よい睡眠をとるための理想的な1日とは?眠るときに意識したい3つの要素・ルーティンを解説
Sep 16, 2025 / COLUMN
Sep 16, 2025 Updated
「睡眠時間は確保しているのに、なんだか疲れが抜けない」「夜のトレーニング後になかなか寝つけない」。そんな悩みを抱えるランナーは多いのではないでしょうか。
睡眠とランニングパフォーマンスは密接に関係しており、質の高い睡眠は競技力向上に欠かせない要素。本稿では女性の健康課題解決に特化した『フェムテックプロジェクト』を担当する大槻さんの解説をもとに、女性と睡眠の関係についてお届けします。
睡眠の三要素「量・質・リズム」を理解しよう

多くの人が睡眠について考える際、まず思い浮かべるのは「睡眠時間」でしょう。しかし睡眠は時間の長さだけで評価できるものではありません。良質な睡眠を実現するためには「量・質・リズム」という3つの要素が複合的に関係しているのです。
「量」は文字通り睡眠時間の長さを指します。これは最も客観的に測定しやすい要素ですが「8時間も寝ているから大丈夫」と安心していても、実際には寝ている際の『中途覚醒』が多く、実質的な睡眠時間が短いといった「質」に関する問題を抱えた場合があります。また平日は5時間、休日は8時間といった、日によって睡眠時間がばらつくことも「リズム」としての問題となります。
「質」について正確に測定するには専門的な睡眠検査が必要となりますが、日常的には『睡眠休養感』を目安にできます。朝起きた時に「ぐっすり眠れた」「しっかり休めた」という感覚があるかどうかが、睡眠の質を判断する重要な指標となります。
「リズム」は起床時間と就寝時間の規則性を指します。平日と休日の睡眠スケジュールに差異が少なく、毎日一定の時刻に眠りにつき、一定の時刻に起床することが理想的です。リズムが整っていることで体内時計が正常に機能し、自然な眠気が生じやすくなります。
また適度な運動は睡眠の質を向上させる効果があり、特に有酸素運動は睡眠にとって非常に有効です。一方で良質な睡眠は運動パフォーマンスの向上に直結します。この相互作用を理解し、上手に活用することが重要なのです。ただ運動を行うタイミングが睡眠の質・リズムに悪影響を及ぼす場合もあります。
運動を行うタイミングが睡眠に与える影響
ランナーと密接に関わる睡眠は、運動を行う時間帯によってその日の睡眠への影響が大きく変わります。
午前中の運動は最も推奨されるタイミングです。朝の運動は体内時計の調整に効果的で、夜の入眠をスムーズにします。生体リズムの観点から見ると、朝の運動は夜の睡眠準備を早い段階から始めることにもつながります。
また夕方までの運動も比較的良好な効果をもたらします。夕方の運動は深部体温の調整に関連し、その後の体温下降により入眠が促進されます。
そんななか夜間の運動については注意が必要です。とくに激しい運動は交感神経を活性化させ、睡眠の妨げになる可能性があります。しかしジョギングやストレッチ、ヨガなどの軽めの運動は副交感神経を優位にし、リラックス効果をもたらすため、睡眠に良い影響を与えることもあります。
ランナーのなかには夜間の練習会に参加する人も少なくないはず。そうした場合は練習後の寝つきが悪くなる可能性を理解した上で、アロマやリラクゼーション法など、眠りやすい環境を整える工夫を取り入れることが大切です。
朝のルーティンで1日のリズムを整える
運動と睡眠の関係を理解した上で、実際にどのようなスケジュールで生活を送ることが必要なのかーー。理想的な睡眠習慣は朝から始まります。最も重要なのは起床時間を一定にすること。
睡眠は不足すると眠気が生じる仕組みになっており、食事と同様に「十分な睡眠がとれているときは眠たくない」「睡眠が足りていないときは眠たい」という自然な欲求が働きます。起床時間を一定にすることで、日中の活動量がおおよそ同じであれば、夜の眠気が規則的に訪れるようになります。
眠気の有無・就寝時間をコントロールするのは難しいですが、起床時間は意志の力で調整可能。まずは起床時間を固定し、逆算して自然な睡眠リズムを作り上げることが推奨されます。
また起床後はできるだけ早く、遅くとも午前中には太陽光を浴びることが重要です。人間の体内時計は実際には24時間よりも少し長く設定されており、自発的に24時間のリズムに合わせる調整が必要。太陽光は体内時計をリセットし、適切な生体リズムを維持する役割を果たします。
朝食ではトリプトファンを含む食品を摂取することが推奨されます。バナナ、乳製品、大豆製品などに含まれるトリプトファンは、夜間の睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を助けます。とくにバナナやヨーグルトはランナーにとって栄養面でも理想的な選択といえるでしょう。
夜のルーティンで質の高い睡眠への準備を
夜のルーティンで最も重要なのは照明の調整です。日本の家庭は海外と比べて明るすぎると指摘される場合が多く、夜間の明るい照明は覚醒を促進してしまいます。就寝前には暖色系の照明に切り替え、リラックスできる環境を整えましょう。
夕食は軽めで消化の良いものを選ぶことが大切です。脂っこい食事は体温を上げ、深部体温の低下を妨げるため入眠に悪影響を与えます。また食べすぎは消化にエネルギーを要し、睡眠の質を下げる原因となります。
入浴は就寝90分前が理想的とされています。入浴により一時的に体温を上げ、その後の体温低下を利用して自然な眠気を誘発します。例えば22時に就寝する場合、20時30分頃の入浴が効果的です。
ただし、これは理想的なスケジュールであり、多くの人がそれぞれに異なる生活リズムを持っています。重要なのは、これらの要素を自分のライフスタイルに合わせて調整することです。
自分の睡眠を知ることから始めよう
睡眠習慣を改善する第一歩は、自分の現在の睡眠状態を把握すること。ダイエットで体重を測るように、ランニングでトレーニングの記録を取るように、睡眠についても客観的なデータを収集することが重要です。
客観的に睡眠を把握するための一例として、睡眠日誌を手動でつける方法、睡眠センサーを使用してデータを収集する方法があります。

睡眠日誌では就寝時間、起床時間、中途覚醒の回数、睡眠の質の主観的評価などを記録します。ヘルスケアダイアリー「90日 わたしをみつめるねむりDIARY」(パラマウントベッド株式会社)では自分の睡眠をチェックできる項目が記されているほか、睡眠に関するコラムも掲載されています。
また睡眠センサーや専用のアプリを使用すれば、より客観的なデータとして睡眠時間、深い眠りの時間、中途覚醒の回数などを把握できます。
これらのデータを1ヶ月程度継続して収集することで、自分の睡眠パターンや癖が見えてくるでしょう。例えば「特定の曜日に睡眠の質が低下する」「運動した日としない日で睡眠時間が異なる」といった傾向を発見できるかもしれません。
日々トレーニングに励むストイックなランナーほど、よりよい睡眠が求められることは間違いないでしょう。良質な睡眠がもたらす恩恵は、あなたのランニングライフをより充実したものにしてくれるはずです。
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