アートと文化の街・フォートコチの道から見える二面性【ノロミホの旅】
Apr 28, 2018 / COLUMN
Apr 28, 2018 Updated
走ることに慣れてくると、「ここは好きな道」「ここはあまり好きじゃない道」と、勝手に決めつけてしまう。なんだか、ちょっとわがまま。
道は、旅人にとってどれも同じ道。
「今日も世界の道は平和だった」と、フォトグラファー・ノロミホさんが教えてくれる。
【vol.7 時代を見守る道】
ケララ州フォートコチ。
いろんな国の文化が混ざり合ったような不思議な港町。
観光客も一気に増え、人種も様々。
町のメイン通りは、主要スポットをぐるっと周れる観光コース。
コンパクトだけど見所がぎゅっと詰まっている。
そして、細い小道に入ると隠れ家的なカフェやレストラン。
歩くのに疲れたら寄り道してちょっと休憩。
旅行者にはとても優しい道だ。
海に囲まれたこの場所は、交易が盛んでとても潤っていたという。
しかし16世紀以降、ポルトガルやオランダ、イギリスなどの支配下になり苦しい時代がしばらく続いた。
古い教会、立派な宮殿、目立つような大きな建物はほとんどが西洋風。
砦やオランダ人墓地があり、それぞれの時代の面影が見える。
そんな面影に、少し切なさは感じる。
けれど決して暗くて悲しいわけではない。
町全体はとてもカラフルだし、洗練されたお店がとても多い。
ポルトガル人の住居だった建物は、人気のヘリテージホテルに。
会社や倉庫として使われていたところは、おしゃれなレストランやギャラリーへ。
時間の流れとともに姿を変え、新しい時代を作っている。
歴史的な建造物をひと通り巡って、港の方へ向かう。
すると、さっきまでの西洋的な雰囲気から一転。
目の前で漁が行われ、とれたての魚が通りにずらっと並んでいる。
チャイニーズ・フィッシングネットという大きな網を使い、みんなで力を合わせ引き上げる。
その名の通り中国から伝わったのだろうか。
改めていろんな文化を経てきた町なんだと感じた。
カメラを手にした観光客が多いなか、社会見学らしき学生の姿も見かけた。
私が学生の頃は遠い昔のことまで考えられなかった。
しかし歳を重ねるごとに、その土地の歴史や背景に興味を持つようになった。
綺麗に整備された道を歩いていても、目の前には何百年も変わらないものがある。
平和そうにみえても、争いや混乱は確かにあったんだと残された傷が物語っている。
本を読んだり、写真を見たり、それだけで知っている気になるけど、
自分の足で歩いたからこそ知れることがあると思う。
そんな当たり前のことを教えてくれた。
この町とこの道に、次はどんな未来が待っているのだろう。