トゥクトゥクの疾走感で思い出した東京でのランニング【ノロミホの旅】
May 11, 2018 / COLUMN
May 11, 2018 Updated
走ることに慣れてくると、「ここは好きな道」「ここはあまり好きじゃない道」と、勝手に決めつけてしまう。なんだか、ちょっとわがまま。
道は、旅人にとってどれも同じ道。
「今日も世界の道は平和だった」と、フォトグラファー・ノロミホさんが教えてくれる。
【vol.9「トゥクトゥク」が響く道】
移動が多かった南インドの旅。
のんびり街歩きもいいけれど、乗り物に揺られて街並みも見るのも楽しかった。
寝台列車、長距離バス、路線バス、トゥクトゥク。
どれもそれぞれ個性があって面白い。
寝台列車はスリルとディープさ。
長距離バスは運転が荒いというまた違ったスリル。
追い越しがとても多く、対向車とぶつかるんじゃないかとハラハラしっぱなし。
そして路線バスはすごく揺れる。
遊園地のアトラクションかと思うほど上下左右に揺られ、体が何度も宙に浮く。
そんな中、ほぼ毎日乗ったのはトゥクトゥクという三輪タクシー。
オートリクシャーとも呼ばれ、バイクと自動車の中間くらいの大きさ。
「トゥクトゥク」と音を立てて走る黄色い車体。
どの街でも一番多く見かける乗り物かもしれない。
もちろん普通のタクシーもあるけど、狭い道が多いインドではこのくらいのサイズが一番便利。
トゥクトゥクは人が歩けるところならどこでも行く。
マーケットの中を突っ切ったり、渋滞している道もスイスイと進む。
そして運転手によってカスタムされているのも見所のひとつ。
夜に乗ったトゥクトゥクはファーでデコレーションされ、スピーカー付き。
インドミュージックを大ボリュームで流し、ノリノリな運転手。
夜風の気持ちよさと音楽がちょうどいい感じに合っている。
ふと、東京での夏の夜を思い出した。
日が暮れて少し涼しくなる頃、テンポのいい音楽を聴きながら近くの公園でランニングをする。
夜の高揚感と疾走感。
私はあの時間がすごく好きだ。
だからノリノリになっちゃう運転手の気持ちがすごく分かる。
最初はびっくりしたけど、降りるときには「ステキな時間をありがとう」とお礼を言いたくなるくらいだった。
程よいスピードで、景色を楽しみながら、生活感のある道も通ってくれる。
たまに(しょっちゅうかも……)道に迷うけど、それもそれで思い出のひとつ。
歩いたり、走ったり、その土地の乗り物を使ってみたり。
歩み方次第で、見える景色は全然違う。
流れる時間まで変わってくる。
そんな楽しみ方ができるのも旅の醍醐味かもしれない。