バギーラン #1「ハワイのグレートアロハラン」

2018年8月末、私はハワイ・オアフ島のカイルアにいた。ホノルルからバスで1時間ほどのところで、近年オアフ島では人気上昇中の場所である。観光客がこぞって行くカイルアの海側ではなく、前々から興味があったカワイヌイ湿地でジョギングを楽しんだ。そして、そこでバギーランを楽しむ女性と出会った。

「バギーラン #1「ハワイのグレートアロハラン」」の画像

女性は、笑顔で“LIKE”のハンドサインを見せ、話しかけてくれた。そして、颯爽と走っていった。この1分間ほどの出来事が、私にとって自分事ではなかった“バギーラン”への興味を引き寄せた。

ハワイで人々の生活に溶け込んでいるバギーランを見て「これは文化として成熟しているな」と感じたのだ。

ハワイ旅行でバギーランを体験

ママの産後フィットネスとして広く知れ渡っているバギーラン。英語では、ベビーカーのことをストローラー(Stroller)というので、“ストローラーラン”ともいう。先日のゴールドコーストマラソンでも、沿道でバギーランをしている人を見かけたが、日本ではあまり浸透していないので、今でも目新しく感じてしまう。

2018年9月にハワイのカウアイ島で開催されたカウアイマラソンを走ったときも、子供2人をラン用ベビーカーに乗せて走る夫婦を見かけた。つまり、ファミリー4人でハーフマラソンに出場していたというわけだ。愛犬とハーフマラソンを走るカップルもいたし、それらを見て、「本当に楽しそう!」と感じた。

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それから5ヶ月後の2019年2月。私はまだ小さい娘と妻との3人で、家族旅行としてホノルルに行った。

そこでの目的は『バギーランを体験すること』だった。

まず、飛行機のチケットとホテルをおさえてから、“Honolulu stroller rental”と検索してみた。“Paradise Baby Co.”というハワイでのベビー用品のレンタルサービスのページがヒットしたので、「どれどれ……」と商品を見てみる。

そこには、やはりラン用のベビーカーがあり、しかもそんなに高くなかった(1週間レンタルで100ドル未満)。バギーラン用のベビーカーとはいえ、散歩でも観光でもスーパーに買い物に行くのにも使用できるから、自宅からベビーカーを持っていかなくても、ハワイでレンタルできて一石二鳥だと思った。

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そうして、現地では、我々の宿泊先までベビーカーが運ばれてきて(運んでくれた人にチップを渡して)、そこからバギーランの冒険がスタートした。私はホノルルに行くのは5回目だったから、大体のジョギングコースは把握していたし、バギーランでも特に問題なくジョギングを楽しむことができた。

初日は、ホテルの近くのアラワイ運河のウォーターフロントの往復コース。観光客はワイキキビーチのほうに行くので、ここは散歩やジョギングを楽しむローカルの人が多い。翌日は、ホノルルマラソンのゴール地点であるカピオラニ公園の周回コース。走り終わってからは、近くのホノルル動物園に行き、最後はその横のスターバックスでお茶をした。

家族で、運動と観光とリラックスが一度にできた。3日目の朝は、ワイキキのヒルトンのスターバックスでモーニングをする前に、カハナモクラグーンを家族3人で走った(もちろんバギーランで)。

ここで3日間の試運転が終了。

メインのバギーランは、翌日のグレートアロハランでの8.15マイル(13.12km)だったからである。

幼子から100歳のおばあちゃんまで

毎年2月の第3月曜日の祝日である、大統領の日(プレジデンツ・デイ)に、ホノルルでグレートアロハラン(GAR)が開催される。ダウンタウン近くのアロハタワーから、アロハスタジアムまでの13.12kmの片道コース。今年は24,000人以上がエントリーしたハワイ最大のチャリティマラソンは、13.12kmという手頃な距離もあり、ホノルルマラソンよりもこちらに出場する地元の人が多い。

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レースはアーミーの隊列と進行によって始まるが、これが日本にはない雰囲気で見応えがある。GARの先頭は1km3分ペースで走るエリート選手が数名いるが、最後方にはベビーカーのエリアがある。

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エキスポでベビーカーの部のゼッケンを貰いに行ったときに、スタッフが「(ベビーカーの)エントリーは大体500組ほど」と言っていた。

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“グレートアロハラン”という名称であるが、13.12kmを最初から最後まで歩く人も多くいるし、ゆるい雰囲気のレースだけあってプレッシャーは皆無。なんなら、抱っこ紐で生後半年ぐらいの赤ちゃんをおんぶして歩く人もいた。

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もちろん、これは最後方の参加者たちの話であるが、とても新鮮だった。

GARでは距離表示が1マイル(1.6km)ごとにある。2マイル手前のところでバラを配っている人たちがいた。

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ここには“Watanabe Floral, Inc.”というお花屋さんがあるが、まさかマラソン大会でバラを貰えるとは思っていなかった。先頭の速い選手たちはともかく、私の前方の女性たちが髪にバラをさしているのが印象的だった。コース中盤のハイウェイは、ウォーキング大会のようにもみえたが(あくまで後方の話)、コース脇で“オムツ替え”をしているママも見かけた。

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そして、何より感動的だったのが、100歳のおばあちゃんが車椅子で家族に押され、この13kmの道のりを進んでいることだった。ここには、生後間もない小さな赤ちゃんから、100歳のおばあちゃんまでいる。

しみじみしているうちに、フィニッシュ地点のアロハスタジアムに到着。そして13.12kmの道のりを3時間14分で完走。

というか完歩!

私が今までマラソン大会で貰ったフィニッシャーメダルはだいたい1つか2つであったが、ハワイでのバギーランで得たものは感慨深い3つのフィニッシャーメダルだった。

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ハワイのマラソンといえば、ホノルルマラソンのイメージがあるかもしれないが、GARはフルマラソンほどの高いハードルを感じないし、ホノルルマラソンの時期よりも航空券が格段に安いので、日本からの家族旅行にはピッタリの大会といえるだろう。

家族の絆を深める“ランニングの旅”

私は日本に帰国してから、“日本でもバギーランをしたい”と思うようになっていた。

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そうこうしているうちに、ベビーカーメーカーであるエアバギーの“RUN”という、まさにバギーランにドンピシャなネーミングのベビーカーが我が家にやってきた。

その日から私はベビーカーを押して走る人、“ストローラープッシャー”(#Stroller Pusher)になった。

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私にとってのこれまでのランニングは、記録や順位に向かって厳しいトレーニングを行なっていた学生時代の陸上競技部での経験に始まり、その後は市民ランナーとして海外マラソンで旅(ラントリップ)を重ねたことにある。

そして、2019年の春からは私のランニング人生においての第3ステージとなる、バギーランで家族の絆を深める“ランニングの旅”が始まった。

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今後も私が走るうえで、マラソン大会のように“確固たる目標”というものはない。しかし、ハワイでの体験から日常になって感じたのは「ランニングによって家族の絆が深まれば、父親にとってそれ以上のことはない」ということである。

いつ日になるかはまだわからないが、1度に3つのフィニッシャーメダル、もしくは4つ、5つのフィニッシャーメダルを手にするその瞬間をイメージして、今後もベビーカーを押して走り続けたいと思う。

 

バギーラン #2(産後フィットネスとしてママが感じるバギーランの楽しさ)に続く。

 

文・写真:Sushiman Photography

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