調子が悪い時に練習量を増やす? 「ランニングIQ」が低いランナーの残念な行動
May 19, 2018 / HOW TO
May 01, 2019 Updated
春から夏にかける時期は、1年間のランニングライフの休憩期間となる人も多いでしょう。これまでのランニングを振り返り、また、これからのランニングを計画する重要な期間とも言えます。
長いランニングライフの中で、調子が良いときもあればそうでないときも。どのような状況であっても気持ちを正し、ランニングを楽しむことができれば、ランニングは生涯楽しめるスポーツとなりますよね。しかし、調子の悪いとき、ちょっとムキになってトレーニングをしてしまってはいないでしょうか。目の前の壁を登るべく、一生懸命にやることはいいのですが、過度な負荷は、あまりオススメできません。こういったランニングとの向き合い方を「ランニングIQ」として表現した人がいます。
「走る」というスポーツの基礎から運動指導するランニングコーチ・細野史晃さんです。自著『マラソンセンスとランニングiQ』で語った「ランニングIQ」。今回は、そんな「ランニングIQ」について、同書より抜粋してご紹介します。
1ランニングのIQとは何か?
IQの高い人がどういう人なのか? そしてランニングのIQになるとどうなるのか? そのあたりを私なりにまとめて定義していきたいと思います。IQが高い人とは、目の前にある課題や現象において余計な情報を省いて必要な情報を正確に読み取り、解決策や共通点を見いだし、物事の本質を見抜くことに長けている人と言えます。この判断などが早く正確であるほど高いIQの持ち主だということです。そうなると、ランニングにおけるIQは、自分の課題を正確に判断し、的確に必要なトレーニングを判断できる能力の指標と定義づけることになります。つまり、スランプやカベをすぐに超えてしまうことができる人は、そのまま「ランニングIQ」(以下RIQ)の高い人となるのです。
2カベは“ぶつかるもの”ではなく“超えるもの”
カベにぶつかるのはなぜだろう? そう思いながらも、「練習が足りないからだ」と感じて、とにかくたくさん練習をすることで解決しようとするランナーがほとんどでしょう。
具体的な方法はわからないけれど、練習量を増やすことは誰にでも簡単にできるからです。これだけでなんとかしようとする人は、いわゆるRIQの低い人、ということになります。走る距離や無理やりスピードを上げてのトレーニングは、それによってケガをしたり、モチベーションが低下したり、最終的には「結局は才能の差だったのか」と半ば諦めの感情を持つようになってしまうのが多くのパターンです。
もちろん、練習量を増やすことでカベを超えてブレイク・スルーすることは多々あります。一定の練習量がないと競技力が向上しないのも確かです。しかしながら、それだけでは超えられないカベにぶつかることがあります。
では、そのカベをどう超えたらいいのか? 私はこの「カベ」にはメカニズムがあると思っています。そして、そのメカニズムがわかればカベを超えられると考えています。デキるランナー、つまりRIQが高いランナーというのは、それを経験で知っている、もしくはそのメカニズムに合わせた動きを自然と行っている人たちなのです。
3「カベ」のメカニズム
ランナーには運動成長期というものがある、と私は考えています。この運動成長期には第一次、第二次、第三次の3つの段階があります。多くのランナーや陸上競技者、はたまたアスリート全体と言っていいのですが、だいたいはこの3つの段階を通ります。3つそれぞれの段階はどういうものか、簡単に説明していきましょう。
・第一次運動成長期:「体力・筋力の向上」によってもたらされる成長・限界突破の時期
・第二次運動成長期:「技術向上・トレーニングを考える力・自分を変える力」によって
もたらされる成長・限界突破の時期
・第三次運動成長期:「自分を信じる力・心を整える力」によってもたらされる成長・限界突破の時期
多くのランナーはこの段階を通ります。
4トップ選手と同じ記録は出せなくても、同じ生き方はできる
いろいろな練習法や取り組み方、私生活の過ごし方があります。しかし、本書を書き上げるうえで、さまざまなランナーからお話を伺うと、そこに共通していたのは「記録向上に向けて妥協がない」ことでした。大学4年間という期間、シーズン1年という期間、練習に使う時間、そして一日一日の過ごし方など、細かいところに記録向上に向けた強い意志を感じたのです。
そこで私は感じました。「記録までトップランナーと同じにすることはできなくても、日々の過ごし方や練習の意識、そして身体の使い方などは同じ方法で行うことはできるのではないか」と。
人それぞれ課題は違っても、たどり着きたい場所は同じですから、まずは真似をしてみる。そしてその方法に振りきってみるのもひとつでしょう。自分が選んだ方法を信じきる。自分の選んだ方法に責任を持つ、覚悟をする。そういった思いも、デキるランナーに共通していることのような気がします。
「学ぶ」の語源は「真似ぶ」だといわれています。これは真似ることが学びの第一歩だということです。人から教わらずとも強い選手の動きや練習方法など、参考にできるものは山ほどあります。これを真似るだけでも学びはどんどん増えていくのです。
トップランナーの練習はかなり洗練されたトレーニングで、RIQの高い情報が詰まっています。そうして真似で得た知識と、書籍や雑誌などで得た知識を擦り合わせていくと、より正しい情報へと変わっていきます。
トップアスリートの真似をして同じ記録は出せなくても、似たような動作や効率的な動きなどを身につけることは十分にできます。
以上が、同書の内容。今の時期は、体も頭もクールダウンしやすいタイミング。細野さんが提案する「ランニングIQ」の向上を目指してみるのも良いですね。皆さんのランニングライフが充実することを願っています。
■『マラソンセンスとランニングiQ』
ランニングコーチ・細野史晃著