』として、メンタルの専門家として、アスリートのメンタルケアに取り組んでいる精神科医師の岡本浩之です。

学生時代は陸上競技、中でも中長距離に取り組んでいました。当時はメンタルのコントロールがうまく出来ず、結果を残すことはできませんでしたが、精神科医になり、自分のメンタル強化に向き合ってコントロールする方法を身につけました。その経験を活かして、ランナーの皆さんがメンタルの不調に悩むことなく走ることを楽しめるようにサポートしたいと考え、活動しています。

フルマラソンを2時間48分で走る精神科医が『メンタル』について、連載でお伝えしています。

前回は、『ランニングを継続するコツ』をお伝えしました。

モチベーションを維持するコツ

ランニングを続けていると、「頑張っているのに、思うように記録が伸びない」「周りの仲間がどんどん記録更新をしているのに、自分は離されてしまうばかり……」ということがありませんか。

仲間が良い記録を出すとうれしい反面、同じように伸びない自分に苛立ちや焦りを感じて、やる気を失ったり、苛立ちを他人にぶつけてしまい人間関係が壊れてしまったりすることもあるかもしれません。せっかくランニングというメンタルに良いことをしているのに、これではランニングのせいでメンタルが悪化してしまいますよね。

こういうとき、脳内ではストレスホルモンが多く出すぎて、脳の神経細胞が傷つき、神経細胞の働きが悪くなっているのです。ドーパミンの働きが悪くなると意欲が低下し、セロトニンの働きが悪くなって、焦りやいらいらが強くなります。

モチベーションは “走る理由”

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このようなときには、『なぜ走り出したのか』をじっくり振り返る時間を作ってみましょう。1日でも1週間でも1か月でもいいので、じっくりと考えてみてください。ただし、期間を決めないと、余計に走る意味を見失ってしまいます。とりあえずで良いので、前もって振り返りの期間を決めておきましょう。

「速く走れることを褒められてうれしくて、もっと速くなりたいと思ったから」「健康診断で引っかかったから」「体重が増えすぎてマズイと思ったから、痩せるため」という積極的な理由から、「走る友達に仕方なく付き合って」「ほかに出来る運動がなくて」という消極的な理由など様々でしょう。でも、「走りたい」と思う理由が何かあるからこそ、続いているのだと思います。

ランニングを始めた原点を思い出すことで、ランニングを続けることの意味を再認識してドーパミンが出やすくなります。結果が出ないことや周囲のランナーからの遅れに焦る気持ちも落ち着き、セロトニンがしっかり機能しやすくなります。

じっくり振り返る期間中、余裕があれば軽いランニングでもほかのスポーツでも良いので、軽く体を動かしておきましょう。ストレスホルモンがより早く消費され、脳の神経細胞の肥料になるBDNF(脳由来栄養因子)というものが多く作られて、脳の神経細胞の回復を助けてくれます。

体を動かす気持ちになれないのなら、運動から離れてみることも大切です。決して、サボっている、逃げているのではありません。大切な回復期間です。離れる期間を決めて、その間にじっくり脳の神経細胞の機能を回復させましょう。

学生時代、一緒に練習に励んでいる仲間が私よりどんどん速くなり、「やったね! すごい! 」と思う一方で、「何で自分は速くならないんだ? 」と焦っていました。少しうまくいかないことがあると、自分に苛立ち、自分を責めていました。その結果、心身の不調に陥り、走ることから1年近く遠ざかりました。長く遠ざかった結果、体力はかなり低下してしまいました。しかし、『走ることを通じて、自分が何をしたいのか』を再確認し、走ることへの意欲が回復。再び、復帰することが出来ました。体力の低下にも焦らず、現実的な目標を設定しながら、練習することが出来るようになったのです。

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