アウトドアブランド『ACG』を刷新したナイキ。アメリカ・ポートランドで彼らが見据える未来とは

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Photo Credit: ACG / finnwithanf

大勢の人が忙しなく行き交う東京とは異なる空気が流れる、アメリカ・ポートランド。この街の人々は、週末になれば近くの山にキャンプやトレランへ。そんな自然と隣り合わせのライフスタイルが根付くこの街に、世界的スポーツブランド『NIKE(ナイキ)』は本社キャンパスを構えている。

この街で歴史を築いてきたナイキは今年2月、『ACG(All Conditions Gear)』を刷新し、パフォーマンスアウトドアブランドとして再定義した。

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写真:編集部撮影

Runtrip編集部は彼らが見据える未来に迫るため、ポートランドの本社へ潜入し取材を敢行した。本稿では、その取材から見えたACGの現在地、未来をお伝えする。

1978年のK2から始まった物語から、ACGが刷新されるまで

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ACGのDNAは1978年まで遡る。世界で2番目に高い山K2のベースキャンプで、2人のアメリカ人登山家が1枚の写真に収まった。その足元に履かれていたのは、当時ナイキの最先端ランニングシューズだったLDV(ロング・ディスタンス・ベクター)だった。

登山専用ではなかったその軽量シューズが、過酷な環境で機能したことに気づいた登山家たちが、帰国後ナイキへフィードバックを送った。それがナイキのアウトドアフットウェアライン誕生のきっかけとなった。

48年の時を経た2026年、今回の刷新による最大の変化は、トレイルランニングがACGの中心に据えられたことだ。以前のACGにはストリートカルチャーとの接点も多かったが、今回の刷新によって、よりパフォーマンスとイノベーションに特化したシャープなブランドを目指していくという。

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金のスパイクを履いたマイケル・ジョンソン像。ナイキのアスリートに寄り添う姿勢は本社キャンパスに現れている(編集部撮影)

ナイキ本社には最先端のプロダクトを開発するための『ナイキ スポーツ研究所(NSRL)』と呼ばれるイノベーションチームが存在する。ACGのプロダクト開発には、エリートトレイルランナーが集うACRD(オール コンディションズ レーシング デパートメント)の約30名のメンバーが、ACGチームと協⼒し合い、試作品をテストしたり、改良を加えながらトレイルコミュニティのためのパフォーマンスの未来の開拓に取り組んでいる。

スーパーシューズのイノベーションをトレイルへ

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ACGフットウェアディレクター、ブレンデン・マカリース氏|Photo Credit: ACG / Nick Carnera

14回以上の試作と約4万8,000kmに及ぶ走行テストが重ねられた結果生まれた最新トレイルシューズが『ナイキ ACG ウルトラフライ』だ。

この4万8,000kmという走行テストの距離はACGプロダクト史上最長距離だという。アスリートの声を聞き、レース環境で性能を試し、微調整を繰り返すといったサイクルから、このシューズは生まれた。

ACGのフットウェアディレクター、ブレンデン・マカリース氏はこのシューズについてこう語る。

「アスリートたちは初期の段階からトレイル特化型のスーパーシューズを求めていた。彼らは私たちに、トレイルシューズのフィット感、形状、ライド感がどうあるべきかを見直すきっかけを与えてくれました」

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ナイキ ACG ウルトラフライ

ナイキ ACG ウルトラフライは、ロードのレーシングシューズで培われたナイキの最先端技術が存分に活かされている。ミッドソールには、ナイキ史上最軽量で最も高反発とされるズームX フォームを採用。85%のエネルギーリターンと高い衝撃保護性を備え、起伏のある地形に合わせて形状が変化する。

カーボンファイバー製のフライプレートは、前足部を左右に分割する新構造で、木の根や岩場でもしなやかに屈曲する。アウトソールにはVibram LITEBASEを採用し、グリップ性を高めながら30%の軽量化を実現している。

「ランニングのロードチームとは隣同士で仕事をしています。お互いのアイデアを活用し合っています」とマカリース氏。ロードとトレイルの垣根を越えたイノベーションは、まさに、全方位のギア開発を手掛けるナイキだからこそ生まれた。

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左からACG ペガサス トレイル、ACG ゼガマ、ACG ウルトラフライ

