セドナに行くつもりがフラッグスタッフを走っていた話。アリゾナ州でのラントリップ
Jan 31, 2019 / COLUMN
Jan 31, 2019 Updated
フラッグスタッフの町に入り、車を走らせているとすぐにトレイルの入り口が目に入った。
“Sandy Seep Trail” と看板にあった。ぐるっと回っても5キロぐらいしかないみたいだし、有名なトレイルではないだろう。地元の人が手軽に楽しむための散歩道、という感じがする。日曜日の昼間にもかかわらず、駐車場には車が2台しか停まっていなかった。
トレイルを走り始めてみると、やはり酸素は薄く、呼吸が苦しい。意識してスピードを落とす。走るというより歩くようなペースだ。
遠くの山を背景にマツ林や草原を走るルートで、足元は柔らかい土で走りやすい。緩やかなアップダウンと風景の変化があって退屈しない。
11月だったのだが、長袖のTシャツ1枚で充分なくらい暖かった。もっともスキー場が近くにあるぐらいで、冬はとても寒くなる土地なのだそうだから、単にその日のぼくがついていたのだろう。
気持ちの良いランだった。絶景、というほどの風景ではなかった。圧倒的だったのは静けさだ。1時間ほど走って、人とすれ違ったのは3組だけ。聞こえるのは風の音だけ。空はどこまでも青く、空気は澄んでいた。よく整備されたトレイル以外、人工的で余分なものは何もないけれど、これ以外に何か欲しいものがあるかと問われても思いつかない。多分、何もつけ足さない方が良いのだと思う。
同じトレイルを走ったとしても、高地トレーニングに来るアスリートはこんなのんびりした印象は抱かないだろう。ぼくだってもう少しペースを上げて走っていたら、薄い酸素に苦しんで景色を楽しむ余裕などはなかったはずだ。あくまでこの日のぼくにとってはということだけど、フラッグスタッフは調和と静けさの土地だった。
最初に考えていたものとはだいぶ違ってしまったが、今回の旅もランも悪くなかった。思わぬ拾い物をしたような気持ちで帰路に就いた。