チョークアートが描かれた道の先にあった家族【ノロミホの旅】
Mar 16, 2018 / COLUMN
Apr 26, 2018 Updated
走ることに慣れてくると、「ここは好きな道」「ここはあまり好きじゃない道」と、勝手に決めつけてしまう。なんだか、ちょっとわがまま。
道は、旅人にとってどれも同じ道。
「今日も世界の道は平和だった」と、フォトグラファー・ノロミホさんが教えてくれる。
【Vol.1:旅の始まりcomeover】
ずっと憧れていた南インド。
行きたいと思う反面、インドと聞くとどうしても治安が悪い、騙される、恐いという不安ばかりが浮かんでくる。
しかしまずは行ってみないと分からない。
年明けと同時に思い切って行くことを決めた。
東京のカレー屋のシェフに相談したら「向こうに家族がいるから遊びに行ったら?」と家に誘ってくれた。
知り合いがいるのは心強い。
向かったのはチェンナイ駅から車で30分ほどの住宅街。
中心地を離れると車もバイクも一気に少なくなる。
道路には緑が増え、空気がきれいになったように感じた。
静かな道が続き、いたるところにコーラムが見られる。
コーラムとは、お店の入り口や玄関先に絵描かれるチョークアートのこと。
お花や動物をモチーフにしていて魔除けの意味があるのだという。
色鮮やかでパワーがあって、それが描かれているだけでとても特別な道のように思えた。
そんな景色を眺めながら家へと向かう。
出迎えてくれたのはママ(シェフの妻)、娘のリジュータ、リジュータの夫ディーパック、もうすぐ一歳になる孫のジュジュ。
家は立派なコンクリートの二階建て。
4人で住むには大きすぎるからと、2階は他の家族に貸しているらしい。
お父さんのシェフがここに帰ってくるのは、年に一度の一ヶ月だけ。
遠く離れた日本で、家族のために働いて、会えるのは年に一度。
そんな生活がもう20年以上も続いているという。
お昼ごはんをごちそうになり、カメラを持って家の周りをぶらぶらしてみた。
初めての場所はいつでもわくわくする。
まずどっちに進もうか、次はあの角を曲がってみようか。
直感を信じてあっちに行ったりこっちに行ったり。
迷子になることさえ恐れなければすごくたのしい冒険のよう。
夜になると車で買い物に連れて行ってくれた。
ローカルなベイクショップ、オーガニックのスーパーマーケット、
インドコスメが買えるドラッグストア。
私たちのリクエストを全部叶えてくれるスペシャルツアー。
そして最後に入ったお店で「好きなものを一つ選んで」と言って、洋服を買ってくれた。
赤い柄の入ったエスニックなワンピース。
試着してみせると、「うん、いいね。サイズはこれで大丈夫?」と本物の母親のように接してくれた。
初対面の私たちに特別気を使うことなく、何も変わらないありのままの日常を見せてくれた気がする。
そんな普通のことがとても嬉しかった。
とても濃厚な1泊2日のホームステイ。
インドのイメージをがらりと変えてくれた時間。
特別な道の先には特別な家族が待っていてくれた。
別れ際、気が付いたら「世界ウルルン滞在記」みたいに泣いていた。