女子で16年ぶり世界新!ブリジット・コスゲイ「サブテン可能」

2019年10月13日に開催されたシカゴマラソンの女子レースで、ブリジット・コスゲイ(ケニア)が世界新記録2時間14分04秒で優勝した。コスゲイは2003年のロンドンマラソンでポーラ・ラドクリフ(イギリス)が出した2時間15分25秒の記録を16年ぶりに更新した。

ラドクリフのこれまでの世界記録を1分21秒更新したコスゲイは、レース後に「マラソンのサブテンは女子選手にとって可能」と話した。これまでの女子ハーフマラソンにおいて、サブ65分を達成しているのはコスゲイを含めて4人しかいない(コスゲイのハーフ64分28秒は非公認コースでの記録)。

ラドクリフの記録を16年ぶりに更新

10月12日のキプチョゲの『1時間59分40秒』に酔いしれているうちに、翌日の10月13日にシカゴマラソンのレースが始まっていた。スタート時の気温が5℃と、前日のウィーンの9℃に比べれば寒く、例年のシカゴマラソンと比較してもコンディションが良く、好記録ムードがあった。

合計41名のペーサーが用意され、常に7名のペーサーに囲まれてマラソンを走ったキプチョゲ。一方、コスゲイは2名“だけ”の男子ペーサーに引っ張られて(女子レースの男子ペーサーによる記録は“公認”記録になる)最初の5kmを15分28秒(2時間10分31秒ペース)で通過した。

これは女子レースの話である。

「女子で16年ぶり世界新!ブリジット・コスゲイ「サブテン可能」」の画像
©︎2019 Yusuke Inoue

コスゲイは5〜10kmの5kmラップで32秒減速したが、それからは5kmごとに安定したラップを刻み、中間点を66分59秒で通過。その時点でコスゲイは16年間も破られていなかったラドクリフの世界記録を十分に視野に入れていた。

ラドクリフが世界記録を出した2003年のロンドンマラソンでは男子ペーサーに引っ張られ、中間点を68分02秒で通過している(後半は67分23秒のネガティブラップ)。そして、今年のシカゴマラソンまで世界歴代2位の記録だった、メアリー・ケイタニー(ケニア)の2時間17分01秒のレースでは、前半は66分54秒だった。

中間点を過ぎてからもコスゲイの勢いは止まることなく、むしろ前日のキプチョゲのようにペースアップし、連続して15分台のラップを刻んでいった。結果的にコスゲイはキプチョゲのようにその勢いを維持し、2時間14分04秒の世界新記録でシカゴマラソン2連覇を達成。それまでの自己記録を4分16秒も縮めた。

【コスゲイの世界記録】

距離 通過タイム ラップタイム
5km 15:28
10km 31:28 (16:00)
15km 47:26 (15:58)
20km 1:03:27 (16:01)
25km 1:19:33 (16:06)
30km 1:35:18 (15:45)
35km 1:51:14 (15:57)
40km 2:07:11 (15:58)
42.195km 2:14:04 (6:53)
(前半66:59 – 後半67:05)平均 3:10/km

 

【女子マラソン世界歴代3傑】
1. ブリジット・コスゲイ(ケニア)2:14:04, 2019年
2. ポーラ・ラドクリフ(イギリス)2:15:25, 2003年
3. メアリー・ケイタニー(ケニア)2:17:01, 2017年

ラドクリフの2時間15分25秒の世界記録は、陸上競技全体でみても記録更新が難しい記録の1つであった。キプチョゲは2018年のベルリンマラソンで、それまでのデニス・キメットの世界記録を5年ぶりに“1分18秒”更新した。そして、コスゲイはラドクリフの記録を16年ぶりに“1分21秒”更新した。

これはある意味、キプチョゲ以上のインパクトであるともいえる。

ラドクリフ(右)とフィニッシュ後のコスゲイ(左)

コスゲイは今年4月のロンドンマラソンで優勝(2時間18分20秒, 前半71分38秒 – 後半66分42秒)。このレースの後半のハーフは、これまでの女子マラソンの歴史上で1番速い記録だった。さらに彼女は、9月のグレートノースラン(片道の非公認コース)でも64分28秒という、ハーフマラソンの歴代最高パフォーマンス(参考記録)で優勝。

「女子で16年ぶり世界新!ブリジット・コスゲイ「サブテン可能」」の画像
©︎2019 Yusuke Inoue

2019年に大ブレイクを果たしたコスゲイは、今日のレースを含めると昨年のシカゴマラソン優勝から公式レース(5kmロード、10kmロード、ハーフ、マラソン)で9連勝となった。

そして、彼女が今回のレースで履いていたシューズはやはり、 “ヴェイパーフライ” であった。2017年にヴェイパーフライが市場にリリースされてからというもの、それまでの男子マラソン世界記録(2時間02分57秒)のタイムを4名が上回り(キプチョゲ、ベケレ、レゲセ、ゲレメウ)、ハーフマラソンではジョフリー・カムウォロルが58分01秒で世界新記録を樹立した。

そして今回、コスゲイがラドクリフの世界記録を1分21秒更新。これらの結果は、ワールドマラソンメジャーズの表彰台を独占しているというナイキの広告以上に、ヴェイパーフライシリーズの機能性の高さを物語る結果といえるかもしれない。

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