アジア3位のスカイランナー長田豪史が挑む世界一への道のり

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大自然の中を颯爽と駆け巡るトレイルランニング。ロードでは味わえない景色や爽快感を味わえることからランナーの間で人気を博していますが、同じ“山岳スポーツ”のカテゴリーである『スカイランニング』という競技をご存知でしょうか。より急峻な山岳地帯を走り、時には岩をよじ登ることもある過酷なスポーツです。

そんなスカイランニング界で、近年メキメキと力をつけているのが23歳の長田豪史選手。昨年は6月の日本選手権で準優勝に輝くと、12月のアジア選手権(ウルトラカテゴリー)では見事銅メダルを獲得しました。今年は世界シリーズ戦にも挑むという“若手のホープ”は、どのようにして“アジア3位”に昇りつめたのでしょうか。

大学4年の夏にトレイルランニングを始める

2017年の『日本トレイルランナー・オブ・ザ・イヤー』(DogsorCaravan.com主催)において一般投票5位にランクするなど、昨年大活躍だった長田豪史選手。トレイルランニングといえば30代、40代の選手が活躍している印象ですが、日本のトップランナーである上田瑠偉選手よりも1学年下という若さが持ち味です。

しかし、本格的にトレイルランニングを始めたのは大学4年の夏(2016年)とのこと。小学校6年生から大学2年生までは陸上に取り組んでいたそうですが、なぜトレランの道を選んだのでしょうか。

「元々市民ランナーの父親がトレランをやっていて、中学時代までは何度か連れてもらっていました。陸上は大学2年まで続けましたが、『慢性疲労症候群』の影響で競技を引退しました。その後はまともに走れるまでに1年以上かかりましたが、再び走れるようになってからはロードレースなどに参加し、その流れでトレイルレースの大会も探すようになりました。エントリーをするからには勝ちにいきたいので、そのためにはどうすればいいかを自然と考えていましたね」(長田選手)

そして初めて出場した「トレイルランナーズカップ新潟」でいきなり準優勝。大学卒業後も競技を続け、一般企業に勤めながらトレイルランニングやスカイランニングの大会で好成績を収めていきました。

「陸上をやっている頃から、走ること以外に運動神経や作戦が生かせる競技がしたいと思っていました。走るのは同じ動きの繰り返しですが、下りは素早く足を動かさなくてはいけないですし、その接地の衝撃を軽減する身体の使い方や、器用さが必要になってきます。トラックでは“走力”だけで勝敗が決まることがほとんどですが、トレイルでは“技術”で対応できる部分がある。すごく奥が深いし、自分の良いところが生かせる競技だと思いますね」

アジア選手権銅メダルまでの道のり

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▲昨年10月の『TRANS JEJU TRAIL RACE 50K』では強豪選手が多く集う中で優勝。存在感を強くアピールした 【大会オフィシャルより】

そんな長田選手が「これまでで1番思い出に残っているレース」として挙げたのが、昨年12月のスカイランニングアジア選手権。3位に入り銅メダルを獲得したレースですが、この大会には特別な想いがあったようです。

「自分にとって初めて出場した海外レースが、大学4年(2016年)の時に出場したアジア選手権。この時は学生生活の集大成として臨んで6位という結果だったのですが、その大会でアジアの頂点をつかみ取った松本大さん、銅メダルだった吉原稔さんが表彰台へ上がる姿を見て、『来年こそは自分が……』と誓ったんです」

そして2017年に入ってからは、6月のスカイランニング日本選手権で準優勝、その2週間後の韓国のトレイルレースで初めて海外での表彰台を経験し、10月には同じく韓国で開かれた『TRANS JEJU TRAIL RACE 50K』で見事初優勝。そのあたりから「優勝しなければおかしい」と自信が湧き起こり、絶好のタイミングで12月のアジア選手権を迎えることになりました。

「自分はスカイランニングの“ユース世代”(23歳以下)というカテゴリーに入るのですが、日本はユース世代への援助や育成にすごく力を入れているんです。トップランナーの人にアドバイスをもらう機会も多かったですし、環境には恵まれました。アジア選手権で表彰台に上がれたことで、お世話になった人たちに恩返しすることができたかな」

今年に入ってからもその勢いは止まらず、2月末にスペインのグラン・カナリア島で開催されたトレイルレース『TRANS GRAN CANARIA』(42㎞)で総合7位。世界的トップランナーが集うレースで、好成績を挙げました。

「ただ山を走るだけではレースに繋がらない」

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▲2018年2月には世界中から強豪ランナーが集まる『TRANS GRAN CANARIA』(42㎞)で総合7位に輝いた 【大会オフィシャルより】

そんな長田選手は、普段の練習から意識していることがあるそうです。それは「試合でどのような要素が必要になるかを考えて練習すること」。一体どういうことなのか、本人に説明してもらいました。

「一口にトレイルレースと言っても、走る山の形状やコース設計によって求められる能力は異なります。緩やかな上りが終始続くコースや、急坂が後半に待ち構えるコース、アップダウンが激しいコースなど、大会によってさまざまです。アップダウンが連続する大会では、下りで脚が破壊された状態でまた登らなくてはいけないので、ただ山で練習するだけではレースには繋がりません」

さらに優勝を狙う大会においては、どのようなレース展開になっても対応できるように、あらかじめ“予測”することも重要だと説きます。

「例えば先頭がかなりハイペースで進んだ場合、(順位を狙うのであれば)ある程度自分もついていかなくてはいけないですよね。そのためにハイペースで飛ばして後半粘り切る練習を入れるとか、同じ距離を走るだけでも、さまざまな展開を想定することが大事です。大雑把にレベルアップを図るだけではなくて、“自分が走るレースに必要な能力”を効率よく鍛えていくことが重要だと考えています」

トレイルランニング・スカイランニングに転向してわずか1年でアジア3位に昇りつめたのには、こうした緻密な戦略に基づいたトレーニングの賜物があったようです。

今年の目標は「世界シリーズ戦で5位以内に入ること」

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▲アジア3位にも満足することなく、その目線は“世界”へと向いている

最近はトレイルランナー向けに講習会を開いているという長田選手。7月に24歳を迎えるそうですが、最後に今シーズンの目標を聞いてみました。

「まず、今年はトレイルランニングとスカイランニングの両方で世界シリーズ戦に出場するので、最低でもトップ10はクリアしたいですね。今回の目標はどちらも5位以内に入ることですが、最終的な目標は世界戦で優勝すること。ただし、そのためにはそれなりのトレーニングを積むことが必要になるので、そのレースでどんな要素が必要なのか、どんなことが起こりうるか、目標達成に向かって厳しくやっていきます!」

今後は海外レースにも積極的に参戦する意向を示している“若きホープ”。まだまだ認知度が低いスカイランニングの普及のためにも、さらなる進化を遂げることでしょう。

プロフィール

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長田豪史(トレイル・スカイランナー)

1994年7月15日生まれ、東京都出身。小学6年生より陸上競技に取り組み、大学生の頃にトレイルランニングへ転向。初レースでいきなり準優勝し、注目を集めた。昨年は6月のスカイランニング日本選手権で準優勝に輝くと、10月の『TRANS JEJU TRAIL RACE 50K』(韓国)で見事初優勝。12月にはスカイランニングアジア選手権で銅メダルを手にした。最近はトレイルランナー向けに講習会を開くなど、23歳にして競技の普及にも精力を注いでいる。

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