「息子のおかげで“理想のキャンプ&ランを実現”」アウトドア派の放浪型ランナーが語る
Sep 03, 2018 / COLUMN
Sep 04, 2018 Updated
アメリカ・カリフォルニア州に住んで20年以上になる。ぼくの専門はストレングス&コンディショニングのコーチであるが、それとは別にフルマラソンなどを年に数回走る市民ランナーでもある。
ランナーにもいろいろな人がいるけれど、自分をあえて定義するなら、アウトドア派の放浪型ランナー。ジムの中より外を走るのが好きだ。決まったコースより見知らぬ土地を走るのが好きだ。街の中より自然の中を走る方が好きだ。
旅をするついでに走るのか、走るついでに旅をするのか。別にどちらでもいいことだけど、どちらかが欠けると、残った方まで味気ないものになってしまう。そんなタイプのランナーが、「あの時は本当に楽しかったなあ」といつまでも思えるような話を紹介したい。
テントと寝袋を担いで長い旅をしたことが何回かある。担ぐと言っても、文字通りバックパックで背負うこともあれば、バイクや自転車の荷台に乗せることもあった。野外で寝ることは楽ではないし、必ずしも楽しいことばかりでもない。よく寝れないことも、寒さに震えることも、雨に降り込められることも、蚊に刺されることもある。それでも、ホテルのベッドで寝る旅行とは違い、自分が今まさに普段と違うことをしている、と実感できるのがキャンプ旅行の醍醐味だ。ぼくにとっては、テントと寝袋は日常生活から離れることへの象徴のようなものだ。
キャンプにランを組み合わせてみたかった。毎朝自然の中を走り、日中は楽しく遊び、夜は焚火をして、お酒を飲んで、疲れ果てて気絶するように寝て、翌朝起きてまた走る。テレビもインターネットもない。携帯電話もつながらない。長ければ長い方がいい。きれいな場所であればもっといい。
そんな風にぼくが思い描いていた理想のキャンプ&ラン生活がこの夏に実現したのは息子のおかげだ。高校2年生の息子はクロスカントリー走部に所属していて、その部は毎年夏休み期間中に1週間のキャンプ合宿を行っている。その合宿に保護者のひとりとして参加させてもらったのだ。保護者は何人か来ていて、食料の買い出しや移動の際に車を運転するなどして、合宿の手伝いをする。そのような役割を担うのは勿論なのだが、それよりむしろ、ぼくの秘かな狙いは、キャンプとランを組み合わせた生活を送り、高校生ランナー達の練習についていってみることだった。当たり前のことではあるが、そんな保護者はぼく以外にはいない。皆、キャンプ場の近くにホテルを取って、キャンプ場に通ってくる。
合宿が行われるマンモス・レイクス(Mammoth Lakes)はサンフランシスコから東に400キロほどに位置する山岳リゾート地だ。近くにある世界的に有名なヨセミテ国立公園ほどの人気はないが、カリフォルニア州では屈指の規模を持つスキー場があることで知られている。レイクスという地名にあるように、大小いくつもの湖が点在している。夏はスキーゲレンデを活用したマウンテン・バイクやハイキング・登山が人気だが、それ以外にも多くの高校や大学の陸上部やクロスカントリー走部に合宿地として利用されている。
マンモス・レイクスは標高2400メートルと、ほぼ富士山の6合目付近の高地にある。格好の低酸素トレーニングになるうえ、サイクリング・ロードやトレイルがよく整備されていて、長距離を走る上で申し分ない環境なのだ。
ちなみにアメリカで高地トレーニングと言えば、コロラド州ボルダーやアリゾナ州フラッグスタッフが有名だが、マンモス・レイクスの標高はそれらより高い。