10736日間で途切れた「連日ランニング記録」に思うこと

半世紀以上に渡って走り続けるランナー

「10736日間で途切れた「連日ランニング記録」に思うこと」の画像
1年365日、それを30年間、毎日走り続ける。言うだけならタダではあるが、まさに偉業としか言いようがない。なにしろ、あの比類なきフォレスト・ガンプだって、走り続けたのは3年、2か月、14日、そして16時間なのだ。

さらに驚くべきことに、フォレスト・ガンプよりはるかに長きに渡って毎日走り続けている人はライト氏だけはない。『United States Running Streak Association』という団体がある。『全米連続ランニング協会』とでも訳すべきだろうか。ともかく、その団体のホームページでは1日最低1マイル(1.6キロ)以上を連続して走り続けている人たちの公認記録を公開しているのだが、そこには超人的としか表現のしようがないランナーたちが並んでいる。

トップにランキングされているジョン・スザーランド氏は1969年5月26日以来、現在に至るまで、つまり半世紀以上に渡って、連日ランニング記録を今でも更新中だ。他にも30年、40年以上走り続けている人がたくさんいて、前述のライト氏はこのランキングでは67位でしかない。

考えてもみてほしい。何しろ1969年の夏である。ブライアン・アダムスが人生最良の日々を送り、ホテル・カリフォルニアで最後のワインがサーブされた、そんな大昔のことなのだ。ベトナム戦争のまっただ中で、奇しくもスザーランド氏が走り始めたのと同日の5月26日、ジョン・レノンとオノ・ヨーコがカナダ・モントリオールで平和を訴える2度目の『ベッド・イン』を開始している。

その後ベトナム戦争が終わり、ジョン・レノンが殺され、冷戦が終わり、ソ連邦が解体され、東西ドイツが統一され、ワールド・トレード・センターに飛行機が突っ込み、中国が日本を抜いて世界第2位の経済大国になった。こうして世界が激動するなかにあって、スザーランド氏は1日も休むことなく、黙々と(とはぼくの想像だが)、走り続けてきたというわけだ。

何もそんな社会的な事件ではなくても、長い年月の間には、私生活の面でも様々なことが起きたにちがいない。ぼくはスザーランド氏の健康や家庭については、何の知識もない。だが、50年生きてきて、ずっと体調が良く、悲しい出来事は何1つなかった、なんて人がいるわけがない。それでも毎日走り続けるということは、単なる運動や習慣とは別次元での、やむにやまれぬ個人的動機があるはずだ。それが何だったのかはわからないけど。

「10736日間で途切れた「連日ランニング記録」に思うこと」の画像
走ることがいつも楽しいとは限らない
角谷剛が書いた新着記事
RUNTRIP STORE MORE
RANKING
「COLUMN」の新着記事

CATEGORY