「自分らしく走るため」プロになった下門美春選手が孤独と戦う理由
Oct 20, 2018 / MOTIVATION
Apr 26, 2019 Updated
飛び込んだプロの世界は、予期していた通り、とてもシビアだった。レースで結果を出さなければ、金銭は得られず、スポンサーも獲得できない。
「実業団では、たとえケガで走れなくてもお給料がもらえました。遠征では、チケットや宿泊の手配まで全て、やってもらっていましたし。離れてみて、いかに手厚くサポートされていたか、よくわかりました」
コーチを持たない下門選手は、練習メニューも自分で考える。それは、自分しか知り得ないコンディションに応じたトレーニングができるメリットはあるものの、孤独との戦いだ。「気がついたら、3日間、誰とも話さなかったこともあります(苦笑)」。
スピード練習で、1000メートルを10本走る時は、妥協してもいいんだよ、という〝悪魔のささやき〟も聞こえてくる。
プロは自立していなければ、やっていけないところだ。
「フリーターだった2年間がなかったら、果たしてどうだったか……陸上を一度やめたことは、1つの挫折でしたが、それがあったから、自分の意志で走りたい、と思うようになり、競技の世界とは違うところに身を置いたことで、社会性も身に付いた気がします」
ちなみにフリーター時代に、下門選手がやっていた上野の駅ナカの呼び込みは、面接に合格したのが42人中で6人という、狭き門だった。業務に就いてからも「1か月に1度は、声の出し方から笑顔の作り方まで、厳しくチェックされました」。そう、プロであることを求められたのだ。
ただし、ストイック過ぎては息が詰まる。だから、プロランナーとなった今は、オンとオフはしっかり切り替える。下門選手は「日常生活の時と、練習の時では全く人格が変わります。ふだんはわりといい加減ですが(笑)、ランニングウェアになると、スイッチが入るんです」と言う。
ボストンマラソンで感じた歴史ある大会の魅力
プロとして結果を追い求める一方で、下門選手には、ただ泥臭く結果にこだわるだけでは……という思いもある。
「女性アスリートならではの輝き方、があるのではと思います。結果はもちろん大切ですが、それ一辺倒なら、男性と変わらない。女性は、美しくありたい、というのが許されるので、華やかな存在でいたいのです」
たとえば、取材日の下門選手は、さり気なく、流行りのブランドのパーカーに身を包んでいた。そして、ランニングウェアになっての撮影では、アスリートとしての存在感を醸し出しながらも、足元にはアクセントを。女性ならかわいいと感じるピンク色のブルックスのシューズを履き、その色に合ったスタンスのソックスをチョイスしていた。