毎年恒例、お正月の風物詩となっている『箱根駅伝』。この時期はテレビやラジオ・ネットでも箱根駅伝の情報が飛び交い、今や日本中が盛り上がる一大スポーツイベントになっています。
ですが、Runtrip Magazineを読まれている方の中には「ランニングは好きだけど、実は箱根駅伝って詳しくはわからない……」という人も意外に多いかもしれません。実際に、私のまわりにもそんなランナーさんも沢山います。一方で、仕事柄、日常的に元箱根駅伝ランナーとも接する機会も多いので、この機会に、「ランニング好き箱根初心者女子」を連れて、元箱根ランナーに『今さら聞けない箱根駅伝』について質問をしにいってきました。「実は今さら人に聞けなかった」というランナーの方も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
聞き役の元箱根ランナーは、ランニングクラブ『MATSU RUN』の代表を務める松垣省吾さんと、Runtrip代表の大森英一郎(共に法政大学)です。
『箱根駅伝』とは
まず、箱根駅伝の基本を整理しましょう。
駅伝は日本生まれ競技で、海外でも”EKIDEN”と呼ばれ親しまれています。新年には『ニューイヤー駅伝』と『箱根駅伝』が行われていますが、ニューイヤー駅伝は、毎年1月1日に行われる『実業団日本一』を決める駅伝です。箱根で活躍した選手も多数集まり非常にレベルが高く、日本代表選手の姿も。名実共に『駅伝日本一』を決める大会です。
一方、箱根駅伝は1月2日3日に行われる『関東の大学No.1』を決める大会です。1920年(大正9年)に早大・慶大・明大・現筑波大の4大学からスタートし、今年95回目を迎える歴史ある大会。ユニフォームに『W・M・H』など、アルファベット1文字で書かれている大学は、初期から参加していた伝統校で、『〇〇大学』と書かれている大学は新興校(といっても歴史ある学校も多数)なのだそう。
箱根駅伝出場校の基準は?
前年大会でシード権を獲得した10校と、予選会を通過した10校に加えて関東学生連合を加えた合計21チームが出場できます(記念大会などの場合、出場校数に変動あり)。そしてこの『予選会』に参加するにも条件があり、エントリー者全員が10000m 34分以内など、厳しい条件を満たした大学のみが参加を許されます。
箱根マラソン?!の練習内容
箱根駅伝とはを理解したところで、さっそく佑美さんの開口1番に出てきたのは……
まず、箱根は”マラソン”……ではなく、”駅伝”ですね!!
一同:爆笑
青学の特集をテレビで見たことがありますが、練習はめちゃくちゃハードそうでした。
一般的に、練習は朝と夕方の1日2回。1ヶ月600〜800kmくらい走ります。夏合宿がある月は800km〜1000kmという選手が多いんじゃないですかね。合宿だと朝、昼、夕方の1日3回。がっつり走りこみます。
山登りの適正はどうやって見極める?
勝負どころとも言われる山登りと山下りを走る選手はどんな選手なのでしょうか。
山登りはどんな人が選ばれるんですか?別メニューで練習してるんですか?
夏〜秋の合宿のとき、クロスカントリーなどアップダウンのある練習で監督が適性を見ていたりしますね。登り方が上手というよりも”最後まで出し切れる人”かな。気持ちの部分がすごく大きい。よく言われるのが、登りは寡黙に感情に波がなく、先を見て冷静に淡々と押していける人。下りはお祭り男。スピードがめちゃくちゃ出るので、度胸が必要。今までに出したことのないスピードで攻めていくんです。僕の平地での5000mのベストが13‘50“くらいですが、下りだと最初の5kmで13’40”くらい、次の5kmで13’30”くらいまで上がるんです。スピードを楽しめて思いっきり踏みこめる人が向いてます。
一度山の区間を走ったら、その次の年も固定なんですか?いつも同じ人が走っているイメージが……
もちろん変更されるケースも多いですが、やはり結果を出すと変えにくい一面がありますね。そういえば、松垣さん初めての箱根の時は急遽抜擢されましたよね?
そう。3日前に先輩が怪我して走れなくなってね。当時は補欠の中の補欠。補欠メンバーに登録されるときも監督から「お前は出ることないけど、勉強のために見ておけ」と。「でも出ることないから」って何度も念を押されてました(笑) そんな中急遽2日前に「お前、行けるか?」と言われて……「行けるかって!(笑)」って思ったのを覚えています
前年に結果を出してる先輩の代わりだったので、あの時チームメンバーも心配してましたね(笑)。『松垣大丈夫か?』って。でもまさかの区間2位、区間賞から5秒差。6区の法政記録でしたね!
当時、法政大学は長距離が60人程度で陸上部は全体で100人くらいだったかな。大学によってすごく多いところと、少数精鋭のところと分かれます。
定期的にあるタイムトライアルで一定のタイムで走れないと、辞めさせられてしまう大学もあったりします。それで、主務とかマネージャーに回る人もいる。入部の際にトライアルがある大学も。ルールは大学それぞれですね。
選手が感じる『箱根あるある』
箱根駅伝ランナーだから感じる『あるある秘話』。どんなことを感じ、考え走っているのでしょうか。
景色はほぼ見てないですね。あ、海がキレイ!とかいう感じではないです(笑)
不思議なのが、2重3重になっている大声援の中、不思議と家族や知り合いの声はピンポイントで聞こえるし、視界に入ってきたりしますね。
僕は知り合いの声は届いたけど、母親の声だけわからなかったです(笑)本当にすごい応援の数で、60分くらいずっと絶え間ない沿道応援を受けるので、走り終わるころには左耳だけキーンとしたり。
カメラとアナウンサーを乗せた中継車とかバイクは気にならないんですか?