ACGのトレイルランニングフットウェアは3モデルで構成される。フラッグシップのACG ウルトラフライ、テクニカルな地形に強いACG ゼガマ、そしてトレイルから舗装路までシームレスに走れるACG ペガサス トレイルだ。

「様々な選択肢をアスリートに提供できることがいい」とマカリース氏は言う。路面を選ばないラインナップは、テクニカルなコースの多い日本のトレイルシーンにもフィットするはずだ。

アスリートとの信頼関係がプロダクトを進化させる

ACGの核にあるのは、前述したACRDの存在だ。甲斐大貴選手をはじめ日本人選手も加入し、約30名のエリートトレイルランナーがプロトタイプをテスト、フィードバックすることで、プロダクトを進化させる。

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ケイレブ・オルソン選手|Photo Credit: ACG / Nick Carnera

2025年のThe Western States Endurance Run優勝者、ケイレブ・オルソン選手はアスリートと開発者、そしてACGの関係を次のように表現する。

「ACGはどういう風にサポートできるかを常に考えてコミットしてくれている。選手は自分自身にフォーカスして競技に集中できる」

オルソン選手はレース本番でも、試作段階のウルトラフライを履き続けたという。それはプロダクトへの信頼と、作り手への敬意があったからこそ、可能になったことだろう。

徹底した科学に裏付けられた、奇抜なデザイン

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ナイキ ラディカル エアフローを着用した編集部スタッフ

アパレルの分野でも、ACGはイノベーションの最前線にある。『ナイキ ラディカル エアフロー』は、レース中の気温上昇・体感温度の上昇に対応するための革新的な素材技術。

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一見すると無数の穴が開いた奇抜なデザインだが、徹底した科学による裏付けが有用性を証明している。ACG アパレルディレクターのウェイド・レイ氏は「大事なのはアスリートのために何ができるか。見た目は結果でしかない」とイノベーションに必要な要素を語る。

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ACG アパレルディレクター、ウェイド・レイ氏|Photo Credit: ACG / Nick Carnera

開発チームが着目したのは、狭い管を流れる流体は速度が加速するという流体力学の「ベンチュリ効果」。体を包む空気の流れを加速させ、汗の蒸発による冷却プロセスをスピードアップさせる。

従来素材のDriFitと比較して、長時間ランニング後に吸収・保持した汗の量が50%少なく、汗の蒸発に対する抵抗が25%低いという。

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甲斐大貴選手|Photo Credit: ACG

後述するThe Gorgeの100Kでこのウェアを着用した甲斐選手は「ただ風を感じるというより、ウェアと体の間に『風の層』があるんです」と例え、「常に風を受けているから快適で、終わった後もウェアが全然ベトベトしない」と述べる。

ポートランドからトレイルコミュニティを広げていく

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Photo Credit: ACG / finnwithanf

最後に訪れたのは、ACGが今年からパートナーシップを結ぶトレイルレース『The Gorge』。オレゴン州コロンビアリバー峡谷の渓谷と無数の滝を駆け抜けることからその名がついている。ポートランド中心部から車で約40分という距離にあり、この街のトレイルカルチャーを象徴するレースのひとつだ。

エイドステーションにはACGサポートメンバーはもちろんのこと、ACG担当ではないナイキスタッフも数多く集まっていた。いざ選手が通過すると拡声器を握り、自らの声で選手を鼓舞するスタッフまでいた。彼ら自身もトレイルランナーなのだろう。かける言葉にグッとくるものがあった。

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Photo Credit: ACG / finnwithanf

仲間を応援する彼らの姿を見て、ナイキスタッフというよりもトレイル好きのコミュニティ、さらには“ファミリー”のような印象を受けた。

ACGは本大会の単なる公式サポーターという枠を超えて、地元のトレイルレースを盛り上げたいという想いがあるのかもしれない。

自然と隣り合わせのライフスタイルが根付くこの街だからこそ、トレイルランニングを盛り上げられるし、もっと良いプロダクトを作ることができるーー。「自分たちがやらなければ誰がやるんだ!」という気概で、次なる挑戦を始めているのではないかと感じた。

ナイキはポートランドという街からトレイルコミュニティを広げようとしている。今後のACGの挑戦を見守っていきたい。

(取材・文:Runtrip編集部)

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