広い道に現れた一軒のチャイ屋は「おじさんの楽園」【ノロミホの旅】

走ることに慣れてくると、「ここは好きな道」「ここはあまり好きじゃない道」と、勝手に決めつけてしまう。なんだか、ちょっとわがまま。

道は、旅人にとってどれも同じ道。
「今日も世界の道は平和だった」と、フォトグラファー・ノロミホさんが教えてくれる。

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【vol.6 静かな島の小さなチャイ屋】

大きな大きな木の下に、すっぽり収まるようにして建つピンクの小屋。
周りにはチャイを片手におしゃべりするおじさんたち。
椅子に腰掛けたり、木陰で涼んだりと自由気ままな様子。
小屋の中では、無口そうな店主が手際よくチャイを作っている。

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午前8時。
まだ少し眠たげな人たちが自転車で通っていく。
目の前の道はとても広く、車はほとんど走っていない。

ここはウィリンドンアイランド。
ケララ州コーチの小さな島。
インドらしい生活感はなく、人も活気も少なく感じる。
車よりトラックが多く、民家よりも工場や会社が多い。
大きな貨物船が行き交う港があり、貿易が盛んな島らしい。
ここは住む島というよりは働く島なのかもしれない。

始業時間にはまだ早いのか、みんなのんびりとした時間を過ごしている。
これから始まる一日のため、思い思いに心を落ち着かせているよう。

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朝の光が眩しく照らし、
大きな木が見守るように揺れている。
お店から漂う甘い香りと熱々の湯気。
グラスの触れる音が響き、言葉少ないおじさん達の話し声がする。
大げさに言うと、そこはまるで映画のワンシーンのようだった。

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チャイを一杯いただくことに。
温かくて優しい味が目覚めたばかりの体に染みわたる。
朝のチャイは気づけば日課のようになっていた。
自分の体が少しずつインドに染まっているようで、ちょっと嬉しい。

そう言えば、どこのチャイ屋でもお客はいつも男の人ばかり。
ここも例外なくおじさんばかり。
甘いチャイをおいしそうに飲むおじさんたち。
なんだか可愛い。

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朝の雰囲気も素敵だけど、
お昼になったらどんな人たちがやってくるんだろう。
わいわいと賑やかな時間もあるのかな。
夜はお酒も飲める場だったらいいのに。
無口な店主はバーのマスターみたいだし、きっと美味しいお酒を出してくれるはず。

そんな妄想をしながらお店を後にした。

オアシスのような一軒のチャイ屋。

広い道に現れた、思いがけないお店。次に訪れる時にもありますように。

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