あれ、バイクで横にピタっとつけられて並走されると選手はめちゃくちゃ意識してますよ(笑)隣で「〇位争いです!」って実況されていると、ちょっと表情作る選手も多いと思います(笑)
僕の場合は最初で最後の舞台で、箱根駅伝に出ることが目標だったので、無我夢中で夢の中を走ってるような感覚でしたね。バタバタしてたらあっと言う間に終わってしまいました。だからもう少し冷静に色々考えられたら良かったなと思ったりします(笑)もう一回走りたいですね。
そう、僕も実業団でも競技をしていろんな大会に出ましたが、箱根駅伝は『もう一回走りたい』と思える大会ですね。
オススメの応援ポイントは?
見どころは単純に1区かな。誰が見ても順位がすごくわかりやすいから、詳しくないという人にはおすすめ。
ただ朝早いんですよね(笑)好きな人はいいけど、そこまで興味ない人が1月2日に8時からテレビ見るって辛いところがありますね。でも、僕も見どころかつ勝負どころはまず1区だと思います。1区で流れに乗れないと本当にキツイので。ここにどのレベルの選手を起用して、どの位置で持ってくるかが大事。
2区でケニア人とか外人を持ってる大学は追いつけたりするんだけど、日本人だけで詰めていこうとするのは結構厳しかったりします。その差を唯一詰められるのは5区の山登り。この坂で気持ちが折れるか折れないかだけでも、ものすごい差になりますね。ここも見所。
レースの流れを前半にリセットできるのが2区。出遅れたチームは挽回する、1区でノッてきたチームはさらに差をつけたい、というところで2区がカギになってきますね。
復路だと、最終10区での『優勝争い』や『シード権争い』は、初心者の人にもわかりやすい見どころですね!
往路は繰り上げスタートなどの影響で走っているポジションと実際の順位が違ったりするけれど、最近はテレビで実際の順位を出してくれるのでシード権争いは分かりやすいですね。
初めてちゃんと見ようと思う人は、テレビとtwitterの両方で情報を取るのがオススメです!twitterで詳しい人が解説してくれたり、選手が意気込みをつぶやいてたりするので、テレビで映らない裏側を知れますね。テレビで大筋を掴みながら、#箱根駅伝 とかで探してみると結構面白い情報が入ってきたりしますよ。
最近は選手も走り終わったらすぐtweetするよね!
元気……(笑)選手はどういうことツイートするんですか?
ありがとうございました!っていう内容をつぶやく人もいるし、色々ですよね。サポートの選手たちが自分たちの学校の状況を解説していたり、選手同士でやりとりしていたり。
最近は各大学が公式アカウントを持っているんですよね。twitter運用の頑張り具合と箱根の順位が相関しているっていう話も聞いたことがあります。きちんとその辺りのマネジメントができるチームは、選手のマネジメントもできてるってことですかね。
一同:へえーーー!!なるほど……面白い!!
例えば青学の選手はコメントが上手な印象があります。走り終わってすぐに期待通りのコメントが出てきたりするので、それがすぐにリツイートされたり。僕たちの時代にはなかったけど、今は選手たち自身がメディアを持ってるので上手く活用していますね。
お二人だったら行きやすいのは都内ですよね。3日の9区か10区は選手がくるのがお昼頃だし、1番行きやすいんじゃないですかね。通過予想時刻30分前くらいには行ってないと人垣になっていて見えないので注意。あとは大きい駅を避けてあえて急行が止まらないような駅に行って、さらに数分歩くくらいだとかなり見やすいと思います。
都内は人垣がすごいよね。応援が何重にもなってる。ゴール付近は出遅れると混雑しすぎて見えないから、歓声で『ゴールしたらしい』って知るなんてことも。結局現地に行ってもスマホで優勝校を知るみたいな……(笑)
とにかく、現場に行ってみるのはすごくオススメです。本当にものすごい熱量なので興奮しますよね。ヘリやパトカーや運営車、テレビ局の中継車が遠くからやってきて、それと一緒に歓声が迫ってくる臨場感がハンパじゃないです。選手を見られるのはほんとに一瞬ですが。
前の選手まであと何分とか何十秒とか教えてくれると嬉しいですね。給水でもチームメイトが教えてくれますが、もっと頻繁に知れるとその差が開いているのか詰まっているのかがわかるので。
あとは大学名よりも名前で応援されると選手は嬉しいと思います!
佑美さん&涼子さん:なるほど〜!!
話を聞いてたら、箱根駅伝を見るのが楽しみになってきたという佑美さんと涼子さん。さあ、今年はどんなドラマが待っているのでしょうか。家族と団欒しながらテレビ観戦するも良し、少し脚を伸ばして現地の臨場感を味わってみるも良し。
これまであまり見る機会がなかった方は、この機会に楽しんでみては。
■箱根駅伝の裏側はこちら
■1日3日の大手町はどうなっていたのか
■昨年の箱根駅伝シューズまとめ
Runtrip Woman | Editor|
自然の中で身体を動かす「楽しさ」やスカっとする「爽快感」全身で感じる「心地良さ」がたまらなく好き。走ること、食べること、笑うこと=生きること。世界中をRuntripしながら巡るのが目標。